勝負はこれから

フォローする

大リーグ初の米軍基地開催でみえたもの
編集委員 篠山正幸

(1/2ページ)
2016/7/26 6:30
保存
共有
印刷
その他

東京23区の倍の面積の土地で、5万5千人の軍人を含む25万人が活動し、8つの学校に4500人が学び、病院では毎日6~8人の新生児が誕生している――。メジャー通算3000安打が迫るマーリンズ・イチローを追いかけるなか、米軍最大級とされるフォートブラッグ基地での1戦を取材する機会に恵まれた。軍とスポーツの屈託のない連携に、米国の一断面を見た気がした。

活動中の基地でメジャーの試合初開催

3日にフォートブラッグ基地で行われたブレーブス-マーリンズ戦

3日にフォートブラッグ基地で行われたブレーブス-マーリンズ戦

7月3日のブレーブス―マーリンズ戦は米南東部ノースカロライナ州にある基地、フォートブラッグのなかで行われた。活動中の基地でメジャーの試合が行われるのは初めてという。

メジャーの試合は原則的に各ホーム球場で行い、常打ち球場以外での開催は日本での開幕戦などごくまれだ。

異例中の異例ともいえる基地内での開催は7月4日の独立記念日に合わせ、国を守る軍への感謝と敬意を示すべく企画されたものらしい。

我々取材陣は手荷物の検査を受け、広大な敷地内を10分ほどマイクロバスで走り、5億円をかけて建設されたという仮設の球場に着いた。

病院や学校などがある一画は、おそらく広大な基地のなかの"文教地区"らしく、生々しい訓練施設などの面影はなかった。

しかし、ベトナム戦争の激戦期にあたる1966年から70年までの間に、20万人の青年がここで訓練を受けたといった説明を聞くと、そこが戦いの前線から遠くないことが意識され、空恐ろしさを覚えた。

客席を埋めた1万2582人の観客は軍人とその家族。巨大国旗が外野を覆い、軍関係者による国歌斉唱が行われ、軍のヘリ4機が轟音(ごうおん)を立ててセンターからホームプレート上空を飛行し、プレーボールがかかった。

日本のプロ野球がこうした場所で開催されることを想像した途端「ありえない」となるわけだが、米国ではそこに越えるべき垣根のようなものはないようだ。

試合前には療養中の兵士とその家族が暮らす施設をロブ・マンフレッド・コミッショナー、ヤンキースなどで監督を務め、今はコミッショナーのご意見番となっているジョー・トーリ氏、選手会専務理事のトニー・クラーク氏が慰問した。

記者会見に臨んだイエリチ(右)。弟が海軍にいるといい、基地でプレーできることを「光栄に思う」

記者会見に臨んだイエリチ(右)。弟が海軍にいるといい、基地でプレーできることを「光栄に思う」

試合前の記者会見ではコミッショナー、マーリンズのドン・マッティングリー監督らが「このような場所で試合ができるのは光栄」と口をそろえた。

マーリンズの主軸、クリスチャン・イエリチは20歳になる弟が海軍に所属しているといい、軍関係者の前でプレーできることを喜んでいた。

もっとも、施設の整ったいつもの球場での試合とはわけが違い、選手には負担がかかる遠征だった。テント小屋にはそれなりのロッカールームや簡単な打撃ケージも設けられていたが、通常のパターンにない移動を含め、一苦労だったことは間違いない。

2015年に就任、メジャーの新規事業への取り組みに熱心とされるマンフレッド・コミッショナーにとって、今回の開催は肝煎りのイベントだったようだが「選手会の理解と協力を得られたおかげ」としきりに選手側を気遣っていたのが印象的だった。

  • 1
  • 2
  • 次へ
保存
共有
印刷
その他

大リーグコラム

電子版トップスポーツトップ

勝負はこれから 一覧

フォローする
第2戦の一回、先制を許した今井(右から3人目)のもとに集まる西武ナイン=共同共同

 リーグの覇者、西武としてはあまりにつらいクライマックスシリーズ(CS)敗退だった。だが、菊池雄星、浅村栄斗が抜け、昨季最多勝の多和田真三郎も不調、という試練を克服するなかで、チームの新しい形も見えて …続き (10/15)

引退試合となったDeNA戦の二回、マウンドへ行き沢村(左)と握手を交わす阿部=共同共同

 自身が「サプライズ的に決断したところがあった」と明かすくらいだから、巨人・阿部慎之助の現役引退には、何かの弾みのような要素がからんでいたのかもしれない。もちろん、引退は選手にとって最大の決断。降って …続き (10/1)

本塁打や打点部門で年少記録を更新し続けるヤクルト・村上。一方で三振の数でもリーグトップを走る=共同共同

 投手としては与四球、打者としては三振が、野球で喜ばしくない記録の筆頭だろう。だが、こうした「マイナス」の記録に、選手の特徴が表れているケースが少なくない。三振や四球からみえてくる選手の味とは……。
  …続き (9/17)

ハイライト・スポーツ

[PR]