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[FT]ウォルマートら米大手3社、電子商取引強化の成算

Financial Times

米国の小売最大手、自動車最大手、通信業界2位のそれぞれに共通するのは? 答えは、デジタル分野で先を行く強力なライバルに対して、これまでよりも積極的に立ち向かうべき時が来たと判断したことだ。そのために3社とも、インターネット関連企業の買収や大規模な出資に踏み切った。いずれも、それぞれの分野で負け組になりかねない状況にあるネット企業だ。

ウォルマートは電子商取引分野でライバルに立ち向かう決断をした米大企業の一つだ=ロイター

見込みの薄い戦略のようにも思える。だが、それぞれの買収は内容に大きな違いがある。デジタル化の波にのまれかけた大手の苦し紛れの一手と切り捨てるのは早計だ。

新しい順にまず小売最大手のウォルマート・ストアーズは、電子商取引(EC)のジェット・ドット・コムを33億ドルで買収した。ジェットを負け組呼ばわりするのは酷かもしれない。5億ドル超の資金を持ってアマゾン・ドット・コムに次ぐ業界2位になることを目標に創業したのは、つい1年前のことだ。だが出資者らは、資金不足でまだ軌道に乗らないビジネスモデルに追加投資するよりも、身売りで手早くそこそこの利益を得ることを選んだ。

ECがベンチャーキャピタルにもてはやされたのは、もう過去の話だ。ジェットは、アマゾンとの差別化を進めて固定客を得ていたが、顧客獲得に費用がかかっているとみる向きが多い。ウォルマートは、何年もの努力にもかかわらずECの売り上げが落ちている。業界の巨人アマゾンに長期的に対抗するうえで、これまでとは違う何かを試みる必要があることは確かだ。

この買収の1カ月前、米通信2位のベライゾンは米検索大手ヤフーの買収合戦に競り勝った。昨年のネット大手AOLの買収と併せて、ネット広告の2強であるグーグル、フェイスブックに挑む態勢が整った。

そして今年1月、米自動車最大手ゼネラル・モーターズ(GM)は米配車アプリ大手のリフトに5億ドルを出資した。消費者向けネットビジネス分野の現世代の新興企業のなかで、最も攻めの姿勢を取るウーバーに対抗する構えだ。

3社のデジタル分野への多角化投資は一見、かなり重いように思える。だが、懸かっているものの大きさを考えれば、法外な金額ではない。

フェイスブックは2年前、米対話アプリ最大手ワッツアップの買収に190億ドルを投じた(同社は今も収益モデルを探しあぐねている)。それに比べれば小さな額に見える。しかし、ワッツアップの経営権を完全に握ったフェイスブックのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は、ワッツアップ買収をスマートフォンアプリ普及の影響に対する単純なリスク回避として扱っている。

一方、ジェットに支払われた33億ドルは創業間もない会社にしては大きいように思えるが、ウォルマートの時価総額の1%強にすぎない金額だ。ウォルマートにとっては、見込み違いの買収でお金を失うリスクよりも、ECのテコ入れができていないという問題の方がはるかに重大だと、ユナイテッド・オンラインの元CEOでネット関連企業の買収にも長い経験を持つジェフ・ゴールドスタイン氏は指摘する。

3社が投資で得るものは大きく相異なる。ウォルマートは、ジェットの経営陣と技術基盤に賭けている。かなり高額な「アクイハイヤー」(人材獲得を目的とする企業買収)ということになる。

これに対し、ベライゾンが買うのは減耗資産、つまりデスクトップパソコン経由のインターネット利用者だ。そしてAOLを核に築いた広告技術の基盤を広げ、一気にネット広告大手にのし上がろうとする構想だ。ヤフーがほぼ同じことをしようとして果たせずにきた年月の長さを考えると、成功の見込みは乏しい。

リフトの株式9%を取得したGMは、人々の自動車の買い方を変える可能性を帯びたサービスに参入する。都市部の若い世代には、移動をサービスの形で捉える傾向が広がっている。GMはまた、アプリで呼び出せる将来の自動運転車の供給に向けた踏み石を得る可能性もある。

その成否は、勝者総取りの様相を少なからず示す市場において、リフトがウーバーへの対抗路線を貫けるかという一点にかかっている。ジェットの出資者らが、高い消耗戦の費用をウォルマートに転嫁することを決めたのと同じように、GMもウーバーとの戦いの費用を全面負担するのかどうか、早々に決断を迫られるかもしれないと、ゴールドスタイン氏は言う。

3社とも、いわば賭け金をテーブルに差し出した段階だ。その先に、はるかに大きな投資が待ち受けている。

By Richard Waters

(2016年8月12日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

(c) The Financial Times Limited 2016. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.

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