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200自由形メダル逃す 萩野の歯車狂わせたもの

日本男子の自由形では、1960年ローマ五輪400メートル銀メダルを獲得した山中毅以来となる56年ぶりのメダルを目指していた萩野公介(21、東洋大)だったが、自由形200メートル決勝は7位と低調だった。金メダルは難しくても2、3番争いは確実だと見込まれていただけに、全く予想外の結末。何が彼の歯車を狂わせたのか――。

仕掛け遅くラストスパートも伸び欠く

7位でゴールした萩野。左は優勝した中国の孫楊=共同

準備万端整ったようにみえた。歓喜の400メートル個人メドレーでの金メダルから中1日。体の疲れはあるはずだが、萩野は燃え尽きるどころか、200メートル自由形へ向けてむしろ元気が出ていて、気持ちが乗っているような感じだった。予選は余裕あるレース運びで、準決勝も周りがよく見えていて全体の2位で通過。準決勝の入場したときの表情をみると、本当にニコニコとした感じで、レースが楽しくて仕方ない様子だった。

今大会は本当ならもっとたくさんの種目に出場できる実力があるのに、金メダルを優先するために種目を絞って臨んでいる。特に400メートル個人メドレーは金メダルの最有力候補で、頂点に立たなければいけない立場だった。それが今回の200メートル自由形は、準決勝でも頭一つ抜けていた自由形スターの孫楊(中国)がいて、萩野はいわばチャレンジャーに近い。400メートル個人メドレーで気持ちよく金メダルを取った後だし、本当にワクワク感が募るなかで決勝のレースを迎えたと思う。

それがタイムは1分45秒90と自身の日本記録(1分45秒23)には及ばず、準決勝の記録からも0秒45落とした。優勝した孫楊は1分44秒65のタイムで実力通りに力を発揮したが、仮に萩野が自己ベストで泳いでいたら3位と同着だった。ほかの選手が軒並みタイムを上げて、かなわなかったというわけでもないので、もったいない。レース後のインタビューで本人は「少し足をためて、最後の50メートルで(勝負)と思ったけれど、もっと前半のスピードがなかったらダメ」と語ったそうだ。萩野は水のとらえ方がうまく、体力が落ちる後半になっても、失速することなく泳げる。実際、萩野は最後の50メートルが強く、2014年仁川アジア大会の200メートル自由形では孫楊と韓国の朴泰桓(パク・テファン)の実力者2人を、驚異的な追い上げで一気に抜き去って日本新記録で優勝、周囲をあっといわせたこともある。

だが100メートルの折り返し、そして150メートルの地点で最下位の8番では、やはり仕掛けが遅かったと言わざるを得ない。残り50メートルで勝負をかけるのであれば、せめて3、4番につけていないといけなかったし、ラストスパートも伸びを欠いていた。本人も前半はそこまでタイムを抑えている意識はなく、「これくらいのペースでいいか」と思っていたのではないか。ちょっとした自分のスピード感の違いや、感覚のズレというものがあったのかもしれない。また隣のコースを泳ぐ孫楊が100メートル過ぎから、ぐーんとラップタイムを上げてくるという読みの違いもあったと思う。隣にあれだけ差をつけられてしまうと、焦りも生まれてくるもの。泳ぎにも余裕がなくなってしまい、最後の詰めにも影響が出たようにみえた。

けがによる経験値不足も影響か

800メートルリレーに向けてこの失敗をぜひとも生かしてほしい=共同

実際のタイムと自分の泳ぎの感覚にズレにがあったのだとすれば、けがのために昨年の世界選手権を欠場したことが影響を及ぼした可能性がある。今回の五輪は400メートル個人メドレーをメーンに注力していたので、世界水泳の経験がなくても、日ごろから個人メドレーは常に世界のトップスイマーとの戦いを想定して練習していたと思う。ただ、200メートル自由形はそこまで力を入れて取り組めず、経験値が足らなかったともいえる。もちろん自由形は日本選手権でも泳いでいるけれど、世界レベルと比べると全然スピード感が違い、レース展開をみても彼より先に行く選手がいるかどうかというところ。14年はパンパシフィック選手権やアジア大会で世界のトップと手合わせしていて、意外とけがに泣かされて実戦が積めなかった昨年1年間は大きかったのかもしれない。

ただ、20年東京五輪に向けていい教訓になったのは確か。そして4年後の前に、今回の五輪で800メートルリレーがまだ残されている、萩野は当然修正してくると思うし、日本はうまくいけばメダルを取れる位置につけている。800メートルリレーに向けて、この失敗をぜひとも生かしてほしい。

(中京大スポーツ科学部長)

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