2019年7月16日(火)

耐震補強済みでも被害 熊本地震、5つの要点
熊本大地震の教訓(4)

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2016/7/6 6:30
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【3:鉄筋コンクリート造の被害】 耐震補強済みで躯体にひび割れ

熊本市や益城町など熊本県内の7市町で、被害があった71棟の鉄筋コンクリート(RC)造建物を外観調査した。その結果、倒壊が10棟、大破が12棟見られた。総じて40~50年前に建てられた古い建物に被害が大きかった。

庁舎、病院、個人住宅、事務所ビルなど様々な建物で、層崩壊や柱のせん断破壊、エキスパンションジョイント破損などの被害が発生。1階がピロティになっている建物で被害が大きかった。益城町では、梁端部や柱頭が破壊され、倒壊に至ったRC造寺院も見られた。

耐震補強済みの建物も被害を受けた。例えば益城町の庁舎では、耐震補強の外付けフレームの短スパン梁にせん断ひび割れが発生。南阿蘇村でも、耐震補強済みの地上3階建ての大学施設で躯体(くたい)にひびが入るなどの被害を確認した。

【4:鉄骨造の被害】 目立つ柱の座屈や脚部損傷

熊本市内の立体駐車場の被害。この例では構造的な被害はないが、塔屋の外装材が脱落し、ブレースが破断した(写真:日経アーキテクチュア)

熊本市内の立体駐車場の被害。この例では構造的な被害はないが、塔屋の外装材が脱落し、ブレースが破断した(写真:日経アーキテクチュア)

益城町では、鉄骨(S)造で2~4階建ての店舗併用住宅や共同住宅において、耐震壁の少ない階に大きな変形(層崩壊)が見られた。柱の局部座屈や柱・梁接合部の破壊、柱脚部の損傷などが目立った。

熊本市内では、立体駐車場において溝形鋼ブレースの端部とブレース交差部のガセット部分での座屈など、構造的な被害があった。

県内の体育館では、屋根トラスのボールジョイント部分やRC架構と鉄骨屋根接合部での被害などを確認した。

【5:非構造部材の被害】 体育館で天井落下目立つ

駅や体育館などの公共施設で、人命にかかわる非構造部材の落下が多く見られた。

JR熊本駅では、ファサードのガラススクリーンが前震で3枚、本震で4枚、計7枚が落下した。衝突などで破損したガラスを含め、計17枚を撤去した。

強化ガラスに穴を開けて点支持するDPG(ドット・ポイント・グレージング)工法で設置していた。ガラスは上部の両端が支持され下部がフリーとなっており、層間変形に追従するよう設計されていた。しかし実際には想定していたクリアランス以上の変形が生じ、衝突破損した。ガラススクリーンを吊る非構造材の鉄骨ポールが大きく変形したことが原因とみている。取り付け部の設計が重要といえる。

落下被害のあったJR熊本駅のガラススクリーン。DPG工法で取り付けていた(写真:日経アーキテクチュア)

落下被害のあったJR熊本駅のガラススクリーン。DPG工法で取り付けていた(写真:日経アーキテクチュア)

ガラスの被害には、いくつか典型例が見られた。東日本大震災でも問題となった防煙垂れ壁の被害は多く、庁舎などでガラスが破損した。自動車販売店のショールームでは、コーナー部の面ガラスや、室内側に取り付けたリブガラスが破損する被害を確認した。

天井落下が目立ったのは、コンサートホールなどとしても使われる体育館だ。避難所としての使用が不可となり、多くの住民が車中泊を余儀なくされるケースが発生した。

小中学校の体育館では、脱落対策で吊り天井の多くが撤去済みだったため、比較的被害は小さかった。しかし未対策の学校では、天井や照明が大規模に落下する被害が発生し、使用できなくなった。

商店街のアーケードでも、天井の被害が多発した。アーケードの揺れ方と建物の揺れ方が異なるため、それらの接点で天井材が落下した。

ALC(軽量気泡コンクリート)パネルの被害も散見された。パネルごとに分割せず表面にタイルを張り付けてしまい、タイルごと破損する例が見られた。

(日経アーキテクチュア 橋本かをり)

[ムック『検証 熊本大地震』の記事を再構成]

[参考]日経BP社は2016年6月14日、ムック「検証 熊本大地震」を発行した。熊本地震の「本震」を現地で体験した3人の記者のリポートを軸に、日経グループの専門3誌のネットワークで地震や建築の専門家を取材。阪神・淡路大震災や東日本大震災など、過去の大地震との比較を交えつつ、前例のない「波状的地震」が突き付けた都市と建築の課題を明らかにした。電子書籍も発行

検証 熊本大地震

著者 :日経アーキテクチュア、日経ホームビルダー、日経コンストラクション
出版 :日経BP社
価格 : 2,808円 (税込み)

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