ソフトバンク和田、目指せ「日本のトミー・ジョン」
ノンフィクション作家 小野俊哉

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2016/7/24 6:30
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松坂大輔、ダルビッシュ有、藤川球児、和田毅、館山昌平、吉見一起……。近年の球界を代表する好投手たちの共通点をご存じだろうか。「トミー・ジョン手術」と呼ばれる肘の靱帯再建手術を受けていることだ。かつては投手生命を懸けた一大決心だったが、最近はハードルが下がり、復活する選手も増えた。「手術を受けると球が速くなる」との説さえ飛び交うほどだ。

和田は15日のオールスター第1戦に先発し、2回を完璧に抑えた。速球の最速は144キロだった=共同

和田は15日のオールスター第1戦に先発し、2回を完璧に抑えた。速球の最速は144キロだった=共同

今年、メジャーから古巣のソフトバンクに復帰した和田は素晴らしい復活を遂げている。7月15日のオールスター第1戦で全パの先発を務めた和田は2イニングを無安打に封じる完全なピッチングを披露した。前半戦では2桁三振を3度記録し、リーグトップタイの9勝を挙げた。

和田は2012年に海を渡った。ところが最初の春季キャンプで肘を痛めてしまい、断裂した腱(けん)を再建するトミー・ジョン手術を受けた。マイナーリーグでの登板を続けながらリハビリに時間を費やし、米国4年間の成績はカブスにおける21試合で5勝5敗、防御率3.36という不本意なものだった。

ところが日本に戻って来てからは以前に勝るとも劣らない投球を披露している。短いイニングではあったが、オールスターではほとんどのストレートが140キロを超え、最速は広島・新井貴浩に投じた144キロ。渡米前は140キロをたまに超える程度だったと記憶しているので、35歳にしてますますスピードアップしたような印象さえ受けた。

「手術すれば球が速くなる」という説

「トミー・ジョン手術をすれば球が速くなる」という説を聞いたことがある読者もいるだろう。手術と球速の関連性が注目されるようになったキッカケは、ナショナルズのスティーブン・ストラスバーグだ。ストラスバーグはナショナルズに全米1位でドラフト指名され、10年6月にデビューした。しかし8月に肘の腱を断裂し、トミー・ジョン手術を受けた。翌年の復帰トレーニング中に160キロ以上を投げ「手術前より速くなった」と話題になったのだ。

しかし、これは話が独り歩きした感がある。実際の復帰登板以降は、デビュー当時の最速165キロを上回ったこともないし、ストレートの平均球速は年々落ちている。スピードを追うよりも、先発ローテーションを守ることを本人が重視していることもあるのかもしれない。いずれにしても復帰後に球速が増した事実はない。

和田に話を戻すと、本人は手術後に取り組んだ筋力トレーニングの効果を強調していた。リハビリ期間中に走るトレーニングを毎日組み込むなど下半身の強化を欠かさなかったのも大きいだろう。今の和田のスピードは手術そのものの恩恵ではなく、その後のトレーニングの成果と考えたほうがいい。

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