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仲良しライバル、表彰台に立て 競泳・萩野と瀬戸

リオデジャネイロ五輪は開会式も終わり、いよいよ本格的に熱戦がスタートする。競泳ニッポンの最大の注目は、やはり初日の6日夜(日本時間7日午前)に決勝が行われる男子400メートル個人メドレーに尽きるだろう。今季の世界ランキング1位の萩野公介(21)か、それとも世界選手権2連覇の瀬戸大也(22)か。日本勢の「金」「銀」に期待が膨らむばかりだ。

「試合が楽しみ」と萩野。緊張よりワクワク感が上回っている=共同

リオに現地入りして試合直前の選手の練習を見たが、日本チームはみんな順調な様子で、選手たちの声を聞くと会場のプールも比較的泳ぎやすいとのことだった。萩野はすごく落ち着いていたし、「試合が楽しみだ」と話していた。金メダル候補として迎える2度目の五輪は、緊張感よりもワクワク感が上回っているようだ。瀬戸の表情をまだ見ることはできていないが、平井伯昌コーチによれば、だいぶ調子が上がってきているという。もちろん米国やハンガリーの海外勢が割って入る可能性はあるものの、今の萩野と瀬戸の2人の調子を考えれば、順当に日本勢がワンツーフィニッシュできる状況にきているのではないか。

アテネ、北京では北島が勢いをつけた

競泳は個人競技ではあるけれども、チームにとって流れをつくることが大切。これまでも序盤の勢いに乗ってメダルを量産してきた。2004年アテネ、08年北京五輪では、この春に引退した北島康介選手がまず金メダルを取った。12年ロンドン五輪は北島選手は平泳ぎでメダルには届かなかったけれど、その分、萩野が400メートル個人メドレーで銅メダルを取るなどして後半の戦いにつなげた。仮に萩野と瀬戸が4~5番になってしまうと、誰もが「あらっ」と思うのと一緒で、日本チームも「えっ」となるはずで動揺が広がるだろう。その意味で日本チームのその後の戦いを占うレースといえるかもしれない。

高橋繁浩氏

ライバルがいることで強くなる、とあらためて感じる。米国内で競り合って互いにレベルを上げ、史上最多となる五輪金メダル18個を獲得したマイケル・フェルプス(31)と同5個のライアン・ロクテ(32)がその代表例だろう。萩野と瀬戸は特に同学年で、2人は小さい頃から競ってきた。最初は萩野の力が抜きんでていたが、互いに意識するようになった。普通ならジュニア時代に競っていても、シニアになれば一方は脱落してしまうもの。それが共に順調に成長し、五輪の舞台で戦うなんて非常に珍しいし、こういうライバル2人がそろうのは本当にすごいことだと思う。

ましてや4泳法をこなす個人メドレーは非常にタフで、今の時代は一つの穴も許されない、一番苦しいともいえる種目。実際、どの種目を練習するかの配分ひとつとっても難しいはずだが、日々の厳しい練習を支えているのが「ライバルに負けられない」という思いだろう。萩野が若干苦手とするバタフライで速くなれば、背泳ぎで萩野に差を付けられている瀬戸は背泳ぎを何とか改善しないといけなくなる。毎日互いに意識しながら練習に取り組んでいるはずだ。競る相手がいるということは、強くなる上で非常に重要なことだ。

また2人は、ライバルといってもギクシャクとした関係ではなく、日ごろから仲がよい。2人で泳ぎ、2人で競い合い、2人で表彰台に乗る、といったように互いに認め合い、2人の戦いを楽しみにしているようなところがある。2人ともポジティブなのが何よりの強み。大舞台で力を発揮できる資質を2人とも兼ね備えているように見える。

平井コーチによれば、瀬戸の調子もあがってきているという=共同

萩野は12年ロンドン五輪の400メートル個人メドレーで銅メダルを獲得した。前回は高校3年生であくまでチャレンジャー。だが、この4年間は常に高いレベルを目指して、世界で勝つためのレースに取り組んできた。13年にはロンドン五輪の記録を1秒33上回る4分7秒61のタイムで日本新記録をたたき出すなど、ベテラン選手でさえかくや、という域に入るほどの経験を積んできた。もはやチャレンジャーではない。昨年はけがで思うように力が発揮できなかったことも大きなバネになっていると思う。日本記録はいつでも更新できる状態だろうし、4分5秒くらいは出せるのではないか。

五輪初参加の瀬戸、心配は不要

一方の瀬戸は今回が初めての五輪の舞台になるが、心配は不要だろう。13、15年と世界選手権に2連覇して実績もある。特に15年の世界水泳では200メートル個人メドレーなどで振るわなかったが、気持ちを切り替えて最終日の400メートル個人メドレーで栄冠をつかみ取った。あの勝利でつかんだ自信はすごく大きいと思う。自分の記録を出せば自然と結果はついてくる。そのくらいの意識で臨むはずだ。

2人の力は甲乙つけがたい。冷静にみれば、自己ベストで上回る萩野に分がありそうだが、最後の最後までわからない面白い勝負になるだろう。勝負のポイントを挙げるなら、互いに苦手とする泳法がカギになるかもしれない。萩野はいかに平泳ぎをまとめるか、瀬戸は背泳ぎで萩野に離されないようにするか。2人はこれまでライバルとして互いに高め合ってきたが、本番のレースでは相手のことを気にしていては大概失敗する。あとは自分の持ち味を出し、理想とするイメージ通りのレースができるかどうかだ。心のコントロールも大切になってくる。

北島選手は04年アテネで金メダルを獲得し、08年北京へとつなげて五輪連覇を達成した。そして、当時その姿を見て憧れた子供たちが育っている。4年後に自国開催の東京五輪を迎えるにあたり、リオで結果を残すことは重要だ。萩野と瀬戸のどちらが「金」を奪うにせよ、ワンツーフィニッシュとなれば最高の形で東京五輪につなげられる。

(中京大スポーツ科学部長)

 高橋繁浩(たかはし・しげひろ) 1961年滋賀県生まれ。高校時代に平泳ぎで世界ランク1位となり脚光を浴びる。1984年ロサンゼルス、88年ソウルと2大会連続五輪出場。現在は中京大スポーツ科学部長を務めるかたわら、同大水泳部監督として選手を指導している。

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