2019年4月26日(金)

東電「料金請求遅れ問題」 消失データ扱いで紛糾

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2016/7/11 6:30
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東京電力パワーグリッド(PG)のトラブルで電気料金の請求が遅れている問題は、2016年4月上旬の発生から3カ月以上が経過し、関係者の疲労はピークに達している。経済産業省は東電PGに対して、電力の全面自由化後、初となる改善勧告に踏み切った。東電PGは7月1日、改善勧告を受けて今後の改善策を改めて公表した。

そんな中、新電力から聞こえてくるのは、「先の対策はもちろん重要だが、既に請求が遅れている顧客対策を最優先すべき」という、悲鳴にも近い指摘だ。

既にインターネット上では、新電力への信頼失墜をうかがわせる消費者の書き込みが散見される。加えて、東電との競争上の懸念もある。東電の小売部門を分社化した東京電力エナジーパートナー(EP)も、新電力と同じく請求遅れが発生している。だが、東電から新電力に切り替えた消費者は、「請求遅れは新電力の固有の問題」と認識しがちだ。挙句、「東電から変えなければよかった」となってしまっては、身も蓋もない。

一言で「電気料金の請求遅れ」と言っても、複数の事象が混在している。新電力(小売電気事業者)は毎月、需要家ごとに集計した使用電力量の確定値を一般送配電事業者から受け取る。東電PGは一般送配電事業者に相当する。この確定値を基に、新電力は電気料金を計算し、顧客に請求する。

請求遅れの最もシンプルな事象が、東電PGからの使用量の確定値データが届かない「通知遅延」だ。このほか、システム処理のミスで、使用電力量の計測期間を誤り、誤データを送付してしまうといったケースなどもある。

なかでも、新電力が神経を尖らせているのは、確定値が"消失"したケースだ。ただし、データが本当に消えてしまったわけではない。確定値のデータがシステムのどこにあるか分からず、見つからない状況が続いていることを、"消失"としている。

つまり、システム改修や人海戦術によって確定値データが得られる可能性は残っている。だが、東電PGは「4月、5月に検針した確定値は、あまりに時間が経ってしまったので、消失扱いとし、新電力と消費者の協定でみなし使用電力量を決めて精算して欲しい」と新電力に依頼している。

■確定値はスマートメーターに44日間残る

この対応に、ある新電力幹部は、「東電PGが追うべき負担を新電力に付け替えているのも同じだ」と憤る。論点は2つある。

1つは「データが見つからないので協定へ」という入り口の話だ。東電PGの通知遅延が原因であっても、顧客と協定するのは契約者である新電力だ。契約件数が多かったり、Web中心で展開する新電力は、顧客と協定するための人員確保に難題がある。

そもそもスマートメーターには過去44日分のデータが蓄積されている。例えば、7月9日時点なら、5月27日以降のデータはまだスマートメーター内部に残っている。44日以内に検針すれば改めて確定値を得ることができるわけだ。

当初、東電PGは新電力に対して、「再検針で遅延分の確定値を補足し、通知する」と説明していた。実際、「4月分で遅れた件数は、再検針で相当数減った」(新電力幹部)という。ところが、5月になり遅延件数が増えると、「再検針は難しいので協定にしてほしい」(東電PG)と方針を転換した。

「あなたが先月使った使用電力量が何kWhなのか、データが消失してしまったので分かりません。協定でみなし使用量を決めさせてください」と消費者に説明しても、必ずしも納得してもらえるとは限らない。トラブルがつきまとううえ、業務負荷も重い。先の新電力幹部は、「東電PGが再検針するほうが、業界としての業務負荷もコストも抑えられる」と訴える。

そもそも、データの消失を理由に協定となれば、「どれだけ電気を使ったのか証明できないのだから払わない」という消費者が出てくることも容易に予想される。

東電PGは、7月1日に公表した7月以降の改善策で、再検針の実施を盛り込んでいる。新電力からの指摘を受け、東電PGは「消失扱いのデータについても再検針を検討する」と言うが、まだ具体的な動きは聞こえてこない。そうこうしている間にも、時間は経過し、スマートメーター内のデータは消えていく。

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