重力より強い暗黒エネルギー 日米が正体解明に挑む

2016/5/28 6:30
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日経サイエンス

ビッグバンで誕生して以来、宇宙は膨張を続けている。その膨張する速度は、物質の重力(万有引力)の作用で徐々に落ちていると考えられていた。ところが実際にはスピードアップしつつあることが明らかになり、天文学者を驚かせている。

HSC(Hyper Suprime-Cam)は国際協力で開発した世界一大きな超高感度デジタルカメラだ。レンズを組み込んだ鏡筒は直径1m、長さ165cm、総重量約3トン。レンズは大きなものでは直径82cm、使用する超高感度CCDは約8億7000万画素(写真提供:国立天文台/HSCプロジェクト)

HSC(Hyper Suprime-Cam)は国際協力で開発した世界一大きな超高感度デジタルカメラだ。レンズを組み込んだ鏡筒は直径1m、長さ165cm、総重量約3トン。レンズは大きなものでは直径82cm、使用する超高感度CCDは約8億7000万画素(写真提供:国立天文台/HSCプロジェクト)

膨張のペースが速まっているということは、物質の重力に打ち勝つほどの強い斥力を生じさせる未知の「暗黒エネルギー」が宇宙に存在することを示唆する。その正体は何なのか?宇宙の広域観測から手がかりをつかもうと2つの国際共同プロジェクトが進んでいる。

■宇宙のゆがみで推測

1つは米国立フェルミ加速器研究所などを中心とする「暗黒エネルギーサーベイ」。南米チリのセロ・トロロ汎米天文台にある口径4メートルの望遠鏡に取り付けた「暗黒エネルギーカメラ」を用いて南天を観測している。

もう1つのプロジェクトは日本の国立天文台を中心とする「HSC銀河サーベイ」だ。ハワイ島マウナケア山頂にある口径8メートルの「すばる望遠鏡」に最新鋭の超広視野カメラ(HSC)を取り付けて北天を観測している。

暗黒エネルギーの正体に迫る1つのアプローチは「重力レンズ効果」の観測によって、「暗黒物質」という、これまた正体不明の物質の分布状況を調べることだ。

遠くの銀河からの光は、地球にやってくる途中に存在する物質(星やガスなどの普通の物質はもちろん、暗黒物質も含む)の重力によって進行ルートが曲げられるので、見かけ上、銀河の形がゆがむ。これを重力レンズ効果という。宇宙全体を見ると、暗黒物質は普通の物質の約5倍も存在しているので、重力レンズ効果はもっぱら暗黒物質によって生じることになる。

つまり観測で得られた銀河の形状のデータ(銀河の形のゆがみ具合)をもとに重力レンズ効果の度合いを評価すれば、様々な距離(様々な宇宙の時代)における暗黒物質の分布状況がわかる(銀河までの距離は、その銀河が放つ光の波長ごとの明るさを調べるとわかる)。

そのことから暗黒物質が時間とともにどのように、重力作用による凝集が進んできたかが追跡できる。ここで宇宙の加速膨張をもたらす暗黒エネルギーは斥力を及ぼし、暗黒物質の凝集を阻害する要因となっているので、暗黒物質の凝集プロセスを詳しく調べれば、暗黒エネルギーの物理的な特性をあぶり出すことができる。

銀河の広域観測は暗黒エネルギーサーベイが先行しているが、HSC銀河サーベイでは暗黒物質のより細かな分布の様子がつかめるので、暗黒エネルギーの物理特性を詳しく調べることができる。観測結果は暗黒物質の正体を解明するのにも非常に役立つと期待されている。

(詳細は25日発売の日経サイエンス2016年7月号に掲載)

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