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国債・金は「安全資産」か

最近、リスク回避で機関投資家のマネーが安全資産とされる国債市場に流入してマイナス金利幅が拡大した、とよく語られる。

果たして、国債は安全資産なのだろうか。

たしかに満期まで持ちきれば、元本保証という安全資産の前提条件は満たされる。しかし、マイナス金利の時代には、インカム(利息収入)を得られず、逆に、元本保証の特権を得るための「手数料」を支払わねばならない。

このような異常な状況が今後20年続いたとして、機関投資家が満期まで国債を持ち続け、毎年、手数料を支払い続けるとは考えられない。

結局、国債が短期売買の投資対象となっているわけだ。今のうちに買っておけば、いずれ、日銀が、より高い価格で買ってくれるとの期待があればこその珍現象である。

そして、日銀もその期待に答えるので、実質、日銀の「買い取り保証つき債券」ということで、安全資産とされる。

しかし、この実質的な買い取り保証は永遠に続くわけではない。国の借金証文を、間接的にせよ、日銀が「躊躇(ちゅうちょ)なく」買い続ければ、いずれ、金融節度や財政規律が疑われる。

この「臨界点」に達した瞬間から、国債の発行体の信用リスクが高まり、売られ始める可能性がある。

金利は、マイナス圏からプラス圏へ急反騰するかもしれない。短期売買のつもりで国債を保有していた機関投資家は、損失を被ることになろう。

ゆえに、今、国債を安全資産と決めつけることはできない。国債を買う理由は「リスク回避」、というより、「リスク分散」という表現のほうが、しっくりくるのではないか。株の運用比率を下げ、債券を上げるようポートフォリオを組み替えれば、資産全体のリスクを抑えられる。

それでも長期的には、国債の発行体リスクがつきまとう。そこで、さらにリスクを避ける手段として発行体のない資産も保有する必要がある。

その一例が金ということになる。欧米では金が「誰の債務でもない」資産と呼ばれる。いわゆるソブリンリスクがないので、金も「安全資産」といわれる。しかし、価格変動リスクがあるので、やはり安全資産とは言い難い。

資産運用の主役は株と債券だ。金はあくまで脇役。平時に買って、有事に売ることで、危機をしのぐことが「有事の金」の本来の意味である。今回の英国の欧州連合(EU)離脱ショックのごとき経済有事になってから金を買っても遅い。

国債も金も安全資産というのは、「神話」にすぎない。ただし、リスク分散効果は認められる。

豊島逸夫(としま・いつお)
豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経ヴェリタス「逸's OK!」と日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層心理」を連載。
・公式サイト(www.toshimajibu.org)
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
・業務窓口はitsuo.toshima@toshimajibu.org

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