銀色の新種ヘビ発見、絶滅の恐れも バハマ無人島

バハマ諸島南部の無人島を調査していた科学者が、金属のような光沢のあるヘビが木を登っていくのを見つけた。調査チームのメンバーである生物学者のR・グレアム・レイノルズ氏は、「全員で見ていましたが、ふつうのヘビと違っていることがすぐに分かりました」と言う。
チームの一員で、カリブ海地域に生息するボア科のヘビの専門家アルベルト・プエンテ・ロロン氏も、これまで知られているどのボアとも違っていると思ったと言う。
そこで、研究チームは同じようなボアを探すことにした。新たに4匹見つけたところで、彼らはコンセプション島の浜辺で眠りについた。しかし、ヘビの1日は終わってはいなかった。
「朝の3時半頃、顔の上を何かがはっていくのを感じ、目が覚めました」と現在米国ノースカロライナ大学アッシュビル校に所属しているレイノルズ氏は言う。はっていたのは森から出てきた銀色のボアだった。これで同じボアを6匹確認できたことになる。そのサンプルを研究室に持ち帰り、DNA分析を行ったところ、やはり新種であることが明らかになった。
科学者たちはこのヘビをコンセプション・バンク・シルバーボア(学名:Chilabothrus argentum)と名付けた。体が銀色だったのと、最初に見つけた場所がコンセプション島にある銀葉のヤシの木の上だったことにちなんでいる。この研究結果は科学誌『Breviora』の5月号に発表された。
ヘビの保護活動を行っている「チーム・スネイク・パナマ」のジュリー・レイ会長は、「バハマ諸島の多くの場所で、爬虫(はちゅう)類や両生類について既にさまざまな調査が行われていることを思えば、今回の発見には大きな意味があります」と言う。
なにかあればたちまち絶滅
バハマ諸島にはほかに3種のボアがいるが、いずれも黒い斑点や縞模様がはっきりとしている。新発見のシルバーボアは色が薄いだけでなく、樹上に住み、主に鳥を食べている点でも、他のボアとは違っている。
「この新種のへビは、バハマ諸島の他の島とまったくつながりのない島群でのみ見つかりました」とレイノルズ氏。「私たちが知るかぎり、このヘビはコンセプション・アイランド・バンクにしか生息していません」
「バンク」とは石灰岩堆のことで、コンセプション島といくつかの小さな島はコンセプション・アイランド・バンク(単にコンセプション・バンクとも)という大きなまとまりの一部として海の上に顔を出している。
研究チームは、シルバーボアは地球上のごく狭い地域にしか生息しておらず、個体数は1000匹未満だろうと見積もっている。そのため、なにかあればこのヘビはたちまち絶滅してしまうおそれがある。レイノルズ氏らは、国際自然保護連合(IUCN)がシルバーボアを絶滅危惧種の中でも特に危険が迫っている近絶滅種(critically endangered)に指定するべきだと考えている。

野猫と野犬を遠ざける
シルバーボアにとって幸いなことに、コンセプション・アイランド・バンクにあるすべての島々は国の保護区になっており、訪れる人はあまりいない。レイノルズ氏らは、国立公園を管理するバハマ・ナショナル・トラストと協力して、種の保護戦略を練っている。
シルバーボアは、集団を一掃しかねない自然災害や、ペット業者による密猟、野生化したネコといった脅威にさらされている。コンセプション島にも野生化したネコがいる。こういったネコは、バハマ諸島のほかの場所でボアを捕食していることが知られているのだ。
レイ氏は、シルバーボアは保護区に棲んでいるが、それでも野猫や野犬に襲われる危険はあるという。
「島内にいるイヌを減らし、活動範囲を制限するために、あらゆる努力をするべきです」とレイ氏。「さらに、この自然保護区から野猫を排除することが重要です。ネコは、もともとこの地域にはいなかったのですから」
(文 Mary Bates、訳 三枝小夜子、日経ナショナル ジオグラフィック社)
[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2016年5月31日付]
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