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「職住近接」が加速 飯田橋、駅前再開発の全貌

日経アーキテクチュア

JRと地下鉄の計5路線が乗り入れる東京都千代田区飯田橋は、1984年に駅ビル施設が開業して以来、商業施設やオフィスに住宅を加えた複合開発が街を活気づけてきた。始動している駅前再開発でも複合ビル建設を予定しており、さらに「職」と「住」が集積する。都心回帰と職住近接の流れが加速しそうだ。

駅前で始動しているのは、「飯田橋駅中央地区再開発事業」。2015年9月に設立した準備組合が、駅東口の約1.0ヘクタールを対象に計画を策定している。開発が進む飯田橋駅西口側と、2003年に日本貨物鉄道(JR貨物)の貨物駅跡に誕生した街区「アイガーデン」をつなぐエリアとして拠点化し、飯田橋の玄関口を活性化させる。竣工は2022年度を予定している。

再開発を予定している飯田橋駅中央地区を目白通りから見る。写真右側にJR線が走り、左側に再開発予定の街区が広がっている(写真:赤坂麻実)
飯田橋交差点(五差路)の歩道橋からは、駅東口の奥に再開発街区が望める(写真:赤坂麻実)

再開発区域は従前の権利者が53人、建物が35棟と小割りになっており、人通りの多い駅前でありながら、広場がないことが周辺地域の長年の課題だった。再開発では、地下鉄東西線の改札口とJRの駅東口をつなぐ通路に面して立体的な広場「駅前プラザ」を設ける。また、歩道状空地もつくり、再開発ビルには、これら歩行者空間に面する店舗ゾーンを設置する。

計画建物の用途は業務、商業、住宅、その他の予定。野村不動産が事業協力者だ。同社は、隣接街区で2009年に完成した「飯田橋プラーノ」の開発にも、特定業務代行者および参加組合員として携わった経験を持つ。

再開発街区の位置図。JR線と地下鉄東西線が交わる一角が対象地(資料:野村不動産)

JRがホーム移設で安全対策

JR飯田橋駅自体も、JR東日本が改良を予定している。半径300mの急曲線となっている駅のホームを直線化するため、新宿側へ約200m移設する。現状は電車とホームの間が一部大きく空いており、転落検知マットや回転灯、放送設備などで安全対策を講じてきたが、ホーム移設で抜本的に危険を解消する。

JR飯田橋駅のホーム移設計画位置図。市ケ谷・新宿駅方面に200m移動する(資料:JR東日本)
ホームの移設を計画している辺りの現在の様子。早稲田通りの牛込橋から市ケ谷・新宿駅方面を望む(写真:赤坂麻実)

ホーム移設に合わせて西口駅舎の建て替えを計画しており、既に仮設駅舎の工事が進んでいる。新駅舎には小規模な店舗が入る予定。駅前には千代田区と連携して約1000m2(平方メートル)の広場を設ける。東口で進む再開発とともに、東西出口に駅前広場が生まれることになり、街の快適性や利便性が向上する。

西口駅舎の建て替えに向けて、線路の南東側に仮駅舎を設置する工事が始まっている。仮駅舎は2016年8月末に完成する予定(写真:赤坂麻実)
仮駅舎建設を知らせる掲示。入り口が早稲田通りの牛込橋側から飯田橋プラーノ側に移動する(写真:日経アーキテクチュア)
飯田橋駅西口付近には江戸城外堀の牛込見附の石垣が残され、歴史情緒が感じられる。周辺は藩主や旗本の屋敷だった場所が多い(写真:赤坂麻実)

職住近接モデルのはしり

飯田橋の街は、これまでも大型複合開発を軸に変化し続けてきた。1984年に飯田濠の跡地に駅直結の「飯田橋セントラルプラザ・ラムラ」が開業した。事務棟と住宅棟から成り、職住近接モデルのはしりともいうべき存在だ。

飯田橋セントラルプラザ・ラムラ。左が住宅棟で右が業務・商業棟。ちなみに住宅棟は千代田区に、事務棟は新宿区に属している(写真:赤坂麻実)

事務棟は東京都飯田橋庁舎としての利用が中心で、低層階には商業ゾーンがある。駅西口側に続くアーケードでフリーマーケットなどのイベントが開かれるなど、にぎわい形成に一役買っている。

2003年には、JR貨物の貨物駅だった「飯田町駅」などの跡地に、「アイガーデンエア」が開業した。これも高さ153mのオフィス棟「ガーデンエアタワー」や29階建てのマンション棟「東京レジデンス」などを整備する複合開発。アイガーデン内にはほかに、3階建て商業施設「アイガーデンテラス」や大和ハウス東京ビル、日建設計東京ビル、シティーホテル「ホテルメトロポリタンエドモント」などが建っている。

