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正反対の萩野と瀬戸、補い合ってダブル表彰台

初日から「ダブル表彰台」に日本新記録のラッシュ。私が思った以上の競泳第1日になった。

注目の男子400メートル個人メドレーはワンツーフィニッシュこそできなかったとはいえ、1種目で日本選手が同時にメダルを獲得することは60年ぶりの歴史的快挙。同じく競泳に身をささげて「金」を目指した者として、この瞬間に立ち会えたことがうれしくあり、光栄であり、ついつい涙腺が緩んでしまう。

過去から学び、芯携えての「金」

男子400メートル個人メドレーで萩野(右)が金メダル、瀬戸は銅メダルを獲得した

その歴史的なレースにはうれしさとともにホッとしたところもある。萩野公介選手は実力を高くうたわれながらも、銅メダルの前回ロンドン五輪以後は国際大会で思うように結果を残せていなかった。押しも押されもせぬ金メダル候補と目されるなか、やっと自分の力、いや力以上のものをリオで示してくれた。

力のある者が国際舞台でその通りの結果を出せていないのはメンタルの部分もあるのだろうかと思っていた。だが表面には出にくくとも、萩野選手は心の強さを身につけていたのだろう。決勝レースは前半を慌てず入り、勝負どころになるとみた自由形で迫るケイリシュ選手(米国)を退けた。自分の思い描く通りにレースを運んでいる。技術的に秀でているのはもちろん、今回は彼の「強さ」をみせてもらった。

「本番前になると考えすぎて、自分に負けていた」と話していたこともある。ケガで泳げなくなった時間との向き合い方も含め、過去から学び、しっかりした芯を携えてこの舞台に臨んだことがうかがえる金メダルだ。

私とゆかりのあるJSSの仲間でもある瀬戸大也選手は、悔しいことだろう。彼にしては前半のバタフライと背泳ぎを抑え気味に入った。後半ペースを上げていくはずが、そのまま自由形も上がりきらなかった。予選でケイリシュ選手と同組で泳いでいた分、ケイリシュ選手とは別組だった萩野選手以上に意識しすぎたのかもしれない。ケイリシュ選手が平泳ぎ以降で驚異的に伸びてくることを体感していただけに、「後半が勝負になる」と……。

残念だけれども、萩野選手の「金」は瀬戸選手がいてのものでもある。いい意味で真面目な萩野選手と、ちゃめっ気も交えて雰囲気をもり立て、自分も乗せていく才覚のある瀬戸選手。正反対で補えあえる特長を持つ2人の、お互いがいてこその表彰台だろう。

池江璃花子選手には、ただびっくり。初めて五輪に出る16歳は気後れしたり縮こまったりするものなのに、それがない。初日だけで4レースも泳ぎ、それでいて予選から日本新記録を出し、レースごとに記録を上げた。決勝では予選からタイムを落とす選手もいるなかで、だ。

おそらく今は、理屈で考えればしんどいはずなのに、自分が思った以上に体がついてくる状態だろう。タフというか、これが10代の怖さ。女子100メートルバタフライを見渡せば彼女より背の大きい選手は何人もいる。そんな海外勢の多くはパワーを誇る「前半型」。パワーでスタートから飛ばし、その貯金で後半どこまで持たせられるかというレースをする。私も現役時代は前半型だった。

池江、波に乗っているときにメダルを

池江は水のつかみ方や体重移動でのバランスの取り方がうまい=共同

池江選手はそうしたパワーに恵まれたわけではないが、後半に強くペースを上げられる。「腕の長さ、リーチがある」と評されもするが、リーチ自体なら海外勢も負けないはずで、むしろ水のつかみ方や体重移動でのバランスの取り方がうまいのだろう。決勝へ向けて本人は「(メダルよりまず)56秒台を」と謙虚だったが、波に乗っているときにメダルを取ってほしい。チャンスというものは何度も訪れるとは限らないのだから。

男子100メートル平泳ぎの小関也朱篤選手にも驚いている。国際舞台になると苦しむ印象もあったのだが、予選で北島康介さんの日本記録に0秒01まで迫る58秒91。この100メートルの手応えは本職の200メートルへつながる。さらにいえば、もう少し自分を押し出していいかもしれない。コメントもかわいげで控えめというか。「北島さんの記録は、次に僕が破る」と言い切るくらいでいいのでは。

今大会は昼に予選、夜中に決勝。このタイムテーブルならではの難しさも感じている。午後1時ころの予選の時点で体がいったんでき上がってしまい、夜には疲れが出てしまう。ただ、この悪条件は日本選手だけのものではない。女子400メートル個人メドレーを制したハンガリーのホッスー選手は、予選からきっちりタイムを上げて決勝で世界新を塗り替えた。予選、準決勝、決勝としっかりステップアップしてタイムを上げた選手が決勝でも戦えている。男子100メートル平泳ぎのピーティー選手(英国)は準決勝でタイムこそ0秒07落としたが、1本目の予選から世界記録をたたき出した。その予選の世界記録になお満足せず、もう一度更新してやるくらいの意欲が印象的だった。2人が発していたのは、怖がらない果敢さ、挑む姿勢。

臆していてはもったいない。日本チームも自信を持って戦いきってほしい。

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