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自宅の耐震性が不安 まずは診断で現状を把握

不動産コンサルタント 長嶋修

熊本県益城町では新耐震基準で建てられたとみられる家屋の倒壊も相次いだ

熊本地震以降、住宅購入時に建物の「耐震性」を強く意識する購入者が増加したことを実感している不動産・建設業界人は多い。また、すでに住宅を所有している方は、大きな地震が来た際にどのような可能性があるかについて漠然とした不安を抱えている。

この不安を解消するにはまず、耐震診断を行い、その結果、必要に応じて十分な耐震改修を行うに限る。その際、多くの自治体が用意している耐震診断や改修の助成金を利用するとよいだろう。

基本的な知識として、1981年6月より前に建築確認をした旧耐震基準の建物より、81年6月以降の現行基準の新耐震基準の建物のほうがより、安心であること。また、中古一戸建ての場合は、地盤調査と改良が事実上義務付けられたり、木材をつなぐ金物の配置などが規定されたりした2000年以降かどうかがポイントであるということは広く認知されつつある。

しかし、建物はあくまで人間による手づくりであるし、また保有時の点検やメンテナンス、必要に応じた修繕の有無などで実質的な耐震性に差が出ることも多い。例えば木部を接続している金具が緩んでいたり、雨漏りや結露を原因として主要構造部に腐食などがあれば、想定通りの耐震性を発揮できないであろうことは誰にでも想像できるだろう。

神奈川県Y市に建つ築19年の中古住宅についてホームインスペクション(住宅診断)と耐震診断を行った。まず、外壁には全体的にひび割れ(クラック)が発生している。その原因は「経年的劣化によるもの」「地震や風の影響」などが考えられるが、このケースでは後者であると推測できる。

地震などの影響で発生したと推定できるひび割れ
建物のゆがみは地盤に起因するものと思われる
木部に取り付けられた金具

目視観察によって確認できた範囲では、建物が不等沈下している傾向が見受けられた。1階、2階ともに、床が東側に向かって最大15ミリ程度、傾斜している。これは地盤の沈下によるものとみられるが、築年数を考慮すると現象そのものは進行しているわけではなく、終息しているものと考えられる。

屋根裏の目視観察が可能な範囲では、著しい異常は見受けられなかった。建築当時の一般的な仕様で金物が取り付けられているようだ。ただ、構造材の経年変化により金物の緩みが若干見受けられた。

ホームインスペクションは、あくまで非破壊(建物を壊さない)の範囲で目視で行うため、建物の全てをくまなく見ることはできない。よって見える部分から可能性を推測、推定することになる。

耐震診断の結果、1997年当時の耐震性能はほぼ満たしているものの、2000年以降の基準にはやや劣るだろうといった推定が得られたため、耐震補強を行うこととなった。壁や外壁などのリフォームと同時に行うとリーズナブルだ。

ただ、建築基準法でいう「耐震基準」とはあくまで「地震で倒れないか」「人命は守られるか」という基準だ。つまり大地震等で建物が損傷することは許容されており、また複数回の地震に耐えることは想定していない。

しかし、被災地での実際的なニーズ、本当のニーズは、「地震による建物の影響」を具体的に知りたい、そして「影響があればどう対処すればよいか知りたい」というものが多い。建物は建っていても、数度の大きな地震を受けたことで耐震性が弱くなっているのではないかといった懸念だ。

学校や病院などは、住宅の耐震基準に対して1.25倍、警察や消防などの防災拠点は1.5倍の耐震強度で建てることが義務付けられている。

住宅の性能を10の項目にわたって評価する「住宅性能表示制度」を利用して建設された住宅の中には、1.25~1.5倍の耐震基準で建設されているものも少なくない。住宅の耐震強度については遠くないうちに見直しが入り、さらに高い基準値が求められるようになるだろう。

長嶋修(ながしま・おさむ)1999年、業界初の個人向け不動産コンサルティング会社「さくら事務所(http://sakurajimusyo.com/)」を設立、現会長。「第三者性を堅持した個人向け不動産コンサルタント」の第一人者。国土交通省・経済産業省などの委員を歴任し、2008年4月、ホームインスペクション(住宅診断)の普及・公認資格制度を整えるため、NPO法人日本ホームインスペクターズ協会を設立し、初代理事長に就任。『「空き家」が蝕む日本』(ポプラ新書)など、著書多数。

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