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日本ハム急浮上の裏に勝負師・栗山監督の決断
編集委員 篠山正幸

2016/7/12 6:30
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球団新記録の15連勝で急浮上した日本ハム。注目されるのは作戦から一切のタブーをなくした栗山英樹監督(55)の勝負師ぶりだ。4番の中田翔に代打を送るなど鬼気迫る采配でチームを走らせ、ソフトバンクの背中を視界にとらえた。

開幕投手の大谷翔平になかなか勝ち星がつかず、今季の日本ハムは出遅れた。4月後半、やっとBクラスから抜け出したが、借金生活はゴールデンウイーク明けまで続いた。

栗山監督(右)の決断がチームを勢いづけた=共同

栗山監督(右)の決断がチームを勢いづけた=共同

この間、ひたすら「我慢」と言い続けた栗山監督。5番を任せるはずだった近藤健介が不調、中田も波にのりかけたかと思えばまたトンネルに入る。投手陣でも抑えの増井浩俊の救援失敗が目立ち、2軍での調整となった。

普通ならガタガタになってもおかしくない状態で、何とか命脈を保てただけでなく、交流戦終盤からの連勝で、ロッテを抜き2位に浮上。最大11.5ゲームあったソフトバンクとの差は瞬く間に縮まった。7月10日のロッテ戦では終盤で5点差から追いつき延長でサヨナラ。その進撃はミラクルの様相を帯びてきた。

昨季まで以上に「栗山色」

大谷や吉川光夫、有原航平ら先発投手陣にはもともとリーグ屈指の力があり、投打がかみ合いさえすれば、というだけの材料はあった。しかし、栗山監督のいくつかの決断がなければ、ここまで勢いがついたかどうか。

増井の代わりの抑えにクリス・マーティンを充てた。球は速いが、セットポジションでボークをとられて逆上するなど、大事な終盤のイニングを任すにはちょっと怖かった。そうしたリスクに目をつぶって起用したのが当たり、セーブを重ねている。

栗山監督には昨季、ブランドン・レアードを低打率にもかかわらず起用し続け、チームの本塁打王に仕立てた実績がある。「過去、何人も来日した外国人選手のなかには、もう少し我慢して起用していれば通用した選手がいたはず」と語っている。長い目でみることで、マーティンと同じく新加入のアンソニー・バースも力を発揮しだした。

就任初年度の2012年以来の優勝を目指す今季、昨季まで以上に「栗山色」が出ているようにみえる。得点力に乏しかった開幕以来の戦いのなかで、スクイズを多用している。

スクイズは相手の投球がたまたま大きくそれてバントできなかったケースも含め、失敗すればその責任は百パーセント監督にあるとされる作戦だ。しかし、そのリスクは作戦選択の迷いを生む要素にはならないらしい。

作戦に一切のタブーを設けない、という覚悟がうかがえたのが6月27日の西武戦での中田への代打だ。

4点を追う七回。2点を返してなお2死一、二塁となったところで栗山監督は中田に代打・矢野謙次を送った。

中田の腰の状態がよくなかったためとされている。しかし、先発して前の打席までバットを振れていたわけで、4番としては異例の「途中交代」だった。

勝負師として究極の一手が大谷(右)の「真の二刀流」での起用といえる=共同

勝負師として究極の一手が大谷(右)の「真の二刀流」での起用といえる=共同

矢野が四球でつなぎ、日本ハムは逆転に成功、この時点での連勝を5に伸ばした。作戦として成功したわけだが、こうした主軸がからむ"人事"についてはむしろその「アナウンス効果」に注目すべきかもしれない。

ここが今シーズンの山場であり、勝つためには何でもやるという、選手に対しての強烈なメッセージになったことは想像に難くない。

いよいよ前面に出てきた栗山監督の勝負師としての素顔。その究極の一手が大谷の「真の二刀流」での起用だろう。

5月29日の楽天戦。DHが使える試合で初めて大谷を投打兼務でラインアップに加えた。入団以来、体ができてくるまでの3年の準備期間を経て、4年目の今季、二刀流の本格稼働に入った。栗山監督は「大谷が投げて打つのは当たり前。そんなに騒ぎなさんな」という顔だったが、大谷を新たなステージに上げる大きな決断だった。

約束事や縛りから自由になった思考

決断の数々は相当に革新的だ。球界の常識を覆す点では「危険思想」ですらあるだろう。だが、誰も思いつかないようなことをしない限り、ソフトバンクの天下を終わらせられないと栗山監督は考えているのではないか。一切の約束事や縛りから自由になった思考から、次はどんな手が飛び出してくるだろう。

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