孫社長の青写真 実現へ、アームが乗り越えるべき課題

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2016/7/21 6:30
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日経テクノロジーオンライン

ソフトバンクグループが英国の半導体設計会社ARM Holdings(アーム・ホールディングス)を、約3兆3000億円という巨費を投じて買収する。日本企業による海外企業の買収では過去最大の規模となる。なぜソフトバンク社長の孫正義氏は、「CPUコア」の設計を生業とする売上約1800億円(2015年度)の英国企業に、未来を賭けるのか。ARMの強さと課題を、製品・技術の視点で見ていく。

図1 Simon Segars氏(写真:ARM)

図1 Simon Segars氏(写真:ARM)

ARM CEO(最高経営責任者)のSimon Segars氏は、たった2週間でソフトバンクからの買収提案の受け入れを決めた理由を2つ挙げている(図1)。1つは、17英ポンド/株という買い取り価格が高評価だったこと。もう1つは、ソフトバンクと"未来"に対する考え方が一致したことだという。

ソフトバンクの孫社長が強調したように、両社が見据える未来はIoT(モノのインターネット化)がもたらす。ソフトバンクはIoTによって、新たなサービスや機器を提供できるようになる。その機器で情報処理を担っている半導体集積回路(IC)の中核回路である「CPUコア」こそが、ARMの主力製品である。

ARMはCPUコアを開発し、半導体メーカーにライセンスする。半導体メーカーが、そのCPUコアに周辺回路やメモリーなどを加えたICを開発・製造して、機器メーカーに提供する。

■ARMコア集積ICは900億個超

Segars氏が、「世の中にあるほとんどの携帯電話機やスマートフォン(スマホ)には、ARMのCPUコアを集積したICが搭載されている」と言うように、ARMを成長軌道に乗せたのは、ケータイやスマホといったモバイル機器向けICである「アプリケーションプロセッサー」だった。モバイル機器向けアプリケーションプロセッサーICをARM躍進の第1の波とすると、第2の波は「組み込み機器向けのマイクロコントローラー(マイコン)」である。

ARMはマイコンをターゲットにした「Cortex-M」というCPUコアを開発し、その第1弾「Cortex-M3」を2004年に発表した。2007年に大手半導体メーカーとして初めて伊仏合弁STMicroelectronicsがCortex-M3をベースにしたマイコン「STM32ファミリー」を発表したのを皮切りに、ARMのCPUコアをベースにしたマイコンが増えていった。

それまでマイコンは独自のCPUコアを持つ半導体メーカーでないと開発が難しかったが、Cortex-MのライセンスをARMから受ければ、どの半導体メーカーでもマイコンを開発できるようになった。今や32ビットマイコンのほとんどは、ARMコアをベースにするICとなっている。

例えば、ルネサス エレクトロニクスがIoT向けの新たなマイコンとして投入した「Synergy」は、全製品がCortex-MをCPUコアとして集積している(図2)。ARMのSegars氏によれば、ARMのCPUコアを集積したICの累積出荷数は900億個を超えたという(アプリケーションプロセッサーやマイコンなどを含めた総数)。

図2 IoT機器向けマイコンの例。図はルネサス エレクトロニクスの製品で、いずれもCPUコアにCortex-Mを採用している(図:ルネサス エレクトロニクス)

図2 IoT機器向けマイコンの例。図はルネサス エレクトロニクスの製品で、いずれもCPUコアにCortex-Mを採用している(図:ルネサス エレクトロニクス)

■IoT機器向けICに第3の成長の波

モバイル機器向けアプリケーションプロセッサー、組み込み機器向けマイコンに続く、第3の波と目されるのが「IoT機器向けIC」である。IoTは大まかに言えば、(1)ビッグデータを処理するデータセンター、(2)センサーなど使ってデータを集めるエッジ、(3)データセンターとエッジを結ぶネットワーク、の3つに分けられる。

このうち、機器の数が多いのがエッジである。ARMの資料によれば、マイコンやエッジ機器向けの市場(ARMは「エンベデッドインテリジェンス市場」と呼ぶ)の規模は2020年に300億米ドルとなり、モバイル向けアプリケーションプロセッサーの市場規模である250億米ドルを上回る(図3

図3 マイコンやエッジ機器向けICの「エンベデッドインテリジェンス市場」が、モバイル向けアプリケーションプロセッサーの市場より大規模になると予測(図:ARM)

図3 マイコンやエッジ機器向けICの「エンベデッドインテリジェンス市場」が、モバイル向けアプリケーションプロセッサーの市場より大規模になると予測(図:ARM)

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