2019年6月18日(火)

「2000年基準」も3~4割大被害、筋かい破断など多発
検証・熊本地震住宅倒壊(中)

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2016/6/7 6:30
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日経ホームビルダー

「2000年基準」になってから完成した木造住宅が、これほど大きな被害を受けた様子は、過去の大地震で見たことがない──。

被災地に入った複数の研究者や実務者から、こうした声を聞いた。2000年基準とは、接合部の接合方法や耐力壁のバランスなどの規定が厳格化された告示が加わった2000年以降の新耐震基準のことだ。工学院大学名誉教授の宮澤健二氏らが益城町の宮園、辻の城、惣領の各地区で計205棟を調査した結果では、2000年基準の住宅が1割あり、そのうちの3~4割が倒壊・大破していた。

2000年以降に完成した木造住宅の被害で最も衝撃的なのは、性能表示制度の「耐震等級2」で設計していた住宅Aだ。本震で1層崩壊した。

耐震等級2で設計した住宅Aと2000年基準の住宅Bにおける被害の様子。Aは南西側に倒れ1層崩壊した。Bは西側に傾いて隣家との間にある塀にぶつかっており、崩壊は免れた(写真:宮澤健二)

耐震等級2で設計した住宅Aと2000年基準の住宅Bにおける被害の様子。Aは南西側に倒れ1層崩壊した。Bは西側に傾いて隣家との間にある塀にぶつかっており、崩壊は免れた(写真:宮澤健二)

Aの駆体の北東側の被害。柱が引き抜け、南西側にずれている(写真:耐震研究会)

Aの駆体の北東側の被害。柱が引き抜け、南西側にずれている(写真:耐震研究会)

北東の出隅から60cm離れた箇所の通し柱の被害。ホールダウン金物のアンカーボルトが基礎に固定された状態で、柱が引き抜けている。ホールダウン金物は折れ曲がっている(写真:宮澤健二)

北東の出隅から60cm離れた箇所の通し柱の被害。ホールダウン金物のアンカーボルトが基礎に固定された状態で、柱が引き抜けている。ホールダウン金物は折れ曲がっている(写真:宮澤健二)

耐震等級2は、2000年基準の1.25倍の強さに相当する。ただ、Aは熊本における地域係数0.9をみて1.12倍としていた。

Aの躯体(くたい)の北東側部分では、土台や桁から引き抜けた柱が多数見つかった。南西側に倒れる際に引き抜けたと考えられる。

盛り土の造成地に建つAには見逃せない点がもう一つある。地盤調査で地盤補強が必要と判定されたため、長さ約5.5mの鋼管杭を地盤に施工していたのだ。Aの隣のBも盛り土に建つが、地盤改良はしていない。

盛り土した宅地に建つ住宅AとBを北側から見る。A(中央)の被害が著しい。Aの左側に建つ2008年に完成した軽量鉄骨造の住宅は、目視で被害を確認できなかった(写真:宮澤健二)

盛り土した宅地に建つ住宅AとBを北側から見る。A(中央)の被害が著しい。Aの左側に建つ2008年に完成した軽量鉄骨造の住宅は、目視で被害を確認できなかった(写真:宮澤健二)

Aを手掛けた住宅会社は、耐震等級2の住宅を益城町内の別の場所でも建てており、その住宅には被害がないという。住宅会社3社にもヒアリングしたが、住宅A以外に耐震等級2以上の住宅の被害は確認できなかった。

Aの被害については、京都大学生存圏研究所教授の五十田博氏や建築研究所の研究者などが原因究明に取り組んでいる。五十田氏は、「杭で補強した地盤に建つ剛性を高めた住宅に今回の地震動を入力すると、どのような応答が見られるのかを詳しく調べたい」と話している。

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