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フェアウエーへのいざない 日本ゴルフ界 もっと元気でハッピーであるために

ゴルフライター 嶋崎平人

ゴルフシーズン真っ盛り。四大大会のひとつ、全米オープン選手権(米ペンシルベニア州オークモントCC)は、31歳のダスティン・ジョンソン(米国)が悲願のメジャー初優勝を果たすなど大いに盛り上がった。一方、日本の男子ツアーは6月第1週の日本ゴルフツアー選手権森ビルカップ後、2週間のオープンウイークとさみしい限りだ。

日本男子ツアー、魅力が減った?

年間の試合数を比較すると米ツアー(2015~16年シーズン、ポイントランキング加算対象)は47試合で、単純計算した賞金総額は3億3271万ドル(約343億円)にのぼる。これに対し日本ツアーは国内開催が24試合、海外開催が2試合の計26試合で、賞金は34億9000万円。米ツアーの約10分の1となっている。

ダンロップスポーツの試算によれば、ゴルフ用品(クラブとボール)の市場規模日本は約1188億円で、米国の約半分だ。ちなみに日本のバブル景気がピークに達していた1990年には試合数は44試合(賞金総額は約33億円)もあった。日米の格差の大きさが嫌でも目に付いてしまう。

日本の試合数が最も多かった83年(46試合)に比べてほぼ半減してしまった理由は、すでに多くのことが語られている。ただ、突き詰めて言えば、お金を出すスポンサー・主催者側にとって、日本の男子ツアーは「魅力がなくなった」からだ。要は「費用対効果」が悪くなったのだ。

米ツアーは96年にプロに転向したタイガー・ウッズ(米国)の登場以来、彼の華々しい活躍もあって賞金総額はうなぎ登り。多くのスポンサーにとって、お金の出しがいのあるコンテンツに成長した。米ツアーはスポンサーへのホスピタリティーや、高い情報発信力など魅力が満載だ。2007年からは米ツアーの成績をポイントランキング化した「フェデックスカップ」もスタート。優勝者には日本円で約10億円もの賞金が出される。

要因の一つは「グローバル化の遅れ」

スポンサーサイドから見て、日本の男子ツアーはなぜ費用対効果が薄く感じられるのか……。要因はいくつもあると思う。

端的にいえば、「グローバル化への遅れ」とそれに伴う「企業イメージアップへのつながりにくさ」――の2点ではないかと思う。

まずは、ツアー自体のグローバル化の遅れだ。ゴルフなどスポーツイベントのスポンサーとなる企業は、ほとんどが世界的に事業を展開している。

企業や商品のブランド力をあげるためには、日本国内だけでなく世界に情報発信したいのが本音だ。その視点からみると、日本の男子ツアーは物足りない。

例えばテレビ放映は基本的に国内だけ。一部韓国などで放送されてはいるが、放映される国は極めて限られている。これが米ツアーだと試合にもよるがマスターズ・トーナメントになると世界140か国で放送され、そのほかの大会でも世界100か国以上で放送されている。

もちろん、米ツアーには英語という強みもある。インターネットでもこのグローバルな言語で発信されるため、言葉の壁なく世界中から注目を集めることができる。この面での日本ツアーの不利はいかんともしがたい。

選手の「強さ」の差はケタ違いだ。世界ランキング(26日付)で日本選手が100位以内に入っているのはわずか3人。松山英樹は現在世界ランキング16位で、その活躍の舞台は米ツアー。日本のファンから見ても米ツアーの魅力が高く感じられて当然だろう。米ツアーが人気、実力とも世界最高峰とされるのは、実力者がひしめいて、その中でハラハラ、ドキドキの試合を展開しているからだ。

寄付など社会貢献を米国に学べ

他の競技、たとえば野球やサッカー、テニス、水泳などでも、注目を浴びるのは世界で活躍している選手だ。メジャーリーグのダルビッシュ有、イチロー、田中将大、欧州サッカーの本田圭佑、長友佑都、テニスの錦織圭、フィギュアスケートの羽生結弦、体操の内村航平……。五輪を含めて、もはや世界での活躍がなければ、そのスポーツは注目を浴びないといっても過言ではない。注目を浴びないから、スポンサーもつきにくい、という循環になってしまうのだ。

重大なのは、企業イメージアップにつながらない、とスポンサー側に思われているところかもしれない。米ツアーが放映するツアーのCMでも「ファンを大切にする」「多くの寄付をして社会貢献をしている」ことをアピールしている。フィル・ミケルソン(米国)、ジェーソン・デー(オーストラリア)、ジョーダン・スピース(米国)、ロリー・マキロイ(英国)ら選手自身が笑顔でファンに接し、サインも気軽にかつ極めて積極的に応じている。

見習うべきはツアー・選手が寄付をして社会貢献を進めている点かもしれない。15年の米ツアーの寄付総額は1億6000万ドルにのぼるとされる。このような活動を積極的・継続的に行うことで、米ツアー全体が社会から尊敬されている。自然とスポンサーに付く企業のブランド価値が高まり、商品名も浸透する。当然、企業のイメージはアップする。

ファンを大切してこそのツアー

さて、日本男子ツアーはどうだろう。ファンへの対応は改善されたといえ、ファンを「大切にする」という見方が根付いているとは言い切れないのが実情だろう。寄付や社会貢献には個々の選手はそこそこ積極的に取り組むようになってきている。しかし、日本ツアー全体としての取り組みはどうなのか、となると、その認知度は「まだまだ」と言わざるを得ない。昨年の男子ツアーの寄付金額の総額もウェブ上で明示されていない。米ツアーのように、専用のページを設けて情報発信すべきだろう。

残念なのは、ゴルフというスポーツの「健全さ」が日本社会に浸透していないことだろうか。これは国家公務員が利害関係者とゴルフをプレーすることを禁じた「国家公務員倫理規程」が存在していることに象徴されている。これでは、スポンサー企業の業績が悪くなった場合、ゴルフの大会をサポートし続けることが経営上「マイナス」ととらえられてしまう。現実にスポンサーから撤退を余儀なくされるケースがあったとも聞く。

事は、男子ツアーに限った問題ではない。リオデジャネイロ五輪の正式種目となったゴルフを、そのように扱っているこの国のあり方そのものが、「これでいいのか?」と問われているように思うのだ。

年齢、男女を問わず楽しめるゴルフが魅力的なスポーツであることは、言うまでもない。プレーヤー自らが審判となり、選手個々の自立心を養う競技でもある。そのゴルフを国内で盛り上げるために、何ができるのか。リオ五輪まであと1カ月あまり。今こそ、選手やツアー関係者が胸にじっと手を当て、真剣に考える好機だと思うのだ。

 嶋崎平人(しまさき・ひらと) 1951年石川県生まれ。76年にブリヂストン入社。その後、ブリヂストンスポーツに移り、クラブやボールの企画開発、広告・宣伝やプロのトーナメントの運営などを担当。日本ゴルフ協会などゴルフ関連団体で構成する「ゴルフ市場活性化委員会」のメンバー。日本ゴルフジャーナリスト協会会員。

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