2019年8月20日(火)

一枚上手の相撲論(浅香山博之)

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通算1000勝目前の白鵬 よき記憶に残る力士も目指せ

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2016/7/8 6:30
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白鵬の取り口が荒っぽくなったのは「力が落ちたから」「余裕がないことの表れだ」と指摘する人もいるが、私にはとてもそうは見えない。逆に、相撲を楽しんでいろいろなことを試しているだけのように思う。

昨年九州場所と今年初場所の栃煌山戦で遊んでいるような相撲を立て続けに取ったのをみて、そう感じた。九州場所は猫だましで物議を醸し、翌初場所は栃煌山の顔の前に手を突き出して目隠しした後にひらりとかわしたら、相手が勝手に落ちた。あれで私は「白鵬は相撲を楽しんでいるだけだな」と確信した。

現役時代、私も稽古場で若い衆に同じことをした経験があるのでよくわかる。半分悪ふざけだったが、そのときは「触れてもいないのになんで落ちるんだ。相手をよくみていないからだ」と若い衆に教えたかった。

3月の春場所で白鵬(左)に寄り切られた後、土俵下へ飛ばされる嘉風。なぜダメ押しを繰り返すのか理解しがたい=共同

3月の春場所で白鵬(左)に寄り切られた後、土俵下へ飛ばされる嘉風。なぜダメ押しを繰り返すのか理解しがたい=共同

相撲では、何をされても怖がらずに相手をよく見続けなければならない。張り手を食らったり、手を顔の前に突き出されたりしただけで目をつむってしまうようでは話にならない。目をつむると相手がどこにいるかわからなくなるので、簡単に落ちてしまう。

ああいう遊び感覚の相撲を、関取衆は稽古場ではたまに取っている。でも、普通は若い衆を相手にいたずら心でやるくらいだ。一気に持っていかれるリスクがあるから、本場所では絶対にしない。それを、三役クラスの実力者相手に本場所でできるのは白鵬だけだ。力が衰えたどころか、余裕たっぷりなのだろう。

なぜダメ押し繰り返すのか

相撲を楽しんでやりたい放題の白鵬に、誰もついていけていないことが歯がゆい。張られただけで目をつむってあごが上がり、その状態でかち上げられている。立ち合いが遅いから、まともに食ってしまうのだろう。もっと鋭く突っ込まないといけない。張り手の一発で簡単に顔がぶれて、あごが上がってしまうのもいただけない。あの攻めへの対策は、最初の張り手に動じないようにするほかはない。

余裕があるはずなのに、なぜ白鵬がダメ押しを繰り返すのかが理解しがたい。相手の足が俵を割っているのに気がつかないというのは、プロの力士ならあり得ない。顔を張られたときなどにムキになり、理性を保てずにやってしまうのか。土俵の内外に色々な不満やいらだちを抱えているのか。私にはわからないが、どんな理由があろうともダメ押しは土俵下のお客さんに危険が及ぶので慎んでほしい。

白鵬は昔の名力士の映像を見て、相撲の歴史を熱心に勉強していることで知られる。だから、誰よりも相撲道を理解しているのだと思っていた。双葉山を敬愛し、偉大な先人のように何事にも動じない木鶏(もっけい)の境地を目指していたはずだった。横綱に昇進したばかりのころはそういう高みに向かっていくのかもしれないと予感させたが、それは違っていたのだろうか。

どんなことを相手にされても自分を見失わずにしっかり勝負をつけることができれば、批判されることはない。あれだけ強いのに、自分自身で評判を悪くしてしまっているのは本当にもったいないと思う。

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