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曽和利光の就活相談室 内定辞退したあの会社 もう一度行ってもいいの?

リクルート、ライフネット生命などの人事責任者として20年以上、累計で2万人を超える就活生を面接してきた「プロ人事」、曽和利光さん。「学生は、根拠のない思い込みで失敗している」という曽和さんが、面接官の本音を語ります。第17回は「辞退した会社への再訪は歓迎?」です。

内々定の受諾や辞退にまつわるテーマを、引き続き掘り下げてみたいと思います。最終面接に合格しても、意思決定が遅れると内々定を得られない場合もあることは前回お伝えしました。A社とB社に最終合格して、悩んだ末にB社を辞退。ところがその間にA社は「満席」に――。極端な例ですが、こんな場合でもいったん辞退した以上、B社との縁も切れてしまう。こう感じる就活生も少なくないかもしれません。しかし実は、辞退した学生が後で「戻ってくる」ことについて、歓迎しない企業はないといってもいいと思います。

まだ席ありますか?と遠慮なく

「辞退して1時間ぐらいなら取り消せるかもしれないけど、何日もたったら無理だろう」と思いますか? いえいえ、選考過程に戻りたければ、「辞退したんですが、まだ席はあいていますか?」と、遠慮なく尋ねてよいのです。席が残ってさえいれば選考過程に復帰させてもらえる可能性は高いといえます。

採用する立場からみて、「辞退する」学生とはどんな存在か。基本的には、優秀な学生ほど辞退していくと企業側は見なします。採用戦線において自社よりも「高級ブランド」の企業に受かったから辞退するわけなので、自社が確保した内々定者の中では優秀である可能性が高いことになります。そういう学生が戻ってきてくれるならば、企業側としては万々歳です。

私自身がリクルートの採用担当をしていたころのことですが、ある学生に辞退されたことがあります。ただその学生は、リクルートを蹴って就職しようと決めたその企業の内定者懇親会に出席して、「どうも自分には合わなそうだ」と思ったようです。そこでリクルートに戻りたいといってきたので、受け入れました。

そんなふうに、いわゆる「内定ブルー」で、いったん決めた就職先に勤めてもよいのかどうか、悩むこともあるでしょう。そこで「やっぱりここはピンとこない、いったん蹴ったあの会社のほうがよさそうだ」と再び門をたたいてくれれば、「よくぞ戻ってきてくれた」という感じにすらなりますよ。

自社に就職した後に転職し、また戻ってくる人材を、積極的に受け入れる企業も増えています。新卒採用のときの辞退者に数年後に声をかけて、別の会社で武者修行をしてきたかのように見なして中途採用するという人材確保の手法も、だんだん一般化してきました。そんなわけですからなおのこと、辞退したからといってその会社と縁が切れたとは考えなくてもよいということです。例えば「第2志望の企業を辞退したけれども、残念ながら第1志望は落ちてしまった」というような学生は、積極的に第2志望の門をたたいてもよいと私は思います。

ただし、正直者に限る

「やっぱり御社がいいです」と伝えて、選考過程に復帰できたとします。その場合は、たいていは一発選考、つまり意思確認に近い面談で合否が決まると思ってよいでしょう。そこで「イチからやり直し」にならないのはなぜか。採用の選考は基本的には最終段階に近づくほど、面接官は同じ人物に集約されていくわけですね。登山でいえば、どの登山口から登ろうと、8合目から上は同じ道のりになるといったイメージです。そこで、一度は8合目の面接官に認められて頂上にまで到達した学生に対して、また登山口からやり直しをさせるのは意味がないわけです。

ただ、戻ってくる学生がどんな場合でも歓迎されるかといえば、必ずしもそうではないということも付け加えておきます。受け入れてもらえるかどうかの境目はどこにあるのか。これはやや情緒的に聞こえるかもしれませんが、いったん蹴った企業に対して、誠意を尽くしていたかどうかがポイントになります。別れ際がきれいだったかどうか、といえるかもしれません。

具体的には、他社の選考を受けているかどうかについて嘘をついていると、受け入れてもらいづらいと想像できます。例えば、第3志望の企業に内々定をもらい、「御社にいきます」と伝えていたケースを考えてみましょう。その後に第2志望に受かりそうなので第3志望を蹴り、第1志望に落ちたところで第2志望に疑問が生じて、やっぱり第3志望がよかったかなと思っても、その会社は裏切られたような気がしているはずです。そういった「就活をやめた、やめない」みたいな話で嘘をついていると、企業側は、「信頼関係をつくれない人なんじゃないか」と思ってしまいます。他社の選考過程についての情報は正直に伝えたほうがよい、と以前に助言したのには、こんな事情も背景にあります。

再チャレンジの可能性も

企業側としては、学生が内々定への返事を保留するなら、それはそれで助かるのです。「内々定を50人に出して、すでに受諾したのは10人。残り40人のうち、前年実績ではおよそ2割が受諾した」といったイメージで、歩留まりを計算できるからです。そこで嘘をつかれるぐらいなら、辞退された後で改めて門をたたいてもらったほうが好ましいわけですね。内々定を受諾しておく、いわゆる「キープ」は、企業側にとっては非常にイヤなことです。辞退だとわかれば、その空席をどう埋めるかについて素早くアクションを起こせるのに、そこをごまかされてはマイナスの印象が強くなります。いわば仮面浪人ならぬ「仮面就活」は、企業に対して迷惑だということは、知っておいてほしいですね。

「もう一度門をたたく」ことを巡って、去年から今年にかけての特殊事情にも言及しておきましょう。去年、超人気企業の2次募集という現象が、就活関連の業界で話題になりました。今年も同様のことが起こる可能性はあるとみています。採用活動が短期決戦化して、じっくり腰を据えて人材を見極めづらくなったため、上位校だとか理系だとかいうような、「誰もがほしがる人材」に、超人気企業の視線が集中しました。限られたパイの中で学生を奪い合った結果、辞退者のために空席が生じている企業もあるはずです。2次募集はひそかに実施することが多く、わかりにくいのですが、採用サイトを店じまいしていなければ、何らかの採用活動を続けているサインといえます。一度受けてダメだった企業のドアを、再度ノックできるチャンスがあるかもしれないことは、覚えておいてもよいと思います。

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