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競泳、何はともあれ初日 自分のペース貫いて

とにかく初日。競泳は第1日の男子400メートル個人メドレーで萩野公介選手と瀬戸大也選手がメダルを取れるかどうかで競泳全体の波が変わる。「金」、欲をいえばワンツーフィニッシュ。今大会で日本は10個以上のメダルを取れるのではと勘定しているが、それも初日の2人が追い風を与えてくれるのを織り込んでのこと。

欲をいえば、萩野(上)と瀬戸にはワンツーフィニッシュを期待したい=共同

本人たちもその役割を重々分かっている。「プレッシャーを楽しめている」と現地で語った萩野選手のメンタルの強さが見どころだ。表情が硬そうにみえるのはむしろ彼のマイペース。これは全選手にもいえることで、ここまでくれば後はいかに自分のペースを崩さずに貫けるか、だ。

女子200メートル平泳ぎも金藤理絵選手と渡部香生子選手のどちらが金メダルをとってもおかしくない。昨年の世界選手権で渡部が優勝したことへの悔しさが金藤選手にはあるから、重圧よりも悔しさを本番で爆発させてくれるだろう。

女子200メートルバタフライで昨季世界王者の星奈津美選手も期待できるが、私はむしろ高2の長谷川涼香選手が気になる。注目度の高い池江璃花子選手や今井月選手に比べ、星選手に次いで代表入りした彼女はまだまだチャンレンジャーの立場。うまく星選手についていけば、力を出しきるには最高の環境だ。

ツボにはまったときの10代が放つ力

ノーマーク、ノンプレッシャーの選手が勢いを背にして勝つ。練習・調整・勢いの3者がかみ合ったときに10代の放つ無欲の力は、五輪が引き出す「すごさ」の一つだ。

例えば女子100メートル背泳ぎは1分を切る選手が今季は日本に一人もおらず、代表に"穴"が開いてはいる。海外勢は20人以上が1分を切っていて、今季ベストは58秒73(シーボーム選手、オーストラリア)、日本記録も寺川綾さんが記録した58秒70。

中村真衣さん

だがメドレーリレーで代表入りした中3の酒井夏海選手も背泳ぎのポテンシャルは高い(4月の日本選手権は1分0秒12)。酒井選手が1分を切ってみせるなど誰か1人が壁を破れば、ドミノ倒しのように他の若手へも波及して好記録が連発する、なんて展開も起こりうる。

前回ロンドン五輪の女子チームでは、お姉さん的な存在として寺川さんがいたことが大きかった。女子は「自分のペースでやりたい」という選手が多いのだけれども、彼女は自分のレースに向き合いながらも周りにも気を配ってチームを束ねていたと聞く。北島康介さんや寺川さんのいない今回の競泳チームはいわば新たなチームであり、これからつくり上げていくチーム。別のいい方をすれば、試されてもいる。中高生の女子選手が背負うには分不相応な期待が、ときには彼女らへのしかかるかもしれない。4年後の東京五輪でも活躍すべく、実のある経験をリオで積んでほしい。

金藤は五輪という舞台のすごさも、「怖さ」も知っている

初出場組が多い今回だが、そのなかで「2度目の選手」に注目したい。私も高2で臨んだ最初の1996年アトランタ五輪は、代表になれるだけで満足だった。同世代の仲間も多く、楽しく、今振り返ればそんな居心地の良さに流されてもいたのだろう。結果は100メートル背泳ぎ4位。力を出し切れなかった悔しさが、次のシドニー五輪でメダルをもたらしてくれた。

金藤、鈴木両選手には芯の強さ

初めての五輪は得てして勢いのまま。2度目の金藤選手や萩野選手は、五輪で背負う期待がどういう代物かがわかる。前述したあの舞台のすごさとともに「怖さ」も知っている。

2008年北京五輪に出た金藤選手は12年ロンドン五輪を逃した後、「もう辞めようと思っているんです」と話していたこともあった。「もしやりたい気持ちが1%でもあるのなら、やる方がいいよ。頑張ってみたら」と私は声をかけた。自分もシドニー五輪から次のアテネ大会を目指すとき、プレッシャーとの戦いを味わったから、よくわかる。私は04年アテネ大会出場をつかみきれなかったが、金藤選手は乗り越えてみせた。

同じ平泳ぎの鈴木聡美選手もそう。初出場のロンドン大会で「銀」と「銅」2つのメダルに輝いたが、狙って手にしたメダルではなかったと思う。ロンドン後は不振にあえぎ、リオまでは苦しくつらい4年間だっただろう。金藤選手にも鈴木選手にも、そうしたプレッシャーや怖さと向き合う道程を乗り越えたからこその芯の強さがあると思うのだ。

2度目以降の五輪で結果を残せる選手は、本当に強いのだから。

 中村真衣(なかむら・まい) 1979年新潟県長岡市生まれ。高校2年生で1996年アトランタ五輪に出場、女子100メートル背泳ぎで4位入賞。中央大に進んで臨んだ2000年シドニー五輪で同種目の銀メダルに輝き、女子メドレーリレーでも銅メダルを獲得した。引退後は水泳の普及活動や新潟県などでスポーツ振興に携わる。

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