萩野が金、瀬戸が銅 競泳で60年ぶりダブル表彰台
【リオデジャネイロ=田村城】リオデジャネイロ五輪の競泳男子400メートル個人メドレーで萩野公介(21、東洋大)が金メダル、瀬戸大也(22、JSS毛呂山)が銅メダルを獲得した。今大会の日本勢の金メダル第1号で、個人メドレーでの日本勢の金メダルは初めて。競泳の日本勢のダブル表彰台は1956年メルボルン大会男子200メートル平泳ぎ金の古川勝、銀の吉村昌弘以来、60年ぶり。
萩野は前回ロンドン大会の銅に続くメダル獲得で、自身の従来の日本記録(4分7秒61)を更新する4分6秒05をマークした。瀬戸は4分9秒71で、予選で出した自己ベスト(4分8秒47)よりタイムを落とした。4分6秒75を記録したケイリシュ(米国)が2位に入った。
決勝は、予選3位の萩野が3レーン、予選2位の瀬戸が5レーン。前半をリードしたのは、1コースを挟んで泳いだこの2人だった。予選で自己ベストをマークして「調子いいですね」と話していた瀬戸が得意のバタフライでまず飛び出す。2位に続いたのが萩野だ。「大也は予選からいい泳ぎをしていた。前半からいかないと大也に勝てないと思っていた」と萩野は言う。
2泳法目の背泳ぎは萩野の得意種目だ。予定通り、瀬戸を逆転してトップに立ち、150メートルのターンでバサロキックを生かして一気に抜け出した。2位の瀬戸に体一つ分の差をつけて平泳ぎに入った。
平泳ぎは瀬戸が自信を持つ種目だ。予選の後、瀬戸は「平泳ぎがポイントになる。平泳ぎの感覚を研ぎ澄ませたい」と話していた。その言葉通り、ここからが勝負だったのに、瀬戸が伸びない。後ろからぐんぐん追いかけてきたのは4コースのケイリシュだ。瀬戸は予選でもケイリシュと戦って大接戦を演じ、自己ベストを記録していた。このときの疲れが残っていたのか。平泳ぎでケイリシュに逆転され、3位に落ちた。
後半に強いケイリシュがトップの萩野に迫る。最大のライバルを瀬戸と見ていた萩野にとっては予想外の展開だったかもしれないが、余裕はあった。平泳ぎは苦手種目ではあったが「平泳ぎはラスト(の自由形)に余力を残すように泳いでいた」。自由形は今大会の200メートルにエントリーしている得意種目であり、「競り合いになったら絶対負けない」という自信を持つ種目。しかし、ケイリシュも速い。激しく追いかけられたものの、焦ることなく、力強い泳ぎを貫いた。猛追をしっかりかわして、ゴール。「ケイリシュの泳ぎは怖かったけれど、勝ててよかった」。右腕でガッツポーズだ。
金メダル候補の筆頭が、実力通りの泳ぎを見せて、3年前に出した自己ベストを大幅に更新した。昨年は自転車で転んで右肘を骨折し、世界選手権に出られなかった。その大会で世界選手権2連覇を達成したのは瀬戸だった。「ほんとうにいろいろあったけれど、苦しい時期があったからこそ、最後の最後まで粘れたのだと思う。今日は(指導を受ける)平井先生の首に金メダルをかけたい一心で泳いだ」と萩野は喜んだ。
銅メダルの瀬戸はレース後、予選の疲れが残っていたことを認めた。予選では終盤に力を抜いてケイリシュに1位を譲ったが、決勝では終盤に伸びを欠いた。「疲れていました。決勝でタイムを上げたかったけれど、疲労が残っていた。まだまだ甘かったです」。潔く負けを認めて、小学生時代から競い合ってきた同学年の友人をたたえた。「公介(の金メダル)は(ロンドン五輪の銅から)4年間頑張ってきた成果だと思う。自分もこれから4年、みっちり準備をして、東京五輪でこそ、(萩野と)ワンツーフィニッシュできるように頑張りたい」。2人は互いの健闘をたたえて抱き合った。