敵はトヨタからテスラ・ウーバーへ VW戦略転換

2016/6/20 6:30
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ディーゼル車の排ガス不正問題で揺れている独フォルクスワーゲン(VW)が2025年までの経営戦略をまとめた。マティアス・ミュラー社長は「規模自体は追わない。それは成功した場合の結果にすぎない」と明言し、トヨタ自動車超えを意識してきた拡大路線からの転換を宣言した。新たな「仮想敵」は米国のテスラ・モーターズとウーバーテクノロジーズだ。

VWのEVコンセプト車「バディ」と写真に収まるミュラー社長(左)とディース取締役(2月末、ジュネーブ)

VWのEVコンセプト車「バディ」と写真に収まるミュラー社長(左)とディース取締役(2月末、ジュネーブ)

「これはVWの歴史上最も大きな変化だ」。ミュラー社長は新戦略の記者会見の冒頭でこんな言葉を述べた。

「25%目標に向け全力を挙げ、数十億ユーロを投資する」「自動運転技術と人工知能(AI)がカギだ」。昨秋の排ガス不正の発覚から投資を大幅に絞ってきた会社とは思えない景気のいい文句も飛び出した。

新戦略では25年までに電気自動車(EV)を30車種以上発売し、年間EV販売台数を年300万台、グループ販売の25%まで高める。極めて野心的な目標を持ち出した。

注目はミュラー社長の「EVには電池が極めて重要な役割を果たす」との説明だ。傘下のアウディやポルシェが1回の充電で500キロメートル走るEVを投入する計画を公表済み。VWも600キロEVのコンセプト車「バディ」を今年から公開した。

この先、30車種もそろえるには電池の安定調達先が必要だ。VWは25年時点で年1億5千万キロワット時の電池の生産能力が必要になるといい、ミュラー氏は電池工場の可能性にも含みを持たせた。

これはEV専業テスラとの対決だ。テスラはパナソニックと協力し自前の工場を持つ。VWも自前工場で一気にコストを下げる狙いが透ける。

300万台ものEV需要喚起の面では、VWが強い中国頼みが鮮明になりそうだ。中国は二酸化炭素(CO2)排出削減以上に大気汚染が深刻。「これまでもVWには好意的だった中国政府の施策と軌を一にする形だ」(アナリスト)。

もう一つはサービスもするメーカーへの生まれ変わりだ。ウーバーへの対抗としてイスラエルのベンチャー企業(VB)、ゲットに3億ドル(約310億円)を投資しており、戦略提携を生かして欧州など各地に広げる。

ミュラー社長は自動運転タクシーやオンデマンド配送トラックのサービスとしての提供も検討。25年にはモビリティーサービスの売上高で数十億ユーロをめざす。

カギを握るのは提携戦略だ。VWのような「巨象」がアプリ開発など細かいトレンドに追い付くのは大変。新戦略を「トゥギャザー ストラテジー2025」としたのも、外部を巻き込む考えを示している。事業モデルが全く異なるモビリティーサービスでどう利益を共有するかもポイント。サービス事業は初期投資が少なく、資産を軽くした状態で参入できる。

一方、25年には売上高営業利益率(特殊要因除く)は7~8%と、15年の6%から改善するという。課題はEVがいつから「もうかる」車になるのかという点だ。大規模生産でコストを下げてもEVは他社の参入も相次ぐ。消費者の支持を得られるかは未知数だ。さらにEVに一気にかじを切れば、VWがこれまでコスト削減のカギとしていた小型車の車台・主要部品の共通化戦略「MQB」の投資効果が限られる恐れもある。

(フランクフルト=加藤貴行)

[日経産業新聞6月20日付]

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