仕事では「ぼんやり」した方がいい理由

難しい仕事を前にしてたじろいだことはありませんか? こんな時、無理に集中しようとしてもあまり効率よくありません。
産業・組織心理学者のMarla Gottschalk(マーラ・ゴッツチョーク)博士は次のように述べています。
(Marla Gottshchalk 「One Smart Way To Solve Tough Problems: Don't Bully Your Brain」、2014年)
休んでいる間も脳は活動している
ニューヨーク大学のLila Davachi(リラ・ダヴァチ)博士は、ぼーっとしている時でも脳が活動していることを突き止めています。
(TIME誌 「Studies: An Idle Brain May Be Ripe for Learning」、2010年)
カナダのブリティッシュコロンビア大学の研究グループが発表した論文では、むしろ休んでいる時の方が脳の活動が活発であることが指摘されています。
(ScienceDaily 「Brain's Problem-solving Function At Work When We Daydream」)
難しい問題が解決されるのは「ぼんやり」している時
実は集中状態にはあるデメリットがあります。集中していること以外は、意識から締め出しているため、既存の考えや枠組みにとらわれ過ぎてしまうのです。これでは優れたアイデアや、難しい問題の突破口は見つけ出せません。
困難な課題に直面した時、一生懸命取り組みすぎることはかえって逆効果です。
それはぼんやりしている時のリラックス状態が「脳にいろいろな情報をつなぎ合わせ、重要な気づきとして返してくれることを可能にしてくれる」と工学を専門とするバーバラー・オークレイ教授はMother Jones誌に話している。
(Fast Company 「Why You Need To Stop Thinking You Are Too Busy To Take Breaks」)
行き詰まった時こそ「ぼんやり」すべき
ぼんやりしている時こそ、脳はそれまでに集めた情報をリンクさせアイデアを生み出すのです。なので、難しい局面に直面している時こそ、「休んでなんかいられない!」なんて言っていてはダメです。リラックスし、特に何かに集中するわけでもなく自由に思考してみてください。必要があればデスクから離れ、散歩をしたり、お茶を飲んだりしてみましょう。単純作業に切り替えるだけでも効果があるようです。
私たちの多くは、無意識に緊張状態で仕事をしています。つまり、リラックスしている時に発揮されるひらめきの力を十分発揮できていないのです。仕事の領域ではまだまだ「休憩」や「リラックス」することの重要性が理解されていません。しかし、休憩することこそが効率のよい仕事につながります。Gottschalk博士が指摘するように、無理にアイデアをひねり出しても意味がありません。
(Marla Gottshchalk 「One Smart Way To Solve Tough Problems: Don't Bully Your Brain」、2014年)
仕事であえて「ぼんやり」してみてください。こまめに休憩を取ることも重要です。ひらめきがあるだけでなくストレスも軽減されるはずです。

翻訳・通訳者。アート専門の翻訳、通訳、プロジェクトの企画運営などを行うArt Translators Collective副代表。ネイティブレベルの英語力を活かし、書き手・話者の視点に寄り添う翻訳・通訳に定評がある。美術館、財団、雑誌などの出版物の翻訳、ウェブメディア記事の翻訳・執筆のほか、イベントやシンポジウム等の通訳や海外とのコレスポンデンスなども行う。
[nikkei WOMAN Online 2016年7月21日付記事を再構成]
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