白井健三(日体大)の床運動で、着地にこれほどミスが相次ぐのは珍しい。前半のリ・ジョンソンで後ろに一歩動く。中盤の連続技、前方宙返り1回ひねり―前方宙返り3回ひねりでは危うく尻餅。最後の後方宙返り4回ひねりでも1歩乱れた。
特に痛かったのが後半の後方宙返り2回半ひねり―前方宙返り2回半ひねり。体勢を大きく崩し、2歩動いてしまった。
■連続技、2度目の跳躍が低かった?
床運動の連続技は、一番失敗の可能性が出やすいところではある。実際、団体予選でも白井にはミスが出ている。ただ、これほど多発することはなかなかない。
それぞれの連続技の中の2度目の跳躍が、いつもより少し低かったように見えた。いつもの白井からするとちょっと低いかなというくらいで、他の選手並の高さはあるのだが、それが白井ほどの高難度の技を実施する場合は大きな痛手となる。
国内外で「ひねり王子」と呼ばれる白井は、それぞれの技の中で、他選手より1回以上多くひねる。その分、各技をピンポイントで成功させないと、失敗につながるリスクが大きくなる。
大きな減点につながった後方2回半ひねり―前方2回半ひねりは、1度目の跳躍のときにラインオーバーを気にして、宙返りが小さくなってしまったように感じた。着地の瞬間、体より足がやや前に出る斜めの状態。2度目の跳躍のために床を蹴る時、十分に力が伝わらない。その分、最後は苦しい状況での着地となった。手を突いてもおかしくない体勢で良く耐えたのはさすがだが、2歩動いてしまった。
金メダルのウィットロック(英国)との点差は0.267だから、この着地が決まっていたら、金メダルにも手は届いていただろう。
■ミスに歓声が起こる異様な状況
いかに難しい演技構成でも、本番になると高確率で決めてきたのが白井。似合わないミスの連続でメダルなしの4位に終わったのは、精神的な影響があったのかもしれない。
体操の種目別はもともと独特の雰囲気がある。複数の選手が同時進行で演技する団体総合や個人総合と違い、会場で演技しているのは1人だけ。自分の演技の全てが観客の反応になって返ってくる。
国内の試合でもミスをすると落胆のため息が選手の耳に入ってくるものだが、この日は白井がミスをすると歓声が起こる異様な状況。2位と3位に入っていたブラジルの選手にメダルを取らせたいという願いからだろうが、演技している者にとっては調子が狂う。
白井健三(日体大)が種目別の跳馬で達成した新技の伸身ユルチェンコ3回半ひねりは、すごいのひと言だった。なぜこれだけの技ができるのか。僕自身にも完全に理解するのが難しいくらいだ。
団体総合の決勝では3
白井健三(日体大)の床運動で、着地にこれほどミスが相次ぐのは珍しい。前半のリ・ジョンソンで後ろに一歩動く。中盤の連続技、前方宙返り1回ひねり―前方宙返り3回ひねりでは危うく尻餅。最後の後方宙返り4回
近年、見たことのない展開になった。常にぶっちぎりで体操の個人総合を制してきた内村航平(コナミスポーツ)が、残り1種目を残して他選手の先行を許しているなんて。
最初の床運動。団体総合の決勝では6種目め