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上智大内に賃貸オフィス 四ツ谷駅前で進む大型開発

日経アーキテクチュア

JR四ツ谷駅の西となる新宿区側で、延べ面積が約14万m2(平方メートル)の大規模開発が始まった。高さ145mのオフィスビルや住宅、商業施設などを整備する、同エリアではかつてなかった規模の大型複合開発で、完成すればエリア外からも企業や人を呼び込めそうだ。

一方、駅東の千代田区側は古くから番町や麹町が格調高い地区として発展してきた。駅前の上智大学では超高層ビルの建設が進む。新宿区側も再開発を機に存在感を増していく。

四ツ谷駅周辺には江戸城の外濠跡が南北に走っており、東側と西側で風情が異なる。西側は江戸城から見て外濠の外側に当たり、住所は新宿区。中・小規模のビルが建ち並び、昔ながらの飲み屋街などもある"庶民派"の街になっている。一方の東側は外濠の内側に当たり、住所は千代田区。名門私立校や高級マンションが整然と並ぶ閑静なエリアで、新宿通り沿いには大規模ビルや高層マンションも増えている。

四ツ谷駅を背にして再開発地区を望む。既存ビルの解体が進む(写真:日経アーキテクチュア)
新宿通りの四谷見附橋。1913年に架設され、1991年に架け替えられた。橋の向こうは新宿区、直下はJR線のホーム(写真:赤坂麻実)

駅前開発は"全国区"ビルに

西側エリアでは、都市再生機構(UR都市機構)が「四谷駅前地区第一種市街地再開発事業」に着手した。新宿区立四谷第三小学校や財務省四谷公務員宿舎の跡地など国公有地と周辺市街地合わせて約2.4ヘクタールを事業区域として一体整備していく。計画地は外堀通りを挟んで四ツ谷駅四ツ谷口のはす向かいに位置している。

地上31階の業務タワー棟や住宅約100戸、商業施設、文化国際交流棟、教育棟、約360台分の駐車場、広場などを設ける。計画敷地は約1.8ヘクタールで、現在は既存建物の解体などを進めている。2016年8月初旬に建設工事を始め、2019年10月下旬に完成の予定だ。設計・施工は大成建設

四谷駅前地区第一種市街地再開発事業の完成予想図。敷地北西からの鳥瞰(図:都市再生機構)
完成予想図。四谷見附北交差点より(図:都市再生機構)
再開発する「四谷駅前地区」の位置図。はす向かいが四ツ谷駅の四ツ谷口(図:日経アーキテクチュア)
JR四ツ谷駅の四ツ谷口を背にして、四谷駅前地区第一種市街地再開発事業の計画地を見る(写真:赤坂麻実)
計画地の南側に庶民的な飲食街「しんみち通り」がある。古地図にも記載がある古くからの商業地(写真:赤坂麻実)

四ツ谷駅は交通の便が良く、JR中央線は快速と緩行がどちらも停まり、東京メトロは丸ノ内線と南北線が乗り入れる。

「ここまで駅近なら注目度は抜群。JR中央線は特別快速も停まり、交通の便が良い場所。今後の都内の再開発は山手線沿いが多く、中央線沿いかつ山手線の内側では、新たな大規模オフィスは珍しい」と、三幸エステートの今関豊和チーフアナリストは、プロジェクトをこう評価する。

「エリア内の他の物件とは一線を画すグレードなので、他エリアの同クラス物件が比較検討対象になるだろう。そういう意味では"全国区"のビル。賃料は坪当たり3万円台に乗り、難なく満室になるのではないか」と分析する。

四ツ谷駅の東西でオフィス賃料を坪単価で比較(単位は円)。東の千代田区側の方が西の新宿区側よりも賃料は高い。データは2016年5月末時点のもの(資料:三幸エステートの資料を基に日経アーキテクチュアが作成)
四ツ谷駅の四ツ谷口。車寄せがある(写真:赤坂麻実)
JR中央線の駅を望む。左が快速線ホーム、右が緩行線ホーム。快速線には快速のほか特別快速も停車し、利便性が高い(写真:日経アーキテクチュア)

ソフィアタワー、12月竣工

一方の東側エリアにも大型の開発計画がある。駅の南東に位置する上智大学の四谷キャンパス内に、新たに17階建ての6号館(ソフィアタワー)を建設中で、7~16階を賃貸オフィスとする。オフィス部分は三井不動産が商品企画を行い、上智大からのマスターリースのもと、テナントリーシング、運営管理を一括して担う。

ソフィアタワーの完成予想図。四ツ谷駅より(図:上智大学)

オフィス部分は、総貸床面積約4000坪、基準階約400坪とし、「本社使用に対応可能」とうたう。制振ダンパーや非常用発電機、被災度判定システムなどのBCP(事業継続計画)機能も備える予定だ。

上智大学は同タワーに「言語教育研究センター」や「グローバル教育センター」、800人規模のホールを兼ねる大教室などを設ける。賃貸オフィスの収益は、奨学金や教育研究環境の整備の財源にするという。敷地面積は5900m2、延べ床面積は3万9700m2。設計は日建設計、施工は大成建設。2016年12月末に竣工する予定だ。

この6号館の完成により、既存の2号館、7号館と並ぶ3棟の高層建物で、駅側からの新しいスカイラインを形成する。低層階には、1932年に建設された1号館や、四谷キャンパスに隣接するカトリック麹町教会(聖イグナチオ教会)と同じテラコッタを壁や床に用いることで、地域の街並みとの一体化を図る。

建設中のソフィアタワー(写真:赤坂 麻実)
四ツ谷駅側から上智大学を見る。上智大の高層棟でスカイラインが形成されている。手前の円筒形の建物は聖イグナチオ教会(写真:赤坂麻実)

番町・麹町エリアはマンション供給も

駅東側の番町・麹町エリアは、東京で最もステータスの高い住宅街として発展しており、西側とは対照的な雰囲気だ。現在も、新宿通り沿いでは、三菱地所レジデンスが「ザ・パークハウス 千代田麹町」を、千代田区立番町小学校のそばには、大和ハウス工業が「プレミスト六番町」を建設中で、高級マンションの供給が続く。番町や麹町のブランドが強いため、四ツ谷駅が近くても、「四谷」や「四ツ谷」を冠したマンション名が少ないのも特徴だ。

四ツ谷駅の麹町口。駅名の書体も四ツ谷口とは異なる(写真:赤坂麻実)
閑静な六番町の様子(写真:赤坂麻実)

周辺には千代田区立番町小学校や雙葉中学校・高等学校など学校が多く、ベルギー大使館やイスラエル大使館も立地。セブン&アイ・ホールディングスの本部やオリエントコーポレーション(通称・オリコ)の本社、日本テレビ放送網の分室など、大手企業もオフィスを構えている。

「江戸城の表玄関というイメージの良さで、番町・麹町エリアにこだわる企業もある。1980年代後半から90年代には、外資系企業がこのエリアを足掛かりにして、会社が大きくなると他のエリアへ出ていく流れがあった。環境の良さは海外企業にも受け入れられている」(今関氏)。

四ツ谷駅周辺地域は今後も、東西それぞれの路線を走りながら、別のニーズに応えていくことになりそうだ。

(フリーライター 赤坂麻実)

[日経アーキテクチュアWeb版2016年7月13日号の記事を再構成]

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