アイガーデンは3街区から成る。その一つである中央街区では、KDDIが入居する35階建てのガーデンエアタワーが目を引く。その足元にはアイガーデンテラスがある(写真:赤坂麻実)

飯田町駅は、1895年に甲武鉄道の起点駅として開設され、1933年に旅客駅としての役割を終えて貨物専用化。1972年には流通倉庫が設置され、当時、都内に数多く立地していた印刷会社や新聞社の需要に応えた。印刷業の郊外化などに伴い、1999年に駅が廃止され、駅や周辺の引き込み線、流通倉庫の跡地が再開発されたという経緯がある。

2009年には超高層マンションとオフィスビル、商業施設から成る飯田橋プラーノも完成。さらに2014年には、駅西口に「飯田橋サクラパーク」として、30階建ての業務・商業棟「飯田橋グラン・ブルーム」(商業施設名は「飯田橋サクラテラス」)と40階建てマンション「パークコート千代田富士見ザタワー」の2棟が完成し、飯田橋の新たなランドマークになっている。このように、飯田橋では過去30年、職住近接の大型複合開発が続いてきた。

飯田橋駅西口付近の旧東京警察病院跡地に建つ飯田橋サクラパーク。写真左が業務・商業棟で、右が住宅棟(写真:赤坂麻実)

オフィスは底堅い需要

飯田橋は、オフィスエリアとして底堅い需要がある。「JR線や地下鉄の結節点である飯田橋は、東京を知る人が好むエリア。駅前であっても中小規模のビルが多い割に、満室で稼働しやすい。入居企業にとっては便利な割に賃料が高くないのが魅力になる」(三幸エステートの今関豊和チーフアナリスト)。

近年では、延べ面積約12万m2の飯田橋グラン・ブルームがインパクトをもたらした。オフィスとしての立地や性能の高さから、「周辺エリアの募集賃料(大規模ビル)に比べて坪1万円程度、上回る水準を維持している」(今関氏)

三幸エステートの調査によれば、飯田橋・九段エリアのオフィスの規模別ストックは、大規模(200坪以上)のシェアが2005年末時点で39%(面積ベース)だったのが、2015年末には47%と8ポイント上昇した。同じJR沿線の四谷・市谷エリアでは2015年末の大規模のシェアが18%にとどまっており、対照的である。

オフィスの規模別シェアを面積ベースでみる。飯田橋・九段エリアはこの10年で大規模のシェアが8ポイント高まった。四谷・市谷エリアと対照的だ。データは2005年末時点のもの(資料:三幸エステートの資料を元に日経アーキテクチュアが作成)

また、飯田橋・九段エリアのオフィス賃料は、2016年4月末時点で坪当たり2万2500円と、西新宿エリアを上回っている。これまでの"小割りで賃料割安"という特徴が変化してきているようだ。

オフィス賃料を坪単価で比較(単位は円)。飯田橋・九段エリアの大規模オフィスは西新宿エリアの賃料を上回る。データは2016年4月末時点のもの(資料:三幸エステートの資料を元に日経アーキテクチュアが作成)

イメージ向上、住宅地としても人気

街全体のイメージは近年、向上している。外堀沿いの桜並木や、水辺空間を生かした人気のカフェレストラン、外堀通りを挟んで隣町となる神楽坂の風情などが好影響している。病院や医療関連分野のオフィス、大学、東京都の関連施設などが多いことも、オフィスや住宅の立地を検討する際にはプラスに働く。

外堀の水辺空間を利用した「カナルカフェ」。東京で最初にできたボート場に併設する形で開業した。今もボート営業は継続している(写真:赤坂麻実)
飯田橋駅西口から見て北西に延びる神楽坂通り(神楽坂周辺の早稲田通り)の様子。沿道建物の意匠や壁面の位置、袖看板の大きさや位置などについて、新宿区が景観形成ガイドラインを定め、街並みの保全に努めている(写真:赤坂麻実)

なかでも、飯田橋サクラパークや飯田橋プラーノがある富士見エリアは千代田区の高台に位置しており、駅が近い割に閑静で、住環境として人気を博している。2007年には、飯田橋プラーノの38階建てマンション「プラウドタワー千代田富士見」の全306戸が即日完売。2013年には、飯田橋サクラパークの40階建てマンション「パークコート千代田富士見ザタワー」で、多くの"億ション"が数カ月で完売して話題となった。

今後も、JR線のホーム移設や駅舎建て替え、駅前広場の整備などで、街としての地位がさらに高まっていきそうだ。

神楽坂の路地の風景。石畳や建物の意匠が花街の風情を感じさせる(写真:赤坂麻実)

(フリーライター 赤坂麻実)

[日経アーキテクチュアWeb版2016年5月24日付の記事を再構成]

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