2018年9月22日(土)

採用担当もつらいよ 「学生がマネキンに見えてきた」

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2016/5/19 6:30
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 就活探偵団の取材の中で、ある男子学生がこう言った。「新卒採用担当の社員の仕事って、学生の能力を判断するだけなんですかね」。人事部は、企業の中で就活生と最も接点が多い存在だが、仕事内容やミッションが具体的に何なのかは見えにくい。敵を知り己を知れば百戦あやうからず――。彼らの本音を知っておけば、戦い方もおのずとわかってくるはずだ。

■採否の決定権がないジレンマ

 「うちは一定の基準を満たせば誰でもいいのではなく、常にトップの人材をねらう方針。上からのプレッシャーは強い」。就職ランキングで常に上位に挙がる大手企業の新卒採用担当のA氏はこう話す。同社の今年の採用実績は約100人。「人事のミッションは、目標通りの採用人数を確保すること。今年はなんとか集められた」と説明する。A氏は営業やマーケティングの仕事が長いが、人事に異動した。

 数を達成できればどんな学生でもよいわけではない。会社の経営陣は、ハイレベルな学生の確保を要求する。だが、そうした学生の母集団を集めても、実際に面接をして採否を決めるのは人事ではなく、現場の社員や経営陣だ。こうしたジレンマを抱えながら、最終的に辻つまを合わせるのには、高度なスキルが必要になる。

 最初のノルマは何人の学生を6月の面接の場につかせるかだ。目標達成のために、新卒採用をビジネスの視点に立ってとらえる能力も求められる。A氏は「本来人事を数字で考えたくないが」と前置きしながら、新卒採用にマーケティングや営業の感覚が役立っているという。

 面接開始時の受験予定者数に、自社の統計に基づく合格率をかけ合わせた結果、予定採用数を上回っていなければ中間地点での人数目標は未達成ということになる。今春の採用の場合、実際の採用数の約3倍の母集団を集めた。「面接から逆算して、例えばイベントや説明会を設計する際には、どの大学で、どうPRすれば、どんな学生がどれくらい応募してくれるかを緻密に計算する。それでも足りなければ、新しい“市場”で学生の開拓をねらう」(A氏)。

 しかし夏のインターンなどで目星をつけた有望な人材は、外資やベンチャーなど採用ルールにしばられない人気企業がすでに内定を出している。内定を持つ学生をもう一度面接に向かわせるのは至難の業だ。夕食で「接待」しながらの話し合いもある。学生に向けた説明会などでは自社の事業を華々しく語る人事だが、裏では優秀な人材を確保するために懸命に汗を流しているのだ。

■ランキングに一喜一憂

 「人事は何をやってるんだ」。ある大手企業では、就職人気ランキングの順位が、前年の3位から5位に下がり、社長のカミナリが落ちた。泡を食った採用担当者が、お金をかけて大規模な就職セミナーをあと5回ふやし、ランキングの発行元にも働きかけたところ、ランキングは2位まで復活したという。

 「こんなバカな経営者の下では、人事はまともな採用活動はできない」と採用担当者はぼやく。

早期内定のトリセツ 就活探偵団が突撃取材

著者 :
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 1,188円 (税込み)

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