排ガス規制、チャンスに賭けろ 三井金属が世界生産

2016/7/8 6:30
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三井金属は四輪車用排ガス触媒の生産拠点を2018年度までに世界5カ国の5拠点に増やす。欧米に加えて中国やインドなど新興国が環境規制の強化に動いており、高性能な触媒の需要が伸びるとみている。高いシェアを持つ二輪車向けで培った触媒の貴金属少量化などの技術開発も加速して攻勢に出る。

自動車用触媒の生産を始めた三井金属の米工場(米ケンタッキー州)

自動車用触媒の生産を始めた三井金属の米工場(米ケンタッキー州)

触媒は四輪車や二輪車の排ガス中に含まれる一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)といった有害物質を効果的に浄化するためにエンジン排気管に搭載する。化学反応を促す貴金属のプラチナ(白金)やパラジウム、ロジウムなどを用いて二酸化炭素(CO2)、窒素(N2)に酸化・還元し無害化する。

三井金属はこのほどまとめた18年度を最終年度とする中期経営計画で、二輪用触媒の生産拠点を生かし、四輪用触媒の拠点を増強する方針を打ち出した。日本、米国、中国、インドネシア、インドの5カ国で四輪車向けの生産を始める。

同社が四輪用触媒に本格参入したのは15年7月でまだ日が浅い。米国工場(ケンタッキー州)で量産を始め、60万個だった年間生産能力を今年度中に150万個体制に引き上げる。主に米国で販売される新型車に納入しているという。

排気量の大きい四輪車と小さい二輪車で触媒の役割に違いはない。四輪車を取り巻くグローバルな事情が変わったことで三井金属の背中を押した。触媒事業部長を務める岡部正人執行役員は「四輪用触媒市場は今後も伸び、開拓のチャンスはある」と説明する。

今回の生産拠点の拡充は、1990年から量産を始めた二輪用触媒での実績が支えだ。三井金属は日系の二輪車メーカーの事業展開とともに世界シェアの6割を握る。

環境意識の高まりから欧米はさらに排ガス規制の強化を打ち出している。有害物質のNOxなどが少ない車の販売を自動車メーカーに義務付ける「ZEV(無公害車)規制」の研究も進み、米カリフォルニア州に続き中国が導入するとみられている。大気汚染問題に悩むインドでも同様に規制強化が進む見通しだ。

だが、ライバルもこの追い風は逃さない。独BASF、英ジョンソン・マッセイ、ユミコア(ベルギー)、トヨタ自動車グループのキャタラー(静岡県掛川市)の計4社でシェア8割強を占めるとされ、数%の三井金属は挑戦する立場だ。

三井金属がシェア獲得の武器になると考えるのは、二輪用触媒で培ってきた技術だ。同社は触媒の耐久性を向上し、貴金属の使用量を減らしてきた。パラジウムや白金、ロジウムなどの原子レベルの組み合わせを最適化。貴金属が少なくても規制が求める性能を発揮でき、触媒のコストを削減できるという。

四輪車では、欧州などではガソリン車だけでなく、ディーゼル車の割合も大きい。このため白金の代わりに銀を使った触媒も開発している。白金より安い銀を利用することで費用を2割程度削減できる。フィルターに付着したすすを低温で燃焼して取り除けるため燃費も改善するという。

生産拠点の拡大と技術開発の加速という両輪をうまく回して「自動車メーカーの改良時期や各国・地域の規制強化に合わせてシェアを上げる」(岡部執行役員)戦略だ。

(企業報道部 安原和枝)

[日経産業新聞7月8日付]

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