哲学は「シンプルに打つ」 ゴルフ手嶋多一(上)

2016/5/28 6:30
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「日本一練習しないプロゴルファー」。手嶋多一(47)は、そんな紹介のされ方をする。ここ10年ばかり、試合会場でラウンド後にショット練習をすることはまずない。それでもツアーでは1996年から20年連続で賞金シードを維持している。現役では最長。一昨年の日本プロ日清カップヌードル杯で国内メジャー2冠を達成、昨年は「ホストプロ」として29年ぶりにミズノオープンを制した。

シニア入りが迫りながらツアーでは20年連続で賞金シードを維持

シニア入りが迫りながらツアーでは20年連続で賞金シードを維持

見せるのは結果、練習じゃない

シニア入りが迫りながらの活躍は独自のゴルフ哲学が土台にある。「プロはあがってナンボの世界。『技術点』はない。結果を見せるのが商売」。ショットはドロー一辺倒。「かっこ悪くても同じ球筋で。フェアウエー、グリーンの幅に行けばいい。ピンにピタッとつけなきゃと思わない」

もちろん、若くしてそんな境地に達したわけではない。米留学中は憧れのベン・ホーガンの資料をあさり、ビデオを入手。連続写真を目の前に置いて、美しいスイングをまねしようとした。93年にプロ入りしても、「ショットは研修生並み」と自虐的な言葉を口に。スタンスやグリップを変えながら理想のスイングを追い求めた。30代前半までは練習場が閉まるまで居残っているのが普通だった。

しかし元来が職人気質だ。ビデオも撮りながら、根を詰めて練習していると悩みが生じる。プレー中もああだこうだと考えているうちに試合は終わってしまう。「機械的なスイングにとらわれすぎていた。子どもの頃のように、自分本来の感覚を生かせるようにしたい」。コースに出たら目の前のボールを見て、風を読み、打つだけ。泥臭くても、いいスコアであがることに徹するようになった。

球を打つばかりが練習じゃない、が持論だ。大会期間中はパターや6番アイアンをホテルの部屋に持ち帰り、素振りやスイングチェックを欠かさない。鏡の前でアドレスの形やボール位置などを繰り返し確認する。「テークバックの始動が一番難しい。30センチまでどうシンプルに行くかが勝負。手は絶対動かさず、脚を使って、最後にヘッドが動くイメージで」

「真っすぐ立ち、歩くことが大事」

姿勢もかなり意識する。「真っすぐ立ち、歩くことがスポーツでは一番大事」。本を読んで走り方や歩き方を自分なりに勉強した。食事で街に出たときでも、歩く姿をガラスなどで映し見て、おかしいと思ったらすぐ矯正する。

賞金ランク70位だった13年、シード陥落の窮地に立った。構えたらさっと打つタイプなのに、アドレスでもじもじ。打ちたい方向に真っすぐ立ち、振ることができない。だが立ち方や歩き方に注意し始めてから、悩みは消えていった。「年をとると、それまで当たり前だったことができなくなる。今はスイングは気にしないけど、真っすぐ立つことはすごく気にする」。翌年はフェアウエーキープ率6位とドライバーショットが復調。7年ぶりの勝利をつかみ選手生命の危機を乗り越えた。

(敬称略)

〔日本経済新聞夕刊5月23日掲載〕

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