2019年8月26日(月)

白井「超ひねり」も自動採点 体操、目視限界への挑戦

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2016/7/7 6:30
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日経テクノロジーオンライン

目にもとまらぬ速さで、宙返りやひねり技を繰り出す体操競技。そんな"審判泣かせ"のスポーツ現場に、先端テクノロジーの救いの手が差し出されようとしている。2020年の東京五輪での本格的な実用化を目指している。

伸身ユルチェンコ3回半ひねり――。

"ひねり王子"の愛称で親しまれている体操競技の白井健三選手は2016年6月5日、跳馬で新技に挑戦した。リオデジャネイロ五輪の代表選考会を兼ねた「第70回 全日本体操競技種目別選手権大会」でのことである。

惜しくもひねりが足りずに挑戦は失敗に終わったが、自らの名前を冠したそれまでの「シライ/キムヒフン(伸身ユルチェンコ3回ひねり)」を超える大技への挑戦に、体操界のみならず世間の大きな注目が集まった。

こうした新技は体操競技の醍醐味の一つであり、多くの観客をひき付ける"目玉商品"である一方、競技の現場に「難題」を突きつけている。

難題とは、技の高度化により、審判にとって目視判定の難易度が高まっていることだ。例えば、白井選手が2015年12月の大会の床運動で成功させ、現在最高のH難度の新技として認定された「シライ3」は、わずか約1秒の間に、後方伸身2回宙返り3回ひねりを行う。

男子床運動で白井健三選手が決めた新技「シライ3(後方伸身2回宙返り3回ひねり)」の連続合成写真(写真=共同)

男子床運動で白井健三選手が決めた新技「シライ3(後方伸身2回宙返り3回ひねり)」の連続合成写真(写真=共同)

現状、審判は超短時間に繰り出される技の種類や難易度などを手元のスコアシートに書き留めながら手計算で採点している。しかし、こうした"アナログ"的手法は限界に近づいており、審判関係者からは「判定で意外に多くのミスが出ている」との指摘もある。

■スポーツICT市場を立ち上げる

「自動採点の実現に向け、ICT(情報通信技術)の力でこの状況を解決する」。富士通と富士通研究所は2016年5月17日、日本体操協会と、体操競技における採点支援技術の共同研究を行うと発表した。

具体的には、これまでスポーツ界で応用例がない「3Dレーザーセンサー」を使って選手の動きを捉え、取得したデータから競技の判定に必要な数値を導き出して審判の採点を支援する。富士通研究所が開発した3Dレーザーセンサーとデータ処理技術、日本体操協会が持つ技を認識するノウハウなどを融合する。

富士通が目指す世界。3Dレーザーセンサーを使った自動採点システムを実用化し、目視では限界がきている審判を支援する(図:富士通)

富士通が目指す世界。3Dレーザーセンサーを使った自動採点システムを実用化し、目視では限界がきている審判を支援する(図:富士通)

富士通は2015年2月、2020年の東京五輪・パラリンピックに協賛する「ゴールドパートナー」になった。「協賛する目的は、スポーツ向けICTという新市場を立ち上げることと、東京五輪でレガシー(遺産)を残すこと。今回の技術を世界初の試みとして、東京五輪で実用化したい」(東京オリンピック・パラリンピック推進本部 企画・推進統括部統括部長の藤原英則氏)としている。

実は、この技術の恩恵を受けるのは審判だけではない。例えば、選手が新技を繰り出した際に採点に長い時間がかかると、選手の体が冷えたり、集中が切れてしまうことがある。採点時間の短縮は、選手にも朗報だ。

さらに、観戦者にとって競技の魅力を高めることにもつながる。現在の体操競技は技の高度化により、観戦者の多くにとって「何が起きているのか分からない」こともある。選手が演技している技の種類やその内容などをリアルタイムにテレビ画面に表示できれば、番組の面白さが増し、ビジネスの活性化にもつながる。

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