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もっと上へ 攻める 車いすバスケ・鳥海連志(下)

2016/7/9 3:30
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「菜の花保育園に入れてくれてありがとう」

鳥海連志が中学の卒業式で母の由理江に渡した手紙には、小学6年まで12年間通った長崎市の保育園(現こども園)への感謝がつづられていた。「障害があっても連志がやりたいことを何でもやらせてくれ、思い出深いのだと思う」と由理江。

「まだ成長段階なので、その山を登ってから緩急をつければ相当強くなる」と強調する

「まだ成長段階なので、その山を登ってから緩急をつければ相当強くなる」と強調する

鳥海は生まれつきスネの骨がないため、立てる年齢になっても、歩くのは膝立ちで、足をひきずりながらだった。園長の石木和子が驚いたのは、それでも階段をピョンピョン上り下りし、健常児と活発に遊んだこと。これは危ないからとは制限せず、やりたいことを見守る保育に徹した。

3歳で両膝下を切断したのは、元気な子どもの場合、その方が動ける自由があって成長する、という専門医の助言があったからだ。断端にバレーボールの膝用サポーターをはかせると、小さなストライドで前にも増して走り回った。石木は「障害があっても人間は『したい』ということを自分で見つけていく。人を育てる基本を勉強させてもらった」と述懐する。

スポーツで「したい」こととなる車いすバスケに出合ったのは中1の時だ。学校の女子バスケ部のコーチに誘われ、地元チーム、佐世保WBCの練習に参加した。ボールは手につかないし、シュートもおぼつかない。だが車いす操作は速く、守備には非凡さがあった。そして「負けたくないという闘争心がすごかった。伸びると思った」とWBCの高野逸生は言う。

中3で参加したアジアユースパラリンピックでも、チーム最年少にもかかわらず、フリーの先輩たちを差し置いて自ら切れ込み、シュートを放つ積極性で異彩を放つ。

高1で日本代表ヘッドコーチ、及川晋平の目に留まったのも「アグレッシブなプレーが強烈だった」からだ。その夏、日本代表の合宿に初めて参加して以降は、由理江も、WBCの仲間も、及川さえも予想しなかった急上昇の成長曲線に乗る。

ロンドン・パラリンピックまでの日本代表は出場が主要メンバーに偏り、試合後半になると運動量が落ち負けていた。その反省から及川は、代表12人を6つのユニットに割り振り、ユニットごとに選手の連係を高め、出場させる戦術をとる。

鳥海が入り、重要視しているのが藤本怜央、香西宏昭という両エースをのぞいたメンバーで組む「ユニット5」だ。「ベンチメンバーでも強度が落ちないことを見せれば、日本は世界的にもすごい強いチームになる」と鳥海は力を込める。根底には対抗心。両エースにも負けたくないのだ。

アグレッシブさだけではないプレーも求める声を聞くことがある。「緩急が必要だ」と。だが鳥海は「自分は限界に達していない。そこで緩急をつくってしまうと、すごい緩急にはならない。まだ成長段階なので、その山を登ってから緩急をつければ相当強くなる」。

初めて臨むパラリンピックだ。限界を引き上げるのにふさわしい頂が待っている。=敬称略

(摂待卓)

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