軽井沢の新しい旅 アートと滝で感性を磨こう
癒やしと発見の「滝ガール旅」

夏の避暑地といえば、何といっても軽井沢。女子旅にも大人気の高原リゾートですが、実は浅間山の麓という地形条件から「滝天国」でもあるのです。
軽井沢の滝といってまず多くの方がイメージするのが「白糸の滝」だと思いますが、人気観光スポットであるがゆえに、リゾートシーズンは混雑必至。軽井沢の滝を味わうなら、あえてそれほど観光地化されていない滝から狙ってみるのがお薦めです。
タイプの異なる二つの滝をはしごしよう
群馬県側の北軽井沢エリアには、1カ所でタイプの異なる二つの滝を「はしご滝」できてしまうすてきな場所があります。同じ駐車場から、どちらの滝も歩いて5分程度という手軽なところもいいですね。
一つめの滝がこちらの「浅間大滝」です。

落差は13メートルほどですが、水量が豊富なので迫力たっぷり! 滝つぼ周辺は蒸し暑さとは無縁の天然クーラー空間です。滝つぼは浅く、足をつけたりできるので、夏場はお子さんやワンちゃんの水遊びにも最適の場所ですよ。
そして、浅間大滝と同じ熊川の下流には、もう一つの滝があります。「魚止めの滝」です。

浅間大滝とはタイプが異なり、落ちる滝というよりは、傾斜のある岩の上を滑るように流れてくる滝。滝の分類では「渓流瀑(けいりゅうばく)」と呼ばれています。
写真の中ではついはだしになって滝に入っていますが(笑)、もちろん眺めているだけでも癒やし効果は抜群です。ここでは水しぶきを浴びるというより、一つひとつの流れの「個性」を見比べてみるのが面白いのです。
日陰の部分も、日なたの部分もある。サラサラ繊細に落ちている部分もあれば、豪快にやんちゃに、激しく落ちている部分もある。個性あふれる「流れ」が集まって、それらが調和しながら、一つの雄大な景色として成り立っている――そんな深い感慨を抱かせてくれるのが、この魚止めの滝です。ぜひ深呼吸しながら、じっくりと軽井沢の自然を鑑賞してみてくださいね。
「アート」との組み合わせで滝を深く味わう
さらに、これまでの滝めぐりとは少し違う角度から滝を味わえるコースもいかがでしょうか。
軽井沢には、世界的に活躍する現代日本画家・千住博さんの作品が展示されている「軽井沢千住博美術館」があるのをご存じでしょうか? 千住さんの代表作といえば、巨大な「滝の絵」ですね。この美術館では千住さんの「ウォーターフォール」シリーズを最高の空間で堪能できるのです。

ガラス越しに自然光がたっぷりと入り、土地の自然の起伏を生かした不規則かつ緩やかなスロープがある館内。順路も決まっておらず、私たちはまるで森の中を散歩するように、思い思いに時間を過ごすことができます。まさに千住さんの作品のための舞台だといえるでしょう(ちなみにこのユニークな建築は日本を代表する気鋭の建築家、西沢立衛さんによるものです)。
この特別な空間で滝の絵画を鑑賞しているうちに、「作家は滝を通じて何を表現したかったのか?」という問いが生まれてきます。千住さんが生涯のモチーフとして選んだ滝。日本人の精神性や、生命力など、さまざまな秘密が隠されている気がしてくるのです。
じっくり滝の絵を堪能したら、いよいよ実際の滝めぐりに出かけてみましょう。すると、観光スポットとしての滝という捉え方ではなく、滝が「地球規模のアート」として、より奥深く感じられるようになっているはずだからです。
美術館とセットでぜひ訪れていただきたいのが、白糸の滝の近くにある「竜返しの滝」です。

どうでしょうか、千住博さんが描く滝と、どこか似た雰囲気があると思いませんか? 滝自体は小ぶりですが、まっすぐに落ちる姿と飛沫の立ち方など似ているところがあるからこそ、芸術と自然のリンクを肌で感じられるでしょう。
また、ここは大観光地のすぐそばにあるためか、かえって見落とされがちな、穴場の滝といえるかもしれません。プライベート気分で、静かに滝と向き合えるのもポイントです。
軽井沢の滝グルメは「滝見そば」で
滝ガール旅、恒例の滝グルメもお忘れなく。浅間大滝のある北軽井沢エリアには、「滝見そば」がいただけるお店があるんです。
「手打ちそば古瀧庵」です。

「古瀧花木野草苑」に併設したお店。苑内(入苑料:大人500円)には「浅間古滝」という滝が流れています。緑の林を背景に流れ落ちてくる、美しい滝ですよ。

せっかくなら自然いっぱいの庭園の景色を眺められるテラス席でいただきましょう。滝の音に加えて、風に揺れる木々の音、鳥のさえずりも加わって、まさに自然のBGM。打ち立てのそばも、いっそうおいしく感じられます。

景色からグルメまで、魅力満載の軽井沢。どんな過ごし方をしても楽しいことには間違いありませんが、「滝」という切り口をつくって旅をしてみるとまた新しい発見があるのです。滝と触れ合って納涼気分を満喫したり、滝とアートを組み合わせて鑑賞することで感性を磨いたり。滝の力を借りながら、今年の夏もすがすがしく過ごしていきたいですね。

編集者、ライター。2015年まで日経BP社に在籍。学生時代から10年以上、趣味の滝めぐりで日本全国を行脚。2013年に自身の滝活動の情報発信サイト「takigirl.net」を開設。日本の滝のポテンシャル、楽しみ方をウェブサイトや雑誌で情報発信するほか、都会で暮らす女性向けに滝めぐりのレクチャーや滝yogaイベントを開催している。
http://takigirl.net/
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