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群雄割拠の「読み放題」 電子雑誌、紙を脅かす

一定の月額料金を支払うと電子雑誌が読み放題になるサービスが広がっている。月額400円(税別)で160誌以上を読めるNTTドコモの読み放題サービス「dマガジン」が登録利用者が300万人を超えるなど読み放題サービスが群雄割拠する状況だ。1冊単位の販売でも富士山マガジンサービスがキーワード検索機能を導入し、利用者の獲得を進めている。

出版科学研究所によると、2015年の電子出版市場規模は1502億円で、雑誌は125億円を占める。書籍の228億円やコミックの1149億円と比べると少ないが、雑誌の増加率は14年比78%増と、18%増の書籍や30%増のコミックに比べて高い。

急成長の背景にあるのが、「dマガジン」をはじめとした雑誌の読み放題サービスだ。dマガジンが配信する電子雑誌には「週刊新潮」や「CanCam」、「Number」など人気の高い雑誌160誌が並ぶ。15年に紙媒体を休刊した「週刊アスキー」は、現在ではdマガジン経由の売上高が全体の半分を占めるまでになっている。

ドコモ以外のキャリアも雑誌読み放題サービスを提供する。ソフトバンクの「ブック放題」は雑誌140誌に加えて、コミック1万冊以上が読める。KDDIの「ブックパス」は雑誌230誌以上のほかに、電子書籍・コミック4万6000冊を配信している。au利用者限定のサービスで、読み放題サービスを通じてキャリア契約者を獲得する狙いだ。

オプティムは雑誌読み放題サービス「タブホ」では配信する雑誌に、7月から主婦の友社の雑誌7誌を加えた。主婦の友社は「雑誌読み放題サービスをきっかけに読む読者がおり、売り上げの増加につながっている」という。オプティムは現在配信する雑誌やムック誌の数を456誌から積み増す方針だ。

読み放題以外では富士山マガジンサービスが、デジタル雑誌を自由なキーワードで検索できるサービスを4月に始めた。ページごとに記載されている内容のキーワードごとに検索できる。埋もれていた過去の雑誌を読者が購入するきっかけとなり、使いやすさで利用者の獲得を目指す。

現在の電子雑誌は紙をタブレットで読める範囲にとどまっている。KADOKAWAの週刊アスキー編集に携わる稲葉一郎課長は今後の電子雑誌について「今後は記事に合わせた動画再生や広告へのリンクができるようになれば、電子版の付加価値を高められる」と展望を語る。

紙の雑誌は苦戦が続く。スマートフォン(スマホ)を持つ10代・20代が雑誌を買わなくなっていることが主因だが読み放題サービスも下押し圧力になっているようだ。

電子雑誌の普及が進む一方で、書店に並ぶ紙媒体の雑誌では厳しい状態が続く。出版科学研究所によると2015年の業界全体における雑誌の販売額は7800億円。14年比8.4%減となり、減少率は過去最大となった。取次大手の日本出版販売は2016年3月期の雑誌の売上高が前年比9.9%減の2434億円で、32年ぶりに書籍を下回った。

書店での販売減少の背景として、電子雑誌サービスの台頭の影響は大きい。スマートフォン(スマホ)のファッションアプリ普及も、若者を中心としたファッション誌の販売低迷の一因となっている。

雑誌の休刊や廃刊も相次ぐ。日之出出版の女性ファッション誌「SEDA」は7月号で休刊した。ファッション誌以外でも16年に「オリスタ」や「ケイコとマナブ」、「TVぴあ」などの雑誌が休刊した。

雑誌は中小の書店にとって大きな収益源だ。ある取次大手の役員は「定額読み放題サービスも長期的にみれば出版業界の首を締めることになる」と警鐘を鳴らすが、出版社はデジタル化へと進む。

(企業報道部 荒尾智洋)

[日経産業新聞2016年7月13日付]

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