日本勢4人目の連覇狙う「野獣」 柔道・松本薫
自称「考える野獣」。対戦相手が思わず視線を外すほどの鋭い目つきで前回大会で日本柔道界唯一の金メダルを獲得した57キロ級の松本薫(ベネシード)。
もちろん見据えるのは大会連覇である。達成なら柔道女子では谷亮子、谷本歩実、上野雅恵に続く4人目の快挙となる。

28歳。男女を通じてチーム最年長になった。ただ、再び五輪の舞台に戻ってくるまでの道のりは長く苦しいものだった。金メダリストであるがゆえの「勝たなければ」という重圧に苦しみ、右肘のケガもあって結果を残せない日々が続いた。「人の目を気にしすぎて自分で重圧をつくっていたんだ」と気づいたのが昨年夏のことだった。8月の世界選手権では、ロンドン大会決勝の対戦相手、カプリイオリウ(ルーマニア)に優勢勝ち。強い「野獣」の復活を印象づけた。
ロンドン大会は一本勝ちはなかった。華麗さはないが、足技でしつこく崩し、攻めに攻め続け、寝技で仕留めるのが松本のスタイル。リオに向けても走り込みを増やすなど、持ち前のスタミナ強化に重きをおいた。28歳が求めたのは「美しく勝つ」ではなく、「何としてでも勝つ」という自らの柔道の原点だろう。
獲物を狩るように相手をにらみ付け、大外刈り、小外刈りの足技を繰り出し、寝技へ――。松本らしい柔道ができれば、連覇は十分可能だ。カギとなるのは一にも二にも闘争心か。女子は今大会から4大会ぶりに1分短縮されて4分に変更された。体力自慢の松本にとって追い風となるはずだ。