/

4大会連続出場の「申し子」 パラ競泳・山田拓朗(上)

9月のリオデジャネイロ・パラリンピックに、25歳ながら4大会連続で出場するアスリートがいる。障害者(パラ)競泳の山田拓朗(NTTドコモ)だ。ベテランと呼ぶのがはばかられる、端正な紅顔の風貌。2004年アテネ大会に出た時は、日本史上最年少の13歳だった。「パラリンピックの申し子」といえるスイマーは今回、悲願のメダルを狙っている。

最後はストロークのテンポ調整

パラ競泳で肢体不自由の障害を持つ選手は、その程度に応じてS1からS10までクラスが10段階に分かれており(平泳ぎは9段階)、そのクラス内で競う。生まれつき左肘から先がない山田が属するのは、障害の軽いS9クラス。主戦場は最速スプリンターを決める50メートル自由形だ。

3月にあった春季静岡水泳記録会では26秒35。自身が銀メダルをとった昨年の世界選手権5位相当に設定された派遣標準記録を突破し、リオ代表に内定した。この日は朝から調子が良かったが、50メートルは最後のタッチが流れた。「流れなければ(12年ロンドン大会決勝で自身が出した日本記録の)26秒22は更新できていたはず」と強調する。

隻腕の選手の場合、タッチという最後のひと筆の入れ方によって、作品の出来栄えが全く違ってくる。健常者の自由形では右手にせよ左手にせよ、ラストのひとかきで壁に近い方の手を伸ばせば事足りる。

だが左肘先がない山田の場合、タッチは必ず右手でなければならない。水をかきながら、最後はストロークのテンポを調整し、そのまま右手を伸ばすか、もう1ストロークかくかを瞬時に判断しないといけない。パラ競泳独特の難しさであり、面白さでもある。

山田はおよそ26ストロークで50メートルを泳ぐ。静岡では「もう1回かくには微妙な距離だったので、そのまま手を伸ばしてタッチを選んだ」。それがタイムロスにつながった。

「リオでは1ブレスで勝負する」

実はこの時、普段は2回息継ぎ(ブレス)するところを1回にしたため、距離感が合わなかった。抵抗になる息継ぎが少ないにこしたことはない。「リオでは1ブレスで勝負する」と決め、この日、試合で初めて試したのだ。

S9クラスの現在世界ランク1、2位は脳性まひの選手。その日の水温や体調にタイムは左右されやすいが、両手はあるのでタッチの工夫はいらない。そんな選手に勝つための1ブレスだ。障害の程度が同じとはいえ、その内容は様々な選手をひとくくりにして競わせるやり方が、ある意味不公平な戦いを強いる。だが山田は「仕方がない」と文句は言わない。

また、障害が軽いので新しい選手が突然のしてくる新陳代謝の激しいクラスでもあるが、「そっちの方が面白い。簡単にメダルをとれると魅力を感じない」とも言い切る。パラリンピックに育てられた「申し子」にとって、工夫を凝らし、高いレベルで競うレースこそ望むところだ。(敬称略)

〔日本経済新聞夕刊7月4日掲載〕

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

関連キーワード

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン