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37歳キャリア女子がたどり着いた「元彼」という希望

キャリア女子ラブストーリー ~アラフォーからの恋愛論

NIKKEI STYLE

こんにちは。ライターの大宮です。自活できる程度以上に稼いでいるアラフォーの独身女性と会い、仕事と恋愛について語り合う本連載。6人目の鈴木明美さん(仮名、37歳)とのお話も今日が最後です(前回記事はこちら)。

広告制作会社のディレクターとしては業務内容にも待遇にも満足して働いている明美さんですが、「好きな男性と結婚して子どもを産んで幸せな家庭をきずきたい」という気持ちが高まっています。地元の九州で付き合い始めて20代後半で別れた同い年の新一さん(仮名)をはじめ、今までに何人かの男性と結婚のチャンスがありました。しかし、「簡単に夢を捨てる甘ったれ」、「妻と離婚予定だという既婚者」、「部下に暴言を吐く」などの欠点を受け入れることができず、明美さんのほうから彼らに別れを告げてきたのでした。

交際相手の攻撃性に気づき「やっぱり無理」

2年前、そんな明美さんに新たな出会いがありました。大手企業に勤務している2歳年下の弘明さん(仮名)です。男らしい見た目と性格に引かれた明美さんは、半年後には結婚を決めるというスピード感で弘明さんと交際をしていました。弘明さんも「年上女性と結婚した従兄弟が幸せそうに暮らしている」と前向きに応じてくれます。彼には部屋をまったく片づけられないという短所がありましたが、掃除好きの明美さんは意に介しませんでした。共同生活をすれば補完し合えると感じていたのです。

幸せな日々が続いた後、明美さんは弘明さんの新たな短所に気づきます。ルーズなくせに気が短いという不思議な性質です。

「一緒にディズニーランドに行っても、行列や人混みが嫌い過ぎてメーンの乗り物に乗れないんです。パレードも見られずに帰ってきてしまいました……。それだけなら我慢できたのですが、ファミレスで並んでいたときに私たちの予約を飛ばしてしまった店員さんに対して、『何やってんだよ、てめえ!』と彼が怒鳴ったことがありました。あれで完全に終わりましたね。こんな人の子どもは産めない、と思いました」

明美さんは以前にも同じような理由で恋人と別れたことがありました。そのケースでは「矯正できる余地もあるのでは」と僕は相手の男性を擁護したのです。しかし、弘明さんの場合はより深刻であり、迅速かつ穏便に別れた明美さんの判断は正しかったと思います。なぜなら、弘明さんは実際に暴力を振るった過去を笑いながら明美さんに明かしたからです。

「私の後輩が電車の中で見知らぬ中年男性に殴られる、という事件があったんです。その話を彼にしたら、『オレもそういうことがあったな。弁護士に頼んでうやむやにしてもらったけど』と得意そうに話すんです。殴られたのではなく、彼が殴った側。ありえない、とますます思いました」

確かにありえないですね。DVを受ける前に離れることができて不幸中の幸いでした。

現在、明美さんは「上司に相談して仕事よりも婚活を優先させてもらっている」状況です。婚活パーティーなどにも積極的に参加しています。「群れたくない」なんて突っ張っていた5年前と比べると格段に謙虚になっているのです。

ただし、恋愛相手としての異性に求めるものは簡単に変えることはできませんよね。僕は他の男性もたくさんいる場で明美さんと会ったことがありますが、明らかにイケメンな男性ばかりと会話をする明美さんの様子が印象に残っています。いわゆる「面食い」なのですね。

明美さんは、せっかく婚活パーティーに参加しても、10歳以上も年下の商社マン男性とずっと一緒にいたこともあります。そのあげく、「この人はモテそうだし、結婚はすぐに考えてくれなさそう」という理由でアプローチをしなかったり。明美さん、パーティーの趣旨を間違えていませんか?

「いえ、43歳の会計士さんとも話しましたよ。物腰が柔らかくて見た目も若い人でした。でも、最初のデートでいきなり告白されたので『気持ちは前向きです。何度か一緒に遊びに行きませんか』と答えたんです。そうしたら、『そうか~、縁がなかったか。じゃあ、これからも友だちってことで』と言われてしまいました。私は前向きに考えたいって言っているのに。人の話をちゃんと聞けよ。こいつ、バカじゃないの?と思いましたね」

思い出しながら怒りで言葉遣いが荒くなる明美さん。その会計士の男性はパーティー会場でも複数の女性からアプローチされており、明美さんの他にもデートの予定が入っていたようです。だからといって遊び人だとは限りませんが、かなり強気になっているのは確かです。即答をしない明美さんを待つ気持ちにはなれなかったということですね。30代・40代でちゃんと稼いでいて会話能力も見た目も問題がない独身男女を並べて比べてしまうと、男性のほうが「選べる立場」にあることは否めないのです。

なお、そのパーティーには50代の男性も多数参加しており、美人の明美さんにはアプローチをしてくれた人も少なくありませんでした。しかし、明美さんは「年寄りは無理」と一蹴します。明美さんの価値観からすると、50代の男性は完全に恋愛の対象外。かといって、30代40代の独身男性には手が届きにくい。わかりやすいミスマッチが生じているのですね。

そこで明美さんは、もう一度原点に立ち返っています。26歳のときに別れた元恋人の新一さんとよりを戻すことです。

「先日、数年ぶりに電話が通じて1時間ぐらい話すことができました。彼もまだ独身で、好きな人はいないみたいです。すぐにでも九州に帰りたいと思いました。でも、重すぎますよね。グッと堪えて『お互いの中間地点で久しぶりに会おうよ。大阪あたりはどう?』と提案したんです。もし彼と結婚できるなら、会社を辞めて地元に戻るつもりです。広告の仕事はほとんどないけれど、県庁で中途採用をしていることも確認しました。採用試験まであと数カ月しかないのですが、勉強もやる気満々です。その後、彼はなかなか電話に出てくれないんですけど……」

不安を抱えながらも晴れやかな表情を見せてくれる明美さん。10年の歳月を経て、「最高の恋人」であった新一さんに愛情を捧げることに決めたようです。心を定めてしまえばすっきりするものですよね。もし報われなかったとしても、明美さんの人生に悔いは残らない気がします。

大宮冬洋(おおみや・とうよう)
 フリーライター。1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに就職。1年後に退職、編集プロダクションを経て02年よりフリーに。著書に『30代未婚男』(共著/NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました』(ぱる出版)など。電子書籍に『僕たちが結婚できない理由』(日経BP社)。読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京もしくは愛知で毎月開催中。
ライター大宮冬洋のホームページ http://omiyatoyo.com/

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