小さな鉄人 大きな目標 トライアスロン・上田藍

2016/6/6 3:30
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小さな大エースと呼びたくなる。155センチ、44キロの体は欧米やオセアニアの選手より頭一つ小さいが、世界ランキングは堂々8位。リオデジャネイロ五輪はトライアスロン女子の上田藍(32)にとって、3度目にして初めてメダルを視界に入れての挑戦になる。

155センチ、44キロと小柄だが強靱な肉体で五輪初のメダルを狙う=共同

155センチ、44キロと小柄だが強靱な肉体で五輪初のメダルを狙う=共同

長野・八千穂高原、メキシコ、オーストリアといった世界各地の高地トレーニングで鍛え抜いた肉体は強靱(きょうじん)そのもの。世界を転戦して年間約15レースをこなす。それでいて、2010年の落車による「外傷性くも膜下出血」を最後におよそ6年、大きな故障もない。

エネルギッシュなパフォーマンスは肉体もさることながら、メンタルにも理由がある。いつも笑顔、レースで大敗してもくよくよしたところがまるでない。

「苦しい練習を乗り越えておけば、レースで自分をプッシュできる」「苦しくなると来た、来たってうれしくなる」「勝てないのは未完成だから。課題はウエルカム」。ポジティブな言葉が次々と飛び出す。トライアスロンに転向した18歳から上田を指導する山根英紀コーチも「もう突き抜けちゃってますね。自分はまだまだ伸びると信じ切ってるから」と半ばあきれ気味に笑う。

もっとも、ロンドン五輪後のレベルアップは「ただ頑張るだけではメダルは取れない」と悟ったからでもある。スイム(1.5キロ)バイク(40キロ)ラン(10キロ)の順で競うトライアスロン。スイムが苦手でランが得意な上田は、典型的な後半追い込み型。スイムで出遅れ、ランの奮闘もむなしく……というレースを繰り返してきた。

学んだのは綿密なレース戦略。「大会ごとの各選手の成績(種目ごとのタイムなど)をチェックして、戦略を立てるようになった」。その成果が出たのが「この4年で一番はまったレース」と振り返る先月の世界シリーズ横浜大会。スイムは50位だったが、バイクで海外勢と集団をつくってローテーション(風の抵抗を受ける先頭を入れ替わりながらペースを上げる戦術)。余力を残して先頭に追いつき、ランで3位を確保した。

他選手と協業関係を築いての効率的なレース運びは、実力が海外勢から認められているからこそ。ただ頼るだけでは仲間に入れてもらえない。英語は得意でないが、海外選手の輪にも臆せず飛び込んできた。

起伏のあるリオのコースは「軽量の自分に有利」と言い切る。10年間書き続ける日記ノートの8月20日の欄には「金メダルを取れました、ありがとうございました」と既に書いてある。持ち前のプラス思考で全てを力に変えようとしている。

(山口大介)

=おわり

 うえだ・あい 1983年10月26日、京都府出身。水泳や陸上の経験を生かし、洛北高卒業後にトライアスロン競技を本格的に始める。五輪は2008年北京17位、12年ロンドン39位。14年仁川アジア大会金メダル、日本選手権は昨年までに女子最多の優勝4回。特技はイラスト描き。

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