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不透明さ増す招致疑惑、東京は「汚れた五輪」か

編集委員 北川和徳

3年前のブエノスアイレス。国際陸連会長(当時)のラミン・ディアク氏は東京の招致委員会関係者が頼りにする存在だったと思う。東京が敗れたさらに4年前の2016年五輪招致でも、国際オリンピック委員会(IOC)委員でもあるディアク氏の影響力でアフリカ諸国のIOC委員の票はかなりが東京に回っていたという分析を聞いたことがある。

衆院予算委で東京五輪招致疑惑について答弁するJOCの竹田会長=共同

複雑な利害関係絡む招致レース

その根拠は日本企業と国際陸連の関係だった。日本の広告代理店、電通の尽力もあって、国際陸連のスポンサー「公式パートナー」にはトヨタ自動車、キヤノン、TDK、セイコーなどが名を連ねる。世界陸上を支えているのはジャパンマネー。当然、日本や東京を悪くは扱えないというわけだ。

残念ながら、五輪招致レースは開催計画の優劣や大会理念の評価などの正々堂々の争いで決するわけではない。投票する約100人のIOC委員の個人的な人間関係はもちろん、彼らが関係する組織や国・地域と、立候補都市とその国、関係企業などとの複雑な利害関係が絡み合って、支持が積み上がっていく。外交交渉とも似ている。だから、国際陸連の会長に日本企業の陸上競技への貢献をアピールして票の取りまとめを頼んでもルール違反ではない。ところが、そこに個人的な現金や高額プレゼントなどの賄賂が介在すると、途端にアウトとなる。

20年東京五輪に今度は世界から疑いの目が向けられている。発端は、ディアク氏がロシアの陸上選手のドーピング(禁止薬物使用)隠しで賄賂を受け取っていた容疑で、フランスの捜査当局に摘発されたことだった。その不正な金の流れに登場したシンガポールのコンサルタント会社「ブラック・タイディングス」(BT社)の口座に、東京招致委からも13年7月に約9500万円、10月に約1億3500万円の計約2億3000万円が送金されていた。

現地の報道によると、フランスの捜査当局は、この資金の一部がディアク氏の息子に流れて高級腕時計の購入などに使われたことを確認しているようだ。当然、東京からの送金は、ディアク氏側にIOC委員の票の取りまとめを頼むための賄賂だったのではと疑われている。

「正当な支払い」と竹田JOC会長

東京招致委の理事長でもあった日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和会長らはBT社への送金を認めた上で「招致活動を進めるための正当なコンサルタント業務への支払いだった」と説明するが、実際にその資金がどう使われたかについては「分からない」。

招致決定の後に支払われた約1億3500万円については、「招致レースの勝因分析」という業務の報酬の名目だが、事実上は成功報酬の意味合いもあったとしている。

いったい、招致コンサルタントとはどんな役割を果たすのか。立候補都市の国際的なPR活動、開催計画の立案やプレゼンテーションのアドバイス、スピーチ作りなどが表向きの業務となるが、最も期待されるのは、IOC委員と招致委の仲介や彼らの情報収集、そして直接のロビー活動だ。

02年ソルトレークシティー五輪招致をめぐる買収スキャンダルでIOC委員の立候補都市訪問が禁止となり、IOC委員との接触にも厳しいルールが定められたことで、水面下で自由に動ける招致コンサルの利用価値がいっそう高まり、招致成功には不可欠な存在といわれるようになった。

東京都の舛添要一知事(右)の公私混同も甚だしい政治資金の使い方が問題に。負の連鎖はどこまで続くのか=共同

「IOC委員とつながりあるから契約」

竹田会長は国会での質問に「コンサルタントはみんなIOC委員とつながりがあるから契約している。どの(立候補)都市も同じだ」と答弁した。契約書の中身がどうあれ、今回のBT社に託した本当の業務は「ディアク氏とその周辺のIOC委員の支持を固めること」だったと推測している。それなら開催都市決定というゴールまで2カ月もないのに高額な契約を結び、その半分以上が成功報酬として支払われたことも納得できる。もちろん、その場合でもコンサルタントがIOC委員に対して「安心・安全・確実な大会ができる東京の素晴らしさ」を正攻法で訴えて支持を求めたのならなんの問題もないのだが……。

不可解なのは、BT社と契約にいたった経緯だ。先方からの売り込みを受けて電通に照会。「国際陸連の仕事などで実績のあるコンサルタント」との回答を得たので契約したとの説明がある。しかし、すべては事務局レベルで進んでいたようだ。竹田会長は「経営者に会ったこともないし、会社も知らない。事務局が必要だということで契約した」。他の招致委幹部も同様の言葉を繰り返している。国際陸連のビジネス事情に精通している電通が、事務局のどこに対して、どんな情報をもたらして契約に至ったのか。BT社との契約の背景にあったものが、この疑惑の最大のポイントである。

ディアク氏に賄賂が渡っていたとしても、日本の法律では民間人同士の贈収賄は成立しない。送金された2億3000万円の流れと使途に関しては、フランスの捜査を待つしかない。最悪の場合、海外の捜査当局によって、東京の招致委関係者が逮捕されるという可能性すらある。日本側が潔白を示すためには、「正当な業務契約であり、お金がそんな形で使われるとは知らなかった」ということを言い続けるしかない。

都知事の問題も…東京五輪の負の連鎖

JOCは疑惑を解明するための調査チームを立ち上げた。特に根拠もなく「日本は不正などしない。潔白を証明する」と繰り返している。それがむなしく聞こえてしかたがない。フランスの捜査で東京の票が賄賂で買われたことが裏付けられてしまえば、不正を行う業者と契約した招致委や、それにお墨付きを与えた電通も責任は免れない。「知らなかった」ではすまないのだ。20年東京大会は「汚れた五輪」として国際的にイメージダウンする。そうならないためには、捜査が不発に終わることを祈るしかないのがつらい。

国内ではホストシティのトップである都知事が公私混同も甚だしい政治資金の使い方で、信頼を失墜させている。悪いニュースばかりが飛び出す東京五輪。負の連鎖はどこまで続くのだろうか。

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