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曽和利光の就活相談室 女子の方が優秀なのに 就活「性別フィルター」のナゾ

リクルート、ライフネット生命などの人事責任者として20年以上、累計で2万人を超える就活生を面接してきた「プロ人事」、曽和利光さん。「学生は、根拠のない思い込みで失敗している」という曽和さんが、面接官の本音を語ります。第15回は「女子の方が優秀なのに 性別フィルターのナゾ」です。

曽和利光(そわ・としみつ) 1971年生まれ。 京都大学教育学部卒。リクルート人事部ゼネラルマネージャー、ライフネット生命総務部長などを経て2011年、主に新卒採用を対象にしたコンサルタント事業の人材研究所を設立。著書に『就活「後ろ倒し」の衝撃』(東洋経済新報社)、「『できる人事』と『ダメ人事』の習慣」(明日香出版社)などがある。

企業が大学名に基づいて採否を決めるような「学歴フィルター」は、もはやほとんど存在しないとすでに指摘しました。その他に、女子より男子を優先して採用するような「性別フィルター」とも呼べる壁も、特に女子の学生は感じているかもしれません。しかし、そんな「男子優先」の採用という考え方は、全体的にみて実情とは異なると思います。

採用戦線では女子が「優秀」

「そうはいっても、周りでリクルーターから連絡を受けていたのは男子ばっかりだ」。そんな女子学生の声も聞こえてきそうです。特にリクルーターによる面談のような採用の初期段階では、そのように男子優先にみえる部分はあります。この「みえる」という部分が実は重要です。採用活動の全体を通してみれば、「男子ばかり採って女子は蚊帳の外」という図式が当てはまるとは決していえないからです。

誤解のないように付言しますと、業界や職種によって、男子をどこまで多く採りたがるかに温度差はあります。端的な例としては、発展途上国でのプラント開発だとか、不動産業界で家賃の回収にあたるだとかいったような、危険なので女子に任せにくい職種を採用するケースが挙げられます。体力的な問題もあるかもしれません。また、今の日本の社会では、結婚や出産といった人生の節目に退職する可能性は、女性のほうがやはり高くなっています。そのことの是非については、この連載の趣旨を外れてしまうので深く追究しませんが、ともかくそうなってしまっている。特に「うちの社員は一人前になるまで10年かかる」といっているような企業では、どうしても男性を多めに確保しておかざるを得ません。

それでも全体としてみれば、男女半々で採りたいというのが、ほとんどの企業の本音です。それではなぜ、男子優先のように「みえる」のか。元をたどれば、女子学生のほうが選考過程で優秀な評価を得やすいところに根本的な原因があります。真面目なのか、筆記試験や面接への準備が周到なのか……。理由はさまざま考えられますが、ともかく採用の現場では女子への評価が圧倒的に高いのは事実です。企業の人事担当者に聞くと、ほぼ全員が「優秀さだけで選別するとみんな女子になってしまう」と指摘します。「男子諸君にはもっと頑張ってほしい」なんて声もありますよ。

希少な「優秀男子」をまず争奪

さて、女子のほうが評価が高いことと、男子優先のようにみえる採用がどうつながるのか。企業側は男女ともに優秀な学生を、できれば半々ぐらいの比率で採りたいわけです。そこで、女子のほうが優秀な学生が多く、男子には少ないとなったら、どうするか。男子に対して重点的にアプローチせざるを得ませんよね。単純に需給関係の問題で、男子の優秀層が希少なので、まずは男子を奪い合うというわけです。特にリクルーター経由など、採用の初期段階ではその傾向が顕著に表れます。大手企業が優秀な男子を先に囲い込んでしまえば、1日以降に始まったオープンエントリーの採用市場では「優秀な女子」が多く残り、余計に男子優先のようにみえることになります。

 希少種を先取りする――。やや横道にそれますが、体育会系の学生へのニーズという面でも、似たような傾向はあります。体育会に所属する学生の数は以前と比べてぐっと低下しています。体力も根性もあって組織の一員としてルーチンワークをきっちりこなせる体育会系の学生を欲しい企業は、優先して声を掛けなければ奪い合いに負けてしまうことになります。早期に採用を決める企業は3年生の夏ごろからアプローチします。3年生はそろそろこの夏のインターンシップへの参加を検討していると思いますが、インターンシップの現場をみると往々にして男子ばかりだというのも、同様の理屈です。

「後で会える学生は先に会うな」が鉄則

そんな採用戦線の実情を物語る言葉があります。「後でも会える学生には先に会うな」。これは企業の採用担当者にとっては鉄則です。採用活動に割ける人的資源も限られていますので、まずは優先してアプローチするべき学生を選んで、選考過程への参加を呼び掛けていくというわけです。男女の話に戻れば、女子は男子より後に選考したとしても、十分に採用基準を満たした学生に会えるんですね。

単純にそういう理由から、男女を同じ比率で採ろうとしている企業でも、まずは男子学生の採用について力を入れざるを得ない。そこで男子へのアプローチが先になり、結果として男子優先にみえているだけだということです。「女性差別だ」というように感じている女子学生がいるとしたら、それは差別ではない、優秀な女子は6月1日以降の通常の選考過程でしっかり採ろうと企業側は考えているのだ、とお伝えしたいと思います。

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