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錦織がウィンブルドンで手にした2つの収穫

男子テニスの錦織圭(日清食品)がウィンブルドン選手権で2年ぶりに16強に進んだ。最後は大会前に痛めた左脇腹の状態が悪化し、4回戦を途中棄権した。それでも「プレーにはすごく満足している。痛みと戦いながら力を出しきったことも自信になる」と、晴れやかに芝のコートを去った。しかし、本人の思いとは裏腹に日本のファンにとって気になる問題も出てきた。けがの回復具合だ。開幕まで1カ月を切ったリオデジャネイロ五輪に間に合うのだろうか。

芝のコートへの苦手意識消える

3回戦では「痛みと戦っていて、勝ちたいという欲が出てこないからか、無の状態だった」=共同

錦織にとって、ウィンブルドンでは2つの収穫があった。まず、芝のコートへの苦手意識が消えたことだ。

大会前には「芝のコートではハードやクレーに比べて、百パーセントしっくりくるテニスが見えてこない」と話していた。だが、大会に入るとダウン・ザ・ラインにバックハンドが決まり、フォアの緩いスピン系のボールも駆使し、スムーズにプレーできるようになっていた。3回戦を終えると「ストローク戦はだいぶ自信がついてきた」と語り、4回戦の後には「ストロークはかなりいけるし、(けががなく)サーブがいつものように打てればやれると思った。芝のコートが少し好きになったかな」と話した。

6月中旬にハレ(ドイツ)で行われたゲリー・ウェバー・オープンの1回戦で脇腹を負傷した。医師に「悪化しても大ごとにならないよ」といわれていた。それから約2週間後に試合を迎えたウィンブルドンでは「百パーセントではないけれど、百パーセントに近い状態」と話していた。ただ、問題は医学的には完治に近づいても、本人がどう感じるかだ。

これまでけがが多かったからか、錦織は痛みに敏感で、やや神経質なところがある。「痛い」「違和感がある」と思うと気になって、試合中に元気がなくなってしまうことがよくあった。それが如実に現れたのが同じハレの大会でふくらはぎを痛めて臨んだ昨年のウィンブルドン1回戦。ストレート勝ちできる内容ながら要所で焦って無駄なミスが出て、フルセットまでもつれ込んでようやく勝利。2回戦は棄権した。

今年のウィンブルドンでは2回戦に1セットを奪われたが1、3回戦はストレート勝ち、3回戦は2時間かからずに終えた。「痛みと戦っていて、勝ちたいという欲が出てこないからか、無の状態だった」と、プレーへの集中力が切れなかった。3回戦ではファーストサーブは最速190キロまで出た。しかしその翌日、突然、それまでとは比べものにならないほどの痛みに襲われた。

試合前のウオーミングアップを見れば誰の目にも普通でないのは明らかだったのに、本人は「ここまで試合になればやれていたから可能性を信じていた。棄権するつもりは全くなかった」と4回戦に突入。試合中に医師に「痛みを減らす方法はない」と通告されても、すぐには棄権しなかった。「よく考えたら(あのプレーで)勝てるわけないですよね」。錦織も苦笑してこう振り返るほど、集中していた

左脇腹痛が悪化した4回戦ではメディカルチェックを受け、第2セット途中で棄権した=共同

痛くても意外にできると実感

ウィンブルドンで得た収穫のもう一つは、けがによる痛みへの対処法だろう。自分は「痛い」と思っていても、やってみたら意外にできるものだと実感できたのは大きい。錦織クラスの選手になれば、体のことが気になっても何事もないようにプレーしていると相手が自滅してくれる可能性も少なくないのだから。

日本語での記者会見で「痛み」に言及し続けた錦織だが、英語の記者会見では棄権するまでは「(脇腹は)問題ない」「大丈夫」と言い続けていた。

痛めた左脇腹は現在、治療中だ。例年もこの時期は1カ月ほどリラックスしながら、治療や練習時間に充ててきた。ちょうどシーズン前半戦を折り返すころ、「ここでメンタル的にも休まないといけないから」だ。

次の目標として、マスターズ・シリーズのロジャーズ・カップ(トロント)を挙げた。錦織の口からは真っ先にリオ五輪のことは出てこなかった。

体調が百パーセントの状態だったら出場するだろう。しかし、リオ五輪がウィンブルドンのときと同じように「百パーセントでないけれど、百パーセントに近い状態」の場合、どうするだろうか。ウィンブルドンに出場したのは「四大大会だから。グランドスラムで頑張りたいということだけが、今大会のモチベーションだった」と話した。同じく米国を拠点にし、世界のトップクラスで活躍するプロゴルファー、松山英樹のリオ五輪出場辞退のニュースを聞き、「あんまり(五輪に)出たくなくなっちゃった」と打ち明けた錦織に、さらにモチベーションをかき立てるものが出てくるかどうか。

リオ五輪後に開催される全米オープンでは昨年、前年大会準優勝者で迎えながら1回戦負けを喫した。錦織にとってもっとも得意なハードコートで、しかも相性のいい四大大会である全米オープンより、五輪を優先させるだけのインセンティブがわいてくるだろうか。五輪ではツアーのランキングポイントはつかない。五輪出場に備え、昨年優勝したシティー・オープンは早々と欠場を表明しており、獲得した500ポイントは失効する。昨年ベスト4だったロジャーズ・カップも欠場すれば、360ポイントを失う。世界ランキング6位の錦織と下位の選手とはまだ差があるとはいえ、失うにしてはなかなか大きなポイントだ。

(原真子)

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