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戦いの舞台整ったジェームズ NBA決勝最終戦

スポーツライター 杉浦大介

「選ばれし男」が人生最大の一戦へ――。クリーブランド・キャバリアーズ(以下キャブズ)と2連覇を狙うゴールデンステート・ウォリアーズの対戦となった米プロバスケットボールの王座決定戦、NBA決勝は第6戦を終えて3勝3敗。優勝の行方は19日(日本時間20日)の最終戦に委ねられた。今シリーズで超人的活躍を続けるキャブズのスーパースター、レブロン・ジェームズは故郷のチームを史上初の頂点に導けるのか。

「勝負の行方を左右する第3クオーターに、(ジェームズから)『交代するつもりはない』といわれた。もともと私にも彼を休ませる気はなかった。誰に何をいわれようと、彼に託すつもりだったよ」

16日に行われた第6戦を115-101で制した後、キャブズのティロン・ルー・ヘッドコーチは勝負どころでのジェームズとのやりとりをそう振り返った。

昨季王者ウォリアーズに王手をかけられて迎えた土俵際の一戦。最大24点をリードしたものの、第3クオーター終了時には9点差まで迫られ、エースを休ませる余裕はキャブズになかった。そんな厳しい状況下で、チームを背負って立ったジェームズのプレーは周囲が感嘆するほどに見事だった。

最終クオーター開始から10連続得点

最終クオーター開始から一人で10連続得点を挙げるなど、最後の12分間で17得点、4アシスト。試合全体でも41得点、11アシスト、8リバウンド、4スティール、3ブロックというオールラウンドゲームを披露し、追いすがるウォリアーズをついに振り切った。

「(ジェームズのプレーは)特別だった。信じられないくらいだった。彼のためにスペースをつくらなければならないから、見とれてしまわないよう気をつけたよ」

魅惑的なスーパープレーをみせられて、試合後はチームメートのカイリー・アービングもため息をついたほど。第5戦に41得点、16リバウンド、7アシストを記録したのに続き、これでジェームズはファイナルの2戦以上連続で40得点超えを果たした史上5人目のプレーヤーにもなった。

シーズン中に73勝9敗という圧倒的な強さを誇示し、2年連続最優秀選手(MVP)を獲得したステフィン・カリーを擁するウォリアーズが絶対的に有利とみられたこのシリーズ。第4戦を終えてウォリアーズが3勝1敗とリードした時点では、勝負あったかと思われた。ところが、キャブズは大黒柱の縦横無尽の活躍で息を吹き返し、こうして決着は天下分け目の最終戦に委ねられることになったのである。

「The Chosen One(選ばれし男)」は米オハイオ州での高校時代からそう喧伝(けんでん)され、2003年のドラフト全体1位でキャブズに入団した。プロでもMVP4度、オールスター選出12度と輝かしい実績を積み上げ、現役ナンバーワンプレーヤーと目されるようになった。10年にヒート移籍後は2度の優勝も果たし、そのキャリアは順風満帆にみえた。

そんなジェームズがキャブズへ復帰したのは14年夏。全盛期に再び移籍を決断した背景には忘れられない故郷への想いがあった。

「地元チームに優勝トロフィー」悲願

「クリーブランドを離れたときの僕には使命があった。それはチャンピオンになること。そして僕はそれを2度達成できた。マイアミはその味を知っているが、僕の故郷は長く味わえていない。目標は可能な限り多くの優勝を経験することだが、それをオハイオ州にもたらすことが今の僕には何より大切なんだ」

復帰時に発表した手記にそう記した通り、1964年にスーパーボウルを制した米プロフットボール、NFLのブラウンズを最後に、クリーブランドのメジャースポーツチームは栄冠に見放されている。キャブズに至っては70年の創立後まだ優勝経験はない。

長く低迷を繰り返してきた地元に優勝トロフィーをもたらすこと――。それこそが31歳になったジェームズの使命であり、その輝かしいキャリアにおける最大の目標といってもいいのだろう。

ジェームズ復帰1年目の昨季もキャブズはNBA決勝に進んだものの、ウォリアーズに2勝4敗で敗れ去った。しかし今年はアービング、ケビン・ラブといった主力も好調さを保ち、ウォリアーズとの再戦になった今シリーズでも第3戦以降の4試合で3勝と上り調子。第6戦でついに「逆王手」をかけ、悲願の優勝に向けて機は熟したといえるのだろうか。

もっとも第5、6戦を制した後でも依然、キャブズが有利になったとみられているわけではない。過去にNBA決勝が3勝1敗になったケースは32度あるが、リードされたチームがそこから3連勝したことはない。

また、第7戦では地元で戦うチームが通算15勝3敗と圧倒的に強く、特に過去6度の第7戦はすべて地元チームが勝利している。敵地で戦うチームが第7戦を勝った例を探すと、78年のブレッツ(現ウィザーズ)までさかのぼらなければならない。1勝3敗という厳しい状況から追い上げ、最後に敵地で勝つのはそれだけ難しいということ。ウォリアーズの本拠地で行われる第7戦で、キャブズはいわば「歴史との戦い」に挑むといっても大げさではないのだろう。

ただ、そんな厳しいデータがある一方で、シリーズが進むにつれて、キャブズにとって有利にみえる要素が少しずつ増えている。

シーズン中は73勝9敗と驚異の強さを誇ったウォリアーズだったが、対戦相手のレベルが上がるプレーオフでは通算15勝8敗とペースダウン。しかも今シリーズ途中で先発センターのアンドリュー・ボーガットが膝を痛めて離脱したのに加え、主にジェームズと競り合うアンドレ・イグダーラも腰痛を抱えている。

一方、キャブズは第2スコアラーのアービング、リバウンダーのトリスタン・トンプソンが絶好調。何よりイグダーラが本調子ではない今、ウォリアーズにはジェームズを真っ向から食い止められる選手は存在しない。だとすれば――。

地元とNBAの歴史、書き換えられるか

「(場所は)問題じゃない。"Game7(第7戦)"という2語は世界最高の言葉だ。どこでプレーすることになっても構わないよ」

最後の決戦を前に、ジェームズのそんな頼もしい言葉を改めて心強く感じているファンは多いはずだ。

19日はキャブズとジェームズにとっての運命の日である。2連覇を目指すウォリアーズを敵地での第7戦で倒せば、文字通りクリーブランドとNBAの歴史は書き換えられる。ジェームズが再び大爆発して勝利に貢献すればその名声、評価はもう揺るぎないものになる。完璧な「フェアリーテール(おとぎ話)」が完成し、現役選手でありながら、レブロン・ジェームズの名は伝説として語り継がれていくことになるのだろう。

逆に無残に敗れることがあれば、ジェームズの個人的なNBA決勝通算成績は2勝5敗になる。もちろんエース一人の責任ではないとはいえ、その輝かしいキャリアに曇りが生じてしまうことになる。

近年のNBAでは間違いなく最高の注目を集める一戦は、全米でもスポーツの枠を超え話題を呼び、爆発的なテレビ視聴率を獲得することも確実。高まる期待、スリリングな予感とともに、「選ばれし男」にふさわしい戦いの舞台は整った。

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