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サイバー防衛、クルマが主戦場 ソフト続々

自動車のセキュリティー需要の奪い合いが激しくなってきた。システム開発のアドソル日進は月内に車載の基本ソフト(OS)へのウイルス感染を最小限に抑えるソフトを発売する。米シマンテックは人工知能(AI)で攻撃を検知するソフトを発売した。車に侵入してみて弱点を探るサービスもあり、ネットワークに接続する「コネクテッドカー(つながる車)」の安全確保に貢献する。

自動車にはカーナビゲーション、アクセル制御、エアコン制御などに別々のOSが使われ、連携して稼働している。どれかひとつのOSがサイバー攻撃を受けた際、コンピューターウイルスが他のOSに連鎖する可能性がある。

アドソル日進が発売する米リンクス・ソフトウエア・テクノロジーズのソフト「リンクスセキュア」は、車のOSを複数載せてコントロールする製品だ。それぞれのOSが働く領域はしっかりと区分けされており、ウイルスが侵入しても被害を最小限に抑えられる仕組みを持つ。

アドソル日進はトヨタ自動車の車載OSを共同開発してきた。2月に米西海岸のサンノゼに研究開発センターを開設し、米リンクスと共同運営している。西海岸に進出して研究開発を急ぐ完成車や部品のメーカーにソフトを売り込む。

米シマンテックの日本法人(東京・港)はこのほど自動車へのサイバー攻撃を検知するソフトを発売した。AIのひとつである「機械学習」を組み込み、自ら学習し機能を高める。開発中の車に組み込み、車内の通信回線で正常にやり取りされるアクセルなどの操縦データを学習する。

正常な状態と異常な状態の区別をつけられるようになったソフトを車に搭載。異常を検知すれば専用回線で監視センターに情報を集め、サイバー攻撃であるか分析して最終判断を下す。

ラック子会社のネットエージェント(同・墨田)は車のサイバー攻撃を想定した侵入試験サービスの提供を今月始める。自動車メーカーから依頼を受け、ハッカーになりかわって車の制御システムに侵入を試みる。

侵入しやすい経路などセキュリティー上の欠陥を見つけて自動車メーカーに報告し、プログラムの改良に役立てる。これまで車載機や電子制御装置(ECU)など組み込み機器の調査で実績がある。あらゆるモノがインターネットにつながる「IoT」技術の進歩で、車もネットに接続され、脅威が増していることからサービス実施に踏み切った。

 自動車を狙うサイバー攻撃の脅威は日増しに高まっている。8月の米ラスベガスで開催されたセキュリティー国際大会「ブラックハット」では、著名ハッカー2人組が米FCAUS(旧クライスラー)の「ジープ」を乗っ取る手法を発表した。
 このチャーリー・ミラー氏とクリス・バラセック氏は2015年7月、同じジープに対し、無線を使い遠隔から乗っ取る手法をユーチューブで公表、140万台のリコール(回収・無償修理)に発展した。今年は、同じ車種でも別の方法だ。
 新手法は自己診断装置「OBD2」の接続部からアクセルやブレーキを制御不能にできる。自己診断装置は電子制御装置に集まるセンサー情報を分析、異常なら警告する。この制御システムの機能を悪用するという。
 自動車業界を狙う攻撃は10年以上前から顕在化している。05年には米国の車両工場13カ所で、コンピューターウイルス「Zotob」が設備に侵入し、操業停止に追い込まれた。
 現在、インターネット上の闇市場「ダークウェブ」では、開発中の製品の設計図などが公然と売り買いされている。
 車の部品の設計図なども売買対象になっており、知財流出は自動車メーカーの競争力の低下につながりかねない。米セキュリティー大手パロアルトネットワークスによると、日本の自動車産業が攻撃を受けた月間件数は15年12月に同年1月にくらべ2・4倍まで跳ね上がった。
 業界でも取り組みは進む。自動車の機能安全性規格「ISO26262」では16年中にも刷新版が発行され、最重要項目として車のセキュリティー基準が設けられる見通し。
 日本では1月、トヨタ自動車やソニーNTTなど約40社が「産業横断サイバーセキュリティ人材育成検討会」を立ち上げ、攻撃情報を共有し、対策を講じている。
 自動車メーカー各社が取り組む「つながる車」の先に、自動運転車がある。将来、犯罪者が自動運転車をハッキングするかもしれない。自動車という経済インフラを守るため、ネット世界を守ってきたセキュリティー会社の力を結集する必要がある。

(名古屋支社 浅山亮)

[日経産業新聞8月17日付]

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