人口約12億人のアフリカ市場を狙い、日本企業の進出が相次いでいる。従来は、豊富な埋蔵量を誇る資源関連の投資が主流だったが、最近では育ち始めた中間層をターゲットにした即席めんなどの消費財メーカーや、IT(情報技術)関連の企業も目立つ。日本政府の主導で8月下旬にケニアの首都ナイロビで開くアフリカ開発会議(TICAD)をきっかけに、「最後の大市場」と呼ばれるアフリカへの投資熱が一段と高まりそうだ。
(編集委員 加賀谷和樹、山田剛)
■通信インフラの整備進む
神戸市のIT企業、神戸デジタル・ラボの村岡正和取締役は2016年秋、アフリカ東部のルワンダを再訪する考えだ。国をあげてIT産業を育成するルワンダで将来、ビジネスを展開するヒントを得るためだ。村岡氏は「水準はまだ低いが、光ファイバーが張り巡らされるなどインフラ整備は進んでいる。当社が得意とする電子商取引(EC)のほか、農業分野の生産性を上げるためにも、ITを活用したソリューションが考えられるのではないか」と指摘する。
16年5月に村岡氏を含む多くのIT企業幹部らと首都キガリを訪問した神戸市の多名部重則・新産業創造担当課長によると、ルワンダのICT(情報通信技術)会議所には外資系を含め約40社が登録し、提携の機会をうかがっている。神戸情報大学院大学(神戸市)の修士課程には16年5月現在で、ルワンダからの留学生12人が在籍する。
ルワンダに一足早く進出したのが、スマートフォン(スマホ)のアプリなどを開発するレックスバート・コミュニケーションズ(東京都千代田区)だ。14年、現地の技術者との共同出資でキガリにワイヤードインという開発会社を設立した。15年にはワイヤードインの子会社を東京都内に設立し、受注の窓口にすえた。将来の人手不足に備え、IT技術者を確保する狙いもある。
■中間層、10年で23%増加へ
日清食品ホールディングスは13年から、インドのグループ企業で製造した即席麺をケニアで販売している。現地生産に切り替えることができれば、ケニアが参加する経済協力組織「東アフリカ共同体(EAC)」の域内にも売り込む。ケニア法人の初代代表を務めた広報部の岡林大祐係長によると、主な対象顧客は中間層とその一歩手前の消費者だ。アフリカ開発銀行は「1日の総収入が4~20ドル」と定義する中間層が、20年にアフリカの全人口の3割を超える約4億3470万人に達すると予測、10年より23%増える見込みだ。デロイトトーマツコンサルティング(東京都千代田区)によると、ナイジェリア、南アフリカなどアフリカの主要6カ国の即席麺の市場規模は16年が10億ドルと予測される。東南アジアに比べなお小さいが、10年の2倍に膨らむ見通しだ。
レオン自動機はアフリカにパンやクッキーなどをつくる食品加工機を輸出している。アフリカ向けの輸出額は5年ほど前からぐっと伸び、この2~3年の平均で年3億~4億円に達した。
東部のウガンダで、現地法人を通じてアルコール消毒剤を製造、販売するサラヤ(大阪市)は、同国の公立病院への大量供給の開始を目指す。実現すれば、原料を供給するウガンダの砂糖メーカー、カキラ・シュガー・ワークスとの合弁会社を設立する計画だ。
化学大手のカネカが着目したのはおしゃれ用のヘアエクステンション(つけ毛)だ。様々なヘアスタイルを楽しみたいアフリカ女性の心をとらえ、高い経済成長に乗って売り上げを伸ばす。アフリカの工場に同社が供給する原材料「カネカロン」の量は現在、売り上げが大きく拡大し始める前の02年当時に比べ、約8倍に膨らんだ。16年4月にはガーナの首都アクラに駐在員事務所を開いた。
豊田通商は12年、西部のフランス語圏に商圏を持つフランス商社CFAOを買収した。そのころまでに東部の英語圏の市場を攻略していた豊田通商にとって、西部に単独で進出するリスクを低減する狙いだった。16年3月にはフランスの複合企業で、物流やITなどに強いグループの中核、ボロレと提携した。電子商取引への取り組みなどに力を入れる。