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改めてJリーグの秋春シーズン制導入を考える

サッカージャーナリスト 大住良之

サッカーJリーグの第1ステージで優勝を飾った鹿島アントラーズがその万歳の両手を下ろし終わらないうちに第2ステージが開幕した。

この間にG大阪のFW宇佐美貴史がドイツのアウクスブルクに移籍し、広島FW浅野拓磨のアーセナル(イングランド)移籍も決まった。甲府のFWクリスティアーノが柏へ、FC東京のMF河大成(ハ・デソン)とJ2C大阪のMF扇原貴宏の2人が名古屋に動いた。しかし欧州を中心に移籍市場が活発に動いてクラブの「イノベーション」が行われるなか、Jリーグはいかにも不活発だ。

G大阪からドイツのアウクスブルクに移籍した宇佐美。ただ、Jリーグ全体の移籍は不活発だ=共同

選手の登録期間は年2回

サッカー界の混乱をなくすために、国際サッカー連盟(FIFA)は選手登録ができる期間を年2回と設定し、日本サッカー協会もその規則に従って「登録期間」を設け、「ウインドー」とも呼んでいる。契約が継続している選手、更改した選手、そして新規契約の選手(すなわち移籍選手)も、原則としてすべてこの期間に登録されなければならない。

基本的には、シーズン終了後から最長12週間、そしてシーズン半ばに最長4週間。天皇杯決勝までを「シーズン」とするJリーグは、ことしの1月8日(金)から4月1日(金)までを「第1ウインドー」とし、第2ステージが始まる前日の7月1日(金)から7月29日(金)までを「第2ウインドー」とする2回の「窓」を開けた。

外国から大物選手がくるかどうかはクラブの資金力にもよるが、この「第2ウインドー」の動きはあまりに不活発と言わなければならない。

第1ステージを受けて、各クラブにはそれぞれに補強しなければならないポイントがあるはずだ。とくにこの時点で「残留争い」を覚悟せざるをえないクラブにとっては、どのようにチームを立て直し、第2ステージで必要な勝ち点を得ていくか、できる限りの努力をしなければならない。もちろん「先立つもの」が必要だが……。

広島の浅野はアーセナルへ移籍したが、欧州からの選手獲得は少ない=共同

勝ち点1つの重みは増すのだが…

「残留ライン」の目安は、「試合数以上の勝ち点」である。J1が18クラブになった2005年から昨年までの11シーズンの15位(残留)チームの平均勝ち点は37.6。16位(降格、08年までは入れ替え戦出場)の平均は32.8。降格チームの最多勝ち点は12年の神戸の39で、残留チームの最少勝ち点は15年の新潟の34だった。

6月25日に終了した今季第1ステージを見ると、13位新潟が勝ち点18、14位名古屋と15位鳥栖が17、16位湘南が16、17位甲府が15、そして18位福岡が11。

第2ステージで勝ち点23(第1ステージの順位でいえば8位の磐田と同じ)以上を挙げなければならない福岡はきわめて厳しい状況だが、他は1つの勝ち点が大きな分かれ目になる。サッカーでは、その「違い」を生むためのポイントが通常では「補強」なのだが、それがままならない。

この6クラブで目立った補強をしたのは名古屋。FC東京から韓国代表MF河大成、J2のC大阪から12年ロンドン五輪代表MF扇原を獲得し、7月9日の川崎戦でさっそくデビューさせた。福岡は横浜MからMF三門雄大とともにFC東京からDF駒野友一を補強し、リオデジャネイロ五輪で戦列を離れるDF亀川諒史のポジションを手当てした。

だが甲府は第1ステージに7得点を挙げたFWクリスティアーノが柏に移籍してしまい、以前柏でプレーしたFWドゥドゥをブラジルから補強したが、得点力ダウンは否めない。

第1ステージは4位だった広島。移籍する浅野の穴埋めにブラジル人選手を獲得した=共同

残留争いのチーム以上にショックなのが、G大阪の宇佐美、広島の浅野という日本代表FWの欧州移籍だ。ふたりとも、本人の意向でチームは止めがたかった。

欧州シーズンとのズレが移籍の妨げに

G大阪も広島もアジア・チャンピオンズリーグとの兼ね合いで第1ステージは広島4位(優勝の鹿島と勝ち点10の差)、G大阪6位(同勝ち点15の差)と不本意な成績に終わり、第2ステージは猛追をかけなければならなかった。その矢先に「切り札」を失うのは非常に痛い。

広島は浅野の穴埋めとしてブラジルから22歳のFWアンデルソン・ロペスを獲得した。半年間の期限付き移籍のなかで戦力になるのか……。ただし広島の森保一監督は昨年のドウグラス、ことしのピーター・ウタカと、新加入の外国人選手をいきなり活躍させた実績がある。

一方のG大阪には大きな補強の動きはない。逆に長年いぶし銀のプレーを見せてきたMF二川孝広をJ2の東京Vに期限付き移籍させた。

リオ五輪でDF遠藤航、FW興梠慎三という攻守の中心を欠くことになる浦和だが、いまのところ補強はなく、G大阪と同様、逆にDF橋本和を神戸に期限付きで放出した。

大ニュースになるような移籍がJリーグのクラブにほとんどない理由の一端は、もちろん資金不足にある。だが同時に見逃せないのが、欧州とのシーズン制のズレだ。

「秋春制」と呼ばれる欧州では、シーズンは8月に始まり、翌年の5月まで続く。「第1ウインドー」は6月から8月までとなり、この間に驚くほどたくさんの選手が動き、新シーズンを迎えるときにはどこも新鮮味のあるチームでファンの期待をかきたてる。「第2ウインドー」は1月が中心となる。

ところがその「欧州市場」が開いている6月から8月の間に、日本の市場が開いているのはわずか4週間にすぎず、しかもシーズン半ばの獲得はチームに慣れさせる時間も短く、リスクが高い。必然的に、欧州から日本への移籍は少なくなる。

そして日本のクラブが広く新戦力を求める1月から3月にかけては、欧州ではシーズンの真っ最中。移籍を希望する選手がいても、ほぼ契約期間中にあたり、高額な移籍金が発生する。欧州からの選手の獲得ということを考えれば、現在のシーズン制が大きな足かせになっているのは間違いない。

今こそ「秋春制」を考えるとき

ことしのJリーグは2月27日に開幕、6月25日までに第1ステージ、そして翌週の7月2日に第2ステージが開幕し、最終節は11月3日。その後日本代表の日程をはさみながら「チャンピオンシップ」が行われ、12月3日が決勝戦第2戦となる。天皇杯決勝が17年元日。その後にシーズンオフとなる。

それを7月下旬に開幕とし、1月から2月中旬にかけての厳寒期は中断期間としつつ、5月下旬に閉幕するという「秋春制」(実質的には「夏春制」)にするのに、大きな無理はないと私は思っている。

このようなシーズン制にすれば、「第1ウインドー」は6月から8月、「第2ウインドー」は1月となり、欧州からの選手移籍がより活発になるだろう。

「春秋制」による今季の日程では、チャンピオンシップに関係のないクラブが天皇杯の準々決勝(ベスト8=12月24日)に残れない場合、遅くとも11月なかばでシーズンが終了してしまうことになる。ことしの天皇杯の4回戦終了(ラウンド16)は11月12日の予定だからだ。

こんなに間の抜けたシーズン終盤にしないためにも、「秋春制」へのシーズン移行をしっかり考えるべき時期にきていると思うのだ。

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