2019年7月21日(日)

耐震補強済みでも被害 熊本地震、5つの要点
熊本大地震の教訓(4)

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2016/7/6 6:30
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日経アーキテクチュア

熊本地震を今後に向けた教訓とするためにも、「特徴」をしっかりと把握しておくことが重要になる。2016年5月14日に開かれた日本建築学会の「地震被害調査速報会」での報告内容を、5つのポイントに分けてまとめた。

【1:地震動】 益城町で3000ガル超える短周期成分

熊本地震は、南北に伸長軸を持つ横ずれ断層による地震だった。地震の大きさを地盤のずれの規模に基づき示すモーメントマグニチュード(Mw)の速報値は「本震」(4月16日)で7.1。兵庫県南部地震の6.9を上回った。

益城町では2度の震度7を観測。自治体震度計がある益城町宮園では、1~2秒の周期帯において、これまで最大とされてきた兵庫県南部地震のJR鷹取駅での観測値を上回る大きな加速度応答が観測されたのが特徴だ。最大値は3000ガルを超えたとみられる。

一方、益城町より東方の阿蘇エリアでは、1秒付近の加速度応答は小さく、3~4秒にかけて比較的大きな加速度応答を示した。観測された速度波から上下動の変位を算出すると、益城町付近では約70cmの沈下があったと推定される。

過去の強震記録と熊本地震での加速度応答スペクトル比較。益城町では、1~2 秒の周期帯で大きな加速度応答が見られた(資料:境有紀・筑波大学教授)

過去の強震記録と熊本地震での加速度応答スペクトル比較。益城町では、1~2 秒の周期帯で大きな加速度応答が見られた(資料:境有紀・筑波大学教授)

【2:木造・文化財の被害】 2000年基準対応で全壊も

・文化財の被害

熊本城では、城内にある13の重要文化財すべてに、何らかの被害が生じた。石垣や小規模な櫓(やぐら)で崩壊が多く見られ、大きな余震が来れば倒壊に至る恐れがある櫓もあった。近年再建された櫓や門にも、崩壊したものがあった。

阿蘇神社(阿蘇市)では、楼門(国の重要文化財)と拝殿が倒壊した。一方で、周囲にある低層の社務所や土産物店など耐震化されていないとみられる建物には被害はほとんどなかった。阿蘇エリアでは地震波の長周期成分が大きかったため、中層建物である楼門が選択的に被害に遭ったとみられる。

・木造住宅の被害

益城町の悉皆(しっかい)調査で木造住宅を調査した結果、現行の耐震基準(2000年基準)に沿って建てられたとみられる住宅400~500棟のうち、倒壊したものが最大9棟、全壊したものが最大8棟あった。

旧耐震基準で建てられた住宅の被害は大きかった。1階の店舗部分に壁が少なく、偏心が大きい店舗併用住宅は「前震」(4月14日)で倒壊したものが多く、人的被害が出た。

「枠組壁工法」とみられる古い住宅のなかにも、経年劣化が倒壊につながったと推測されるケースがいくつかあった。無計画な増改築で柱や壁のバランスが悪くなっていたとみられるものや、蟻害が激しいものだ。

伝統構法の古い住宅では、腐朽や蟻害による耐震性能の劣化が多かった。母屋の裏にある納屋でも束石から柱が外れて倒壊するなどの被害があった。熊本地震では、伝統構法をベースに現行の建築基準法に適合させた「新伝統構法」で建てられた建築も、震度7を初めて経験した。

基礎に緊結されていない柱は最大80cm弱ほど横に滑っていたが、この挙動についていけないトイレや風呂などの設備に被害が発生。配管・配線が全て切断されている住宅がみられた。

5月14日に開かれた日本建築学会の地震被害調査速報会の様子(写真:日経アーキテクチュア)

5月14日に開かれた日本建築学会の地震被害調査速報会の様子(写真:日経アーキテクチュア)

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