解説者の目(山口香)

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「軽高重低」の日本柔道 多士済々の男子に期待

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2016/8/4 6:30
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4年前のロンドン五輪で男子は金メダルなし、男女を通じても金1個の不作に終わった日本柔道の復権が、リオデジャネイロでかかっている。

ロンドンの後のルール改正によって、世界の柔道は、日本人が思い描いている「あるべき姿」に近づいたと感じる。投げ技のポイントを反則よりも重くみる。両手で組むことを拒む者にはペナルティーが課せられる。「組んで投げよ」と言いふくめる現在のルールが日本柔道を押し上げているのは、好成績をおさめた過去3大会の世界選手権に見られるとおり。昨年のアスタナ(カザフスタン)大会においては、男女14階級のうち6階級(男3、女3)を日本勢が制している。

柔道男子の井上監督。スター監督の下で本当によく立て直した=共同

柔道男子の井上監督。スター監督の下で本当によく立て直した=共同

不祥事続きの難局、柔道界を一枚岩に

ルールの後押しにとどまらない。これは特に日本の男子チームに言えることだが、不面目のロンドンの後、強化の方向を見誤ることなく、本当によく立て直したと思う。井上康生というスター監督を押し立て、選手の所属先である企業も大学も隊伍(たいご)を組んで、彼を支えた。それができたのは、ロンドンの不振とその直後に噴出した金銭や体罰がらみの不祥事が重なって、日本柔道界が一度落ちるところまで落ちたからかもしれない。柔の道の命脈を危うくするほどの難局に立たされて、みなが小異を捨てて一枚岩になれたのだと思う。

近年の五輪において、日本柔道に「軽高重低」の傾きがあるのは、すでに人の知るところだ。先に試合をおこなう軽量級では十分に金メダルを見込めるのに、そこで取りこぼすと、中量級から重量級へと進むにつれてメダル獲得は望みの薄いものになる。「金なし」が続けば後から出てくる日本選手の負う荷は重くなり、海外勢はどんどん手ごわくなる。特に男子はそうだった。

今回の男子も「軽高重低」は変わらない。ただしその傾きは、ずっとなだらかなものになっている。

軽量級は常にも増して多士済々。変則スタイルの高藤直寿(60キロ級)、実績ある海老沼匡(66キロ級)の後に、盤石に近い強さを誇る大野将平(73キロ級)が控える。軽量3階級でまず金1個は堅いと私はみるが、万一漏らしても、後続の選手を私たちは期待とともに見守ることができる。茫洋(ぼうよう)とした永瀬貴規(81キロ級)の受けの強さや、内股にかける羽賀龍之介(100キロ級)の正統的な柔道を。尻すぼみにならない。ロンドンとはそこが違う。そういう布陣を整えたのは今回の男子チームの強みであり、そういう布陣だからこそ成果を求めたい。

山口香氏

山口香氏

初日登場の近藤、何か起こせば女子も

女子はどうだろう。メダル争いに絡む力なら7人全員が持っている。しかし、金となるとちょっとつらい。苦手とする外国人選手がどこかで負けてくれたとか、体力を温存したままスルスル勝ち進んだとか、いろいろと付帯条件が必要になってくる。

4年前の金メダリスト、松本薫(57キロ級)はやや迫力を減じており、やはり前回の主力の中村美里(52キロ級)にも絶対の強さはない。何かを起こすとすれば、初日に出てくる近藤亜美(48キロ級)かもしれない。柔道は粗削りだが、勢いがあって気持ちが強い。自己を肯定しやすい性格で「自分は強い」と信じていられる。男子の1番手の高藤にも似たところがあるが、とりわけ今回の女子は、吉凶いずれの目が出るにしろ、近藤という"初手"次第という気がしている。

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