2019年8月23日(金)
スポーツ > 極める > 記事

極める

フォローする

萩野、転んで強く 骨折糧に平泳ぎレベルアップ

2016/8/4 3:30
保存
共有
印刷
その他

折ったのは泳ぎの根幹に関わる肘だった。それ以前の速さは本当に戻るのか。昨年7月、右腕を三角巾でつりながら世界選手権の出場辞退を表明した萩野公介(東洋大)の痛々しい姿に、誰もがそう案じた。

自転車の転倒によるアクシデントから1年、21歳は自らの居るべき場所に戻ってきた。個人メドレー2種目で今季世界ランキング1位。金メダル候補の筆頭としてリオデジャネイロ五輪に挑む。

故障の間に平泳ぎをレベルアップした(7月30日、リオデジャネイロ)=写真 玉井良幸

故障の間に平泳ぎをレベルアップした(7月30日、リオデジャネイロ)=写真 玉井良幸

「右肘の骨折後、前と同じ動きができているかといえば、そうじゃない」と明かす。そんな"ハンディ"を背負いながらも世界のトップに君臨しているのだから驚きだ。

バタフライ、背泳ぎ、平泳ぎ、自由形の順に4泳法の総合力を競う個人メドレー。故障の影響が最も出たのは得意の背泳ぎだった。

肘をぐっと伸ばし、より遠くの水を素早くつかまえるのが理想のストロークだった。骨折後、それができなくなった。「肘を伸ばした状態から力を入れてかくのが難しくなったと本人は言う。だから、今は肩の横付近の水をキャッチしている」と競泳日本代表の泳法分析を担当する日本スポーツ振興センター(JSC)の岩原文彦は明かす。

いまの肘の状態に合わせた泳ぎをすぐに固めて、マイナスを回避したことが萩野の天才ぶりを物語る。さらには、水中練習ができなかった期間に苦手の平泳ぎをレベルアップするための土台をつくり上げた。

骨折直後、平泳ぎで五輪2大会連続2冠に輝いた北島康介のトレーニングを手掛けてきたJSCの田村尚之に、平泳ぎに特化した下半身の強化を依頼。「これまで手つかずだったことに取り組むチャンス」と捉えた萩野の前向きな姿勢に心を打たれ、田村は全力のサポートを約束した。

まず、陸上で平泳ぎのキック動作をさせてみたところ、右と左で水をとらえる時の足首の角度に約20度の違いがあることが判明。尻や太ももの筋肉を鍛えつつ、ゴムひもを用いた地道なストレッチを課して足首の角度の左右差を矯正した。

萩野を指導する東洋大監督の平井伯昌は「お尻が一回り大きくなった」と目を見張る。萩野も「素人みたいだった平泳ぎがだいぶましになった。今なら平泳ぎで日本選手権に出場できると思う」と笑う。転んでも、ただでは起きなかった。

4月の日本選手権の200メートル個人メドレーで自らの日本記録を2年ぶりに塗り替えた。骨折前の自分超えはリオへの大きな弾みになった。「正直、元のように泳げるか不安があったけど、もう大丈夫だと確信できた」

5月下旬からの欧州遠征とスペイン高地合宿を経て、7月29日にリオ入り。「やるべきことは全てやってきた」と言い、2日の練習後も「史上最高の泳ぎができている」。試練を乗り越え、スイマーとしての器がさらに大きくなった観がある。

リオを、復帰までの苦しい道のりを支えてくれた人々への恩返しの場と位置づける。「去年は色々な方にご迷惑をかけた。(リオ五輪の結果で)倍にして返したい」。新たな使命を背負った強みが、2度目の大舞台で必ず生きる。=敬称略

(田村城)

極めるをMyニュースでまとめ読み
フォローする

保存
共有
印刷
その他

競泳のコラム

関連キーワード

電子版トップスポーツトップ

極める 一覧

フォローする
男子200メートル個人メドレーでは4位の木村=共同共同

 競泳の木村敬一(東京ガス)は16日、男子200メートル個人メドレー(視覚障害SM11)で4位となり、リオデジャネイロ・パラリンピックでの戦いを終えた。金メダルには届かなかったが、5種目で銀2銅2の4 …続き (2016/9/18)

競泳男子50メートル自由形でスタートする山田=寺沢将幸撮影

 13日の競泳男子50メートル自由形(運動機能障害S9)で銅メダルを獲得した山田拓朗(NTTドコモ)は、左肘から先がないアスリートだ。13歳の時から4大会連続パラリンピックに出場し、初のメダルを引き寄 …続き (2016/9/15)

吉田(左)は父・栄勝さん直伝の「攻めるタックル」で勝利をめざす=共同共同

 アテネ五輪から3つの金メダルを手にしてきた吉田沙保里でも、この大舞台の怖さを無視できない。「勝てる選手でも負けてしまうなど、難しいところがたくさんある。五輪は本当に何が起こるかわからない」。多くの実 …続き (2016/8/18)

ハイライト・スポーツ

[PR]

新しい日経電子版のお知らせ

より使いやすく、よりビジュアルに!日経電子版はデザインやページ構成を全面的に見直します。まず新たなトップページをご覧いただけます。

※もとの電子版にもすぐ戻れます。