2019年4月21日(日)

一枚上手の相撲論(浅香山博之)

フォローする

通算1000勝目前の白鵬 よき記憶に残る力士も目指せ

(2/3ページ)
2016/7/8 6:30
保存
共有
印刷
その他

白鵬の取り口が荒っぽくなったのは「力が落ちたから」「余裕がないことの表れだ」と指摘する人もいるが、私にはとてもそうは見えない。逆に、相撲を楽しんでいろいろなことを試しているだけのように思う。

昨年九州場所と今年初場所の栃煌山戦で遊んでいるような相撲を立て続けに取ったのをみて、そう感じた。九州場所は猫だましで物議を醸し、翌初場所は栃煌山の顔の前に手を突き出して目隠しした後にひらりとかわしたら、相手が勝手に落ちた。あれで私は「白鵬は相撲を楽しんでいるだけだな」と確信した。

現役時代、私も稽古場で若い衆に同じことをした経験があるのでよくわかる。半分悪ふざけだったが、そのときは「触れてもいないのになんで落ちるんだ。相手をよくみていないからだ」と若い衆に教えたかった。

3月の春場所で白鵬(左)に寄り切られた後、土俵下へ飛ばされる嘉風。なぜダメ押しを繰り返すのか理解しがたい=共同

3月の春場所で白鵬(左)に寄り切られた後、土俵下へ飛ばされる嘉風。なぜダメ押しを繰り返すのか理解しがたい=共同

相撲では、何をされても怖がらずに相手をよく見続けなければならない。張り手を食らったり、手を顔の前に突き出されたりしただけで目をつむってしまうようでは話にならない。目をつむると相手がどこにいるかわからなくなるので、簡単に落ちてしまう。

ああいう遊び感覚の相撲を、関取衆は稽古場ではたまに取っている。でも、普通は若い衆を相手にいたずら心でやるくらいだ。一気に持っていかれるリスクがあるから、本場所では絶対にしない。それを、三役クラスの実力者相手に本場所でできるのは白鵬だけだ。力が衰えたどころか、余裕たっぷりなのだろう。

なぜダメ押し繰り返すのか

相撲を楽しんでやりたい放題の白鵬に、誰もついていけていないことが歯がゆい。張られただけで目をつむってあごが上がり、その状態でかち上げられている。立ち合いが遅いから、まともに食ってしまうのだろう。もっと鋭く突っ込まないといけない。張り手の一発で簡単に顔がぶれて、あごが上がってしまうのもいただけない。あの攻めへの対策は、最初の張り手に動じないようにするほかはない。

余裕があるはずなのに、なぜ白鵬がダメ押しを繰り返すのかが理解しがたい。相手の足が俵を割っているのに気がつかないというのは、プロの力士ならあり得ない。顔を張られたときなどにムキになり、理性を保てずにやってしまうのか。土俵の内外に色々な不満やいらだちを抱えているのか。私にはわからないが、どんな理由があろうともダメ押しは土俵下のお客さんに危険が及ぶので慎んでほしい。

白鵬は昔の名力士の映像を見て、相撲の歴史を熱心に勉強していることで知られる。だから、誰よりも相撲道を理解しているのだと思っていた。双葉山を敬愛し、偉大な先人のように何事にも動じない木鶏(もっけい)の境地を目指していたはずだった。横綱に昇進したばかりのころはそういう高みに向かっていくのかもしれないと予感させたが、それは違っていたのだろうか。

どんなことを相手にされても自分を見失わずにしっかり勝負をつけることができれば、批判されることはない。あれだけ強いのに、自分自身で評判を悪くしてしまっているのは本当にもったいないと思う。

  • 前へ
  • 1
  • 2
  • 3
  • 次へ

春割実施中!無料期間中の解約OK!
日経電子版が5月末まで無料!

保存
共有
印刷
その他

コラム「一枚上手の相撲論」

電子版トップスポーツトップ

一枚上手の相撲論(浅香山博之) 一覧

フォローする
白鵬(中)は間もなく34歳、自分の体と相談しながらうまくケアをしていく必要がある=共同共同

 大相撲春場所は10日、エディオンアリーナ大阪で初日を迎える。1月の初場所で気になったのが途中休場した白鵬だ。昨年は6場所中4場所で休場、当たり前のように毎場所賜杯を抱いていた姿は過去のものになりつつ …続き (3/8)

九州場所初日、稀勢の里(左)を攻める貴景勝。優勝は自信になったはずだ=共同共同

 大相撲初場所が13日、両国国技館で初日を迎える。2018年の土俵は30代の3横綱の休場が相次ぎ、初優勝を果たした力士が3人に上った。「世代交代」の声も出ているようだが、19年期待の若手について語りた …続き (1/11)

立ち合いが2度不成立となり、3度目は高安(手前)が一方的に白鵬に押し倒された=共同共同

 大相撲九州場所は11日、福岡国際センターで初日を迎える。9月の秋場所は史上初の幕内1000勝と14度目の全勝優勝を飾った横綱白鵬が復活を印象づけたが、気になったのは終盤戦の立ち合いの乱れ。「駆け引き …続き (2018/11/9)

ハイライト・スポーツ

[PR]