解説者の目(吉村祥子)

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逆転の金3個、つかんだ強き心と体 レスリング女子

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2016/8/18 17:53
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初日に行われた3階級全てで金メダルを獲得したことは、これまでの日本の選手強化が正しかったことを証明してくれた。決勝戦で3人がいずれも苦境を跳ね返し、終了間際での逆転勝ちを収めたことには、代表選手が所属先や全日本合宿で単に筋力や持久力だけでなく、集中力を途切れさせない「戦う体力」「心の体力」を養ってきたことが生きたのだと思う。

先陣を切った登坂の戦いぶりが、後続の日本選手を勢いづけた=共同

先陣を切った登坂の戦いぶりが、後続の日本選手を勢いづけた=共同

登坂に生きた苦戦の経験、焦りと無縁

6分間は短いようで長く、常に集中力を持続して戦うのはすごく難しい。今回、日本選手全員がそれをやり切れたのは、けがの危険がつきまとう中、リオでの直前練習でも若手らを相手にした実戦さながらのスパーリングを数多く積んだから。普段からの追い込まれる経験が、土壇場での底力を発揮させた。

先陣を切った48キロ級の登坂絵莉の戦いぶりが、後続の日本勢を勢いづけた。

決勝の相手は昨年の世界選手権決勝で下したスタドニク(アゼルバイジャン)。先にポイントを奪われたが、1点ずつの小刻みの失点だったことが大きかった。リードして攻撃力のあるスタドニクの猛攻撃を受けるより、僅差を追いかける展開になったことは、登坂にとってはよい流れだった。昨年の世界選手権も同じような試合展開で逆転勝ちしていただけに、弱気になったり焦ったりすることもなく「ここからでもいける」という手応えを持って戦えたはずだ。

早めにポイントを取り返したくなる中で、登坂は焦らずに勝負どころをじっくり探った。最後の最後に勝負を仕掛けるという冒険はなかなかできないこと。ポイントを取る力に優れた登坂だからこそ、とれた戦法だろう。

残り10秒ほどで仕掛けた片足タックルは、大胆に攻めるのはここだという場面で勇気を持って飛び込み、ポイントに持ち込むまでの対処も速かった。技を決めたのは最後の何秒かだが、試合終了まで1分半ほどから反撃に出て、相手の首を腕で押さえつけるなど、上半身に対する攻めを繰り返したことがじわりと効いた。相手の体がだんだんと浮き上がり、バランスが崩れたところでの絶妙なタックル。日ごろの練習があの結末を呼び込んだ。

伊調は決勝で低い姿勢がとりきれなかったが、チャンスを逃さない勝負勘が光った=共同

伊調は決勝で低い姿勢がとりきれなかったが、チャンスを逃さない勝負勘が光った=共同

伊調、運にも恵まれ劇的な4連覇

58キロ級の伊調馨は、1月の国際大会で敗れた経験を糧に、初戦と準決勝はテクニカルフォールで完勝。決勝戦では幸運に恵まれた点もあったが、特に終了間際の劇的な逆転で前人未踏の4連覇を果たした。

決勝戦では、膝を曲げた低い姿勢がとりきれず、潜り込んだり、相手の横から入ったりする本来のタックルが影を潜めた。ライバルが研究を重ね、低い構えで中に入らせないようディフェンスを固めたこともあったが、伊調自身が完調ではなかったことも苦戦した要因だろう。

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