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不参加表明が次々…五輪とトップ選手の微妙な関係

米ゴルフウイーク誌記者 ジム・マッケイブ

2009年初め、全米ゴルフ協会、全英オープンを主催するR&A(ロイヤル・アンド・エンシェントクラブ)などが加盟する国際ゴルフ連盟(IGF)は、16年に行われる夏季五輪からゴルフを正式競技として採用してもらうべく、ロビー活動を活発化させていた。結果、この年の8月には国際オリンピック委員会(IOC)理事会が推薦を決め、10月のIOC総会で、1904年以来、112年ぶりの復活が決まった。

競技復活の裏にウッズ人気あり

その09年を振り返ると、まだ、タイガー・ウッズ(米国)が健在で、ゴルフ界を支配していた。IGFはウッズのネームバリューを利用して、働きかけを強めた。一方のIOC側もウッズの人気が欲しかった。ウッズがメダル争いをしてくれれば、五輪が盛り上がる。両者の思惑が合致した。

ところがその後、劇的に状況が変わる。その年の11月には、クリーンで、リオデジャネイロ五輪の顔にと期待されたウッズのスキャンダルが勃発した。それ以降ウッズは、13年シーズンこそ一時期に復活し、米ツアーの年間最優秀選手にもなったものの、13年8月以来、故障も続いて、未勝利だ。今季は、出場すらしていない。

そういう状況では、今夏のリオデジャネイロ五輪に出られるはずもない。数年前から予想はできたとはいえ、ウッズ人気にあやかろうと考えていたIOCにしてみれば、ウッズを当て込んでパーティーに客を招待したのに、IGFから「来られなくなっちゃいました」と耳打ちされて、「おいおい、客になんて説明するんだ!」とあたふたしているのが今の状況だろう。

「オイ、代わりに誰か、おらんのか? スピースとかなんとか、マキロイっていうやつもいなかったか?」と、IOCに詰め寄られても、「はぁ……」としか返事ができないIGFがいる。

過密日程など理由にスコットら不参加

そう、理由はどうであれ、リオデジャネイロ五輪に参加しないのは、ウッズだけではなく、世界のトップクラス――例えばアダム・スコット(オーストラリア)、ルイ・ウェストヘーゼン(南アフリカ)らが、すでに不参加を表明している。世界ランキング上位のジョーダン・スピース、リッキー・ファウラー、バッバ・ワトソン(全て米国)、ジェーソン・デー(オーストラリア)、ロリー・マキロイ(英国)らは"今のところ"出ない、とは口にしていないが、その可能性は消えない。むしろ彼らは、迷っている。

その理由――。まずは、日程だ。スコットは、「大きな大会が前後に密集している」と話し、不参加の一因に挙げたが、確かに6月中旬から9月の終わりにかけて、3つのメジャー大会、世界ゴルフ選手権、そしてプレーオフ(フェデックスカップ)と、日程が詰まっている。となると、ある意味で五輪の時期(男子ゴルフは8月11~14日)が休みどきだ。プレーオフを見据えれば、ここで最後の調整をしたい。

次に、ジカ熱の問題。大リーグのマーリンズとパイレーツが先日、今月末にプエルトリコで開催を予定していた試合をキャンセルした。プエルトリコでもジカ熱の健康被害が出ており、懸念したのは選手らだけでなく、選手、監督、コーチの家族に加え、チーム関係者もためらっていた。それぐらい神経質な時期に、さらにジカ熱の危険が高いブラジルに行くことに選手らを含む関係者が不安を覚えるのは当然のこと。やはり不参加を決めたビジェイ・シン(フィジー)は、この問題を指摘していた。

「オリンピックに出たい気持ちはある。しかし、ジカ熱が……」

国の誇りかけた団体戦を望む声も

大会の型式にも多くが首をかしげた。今回、男女とも64人ずつが参加して、4日間のスロトークプレーで金メダルを争う。大事なのは、国別の対戦ではなく、個人戦という点。ある選手は、こう言った。

「オリンピックというのは、国のために誇りをかけて戦う、というものだと思っていた。でも、個人的な栄誉のために戦うことになるとは。十分、団体戦が可能な競技なのに」

また、今回と東京五輪までは正式競技として採用されているが、それ以降は、開催が未定な点にマキロイは疑問を呈す。

「もし、多くの人がワクワクできるように変えられないとしたら、(東京を最後に消えてしまうことに)不安を感じている」

マキロイにしてみれば、いったん、正式競技にしたのなら、どうして長い目でゴルフというスポーツと共存する姿勢を見せないのか、ということだろう。

一方、IOCの言い分はこうではないか。

「トッププレーヤーが出ないなら、続ける必要はない」

IOCは来年、ゴルフという競技が五輪にふさわしいのか、成功に終わったかどうかなどを検証する予定だ。当然、スコットらのことは話題になるだろう。今後、スピースやマキロイらも出場を見合わせれば、存続を問うことになるはずだ。

さて、どうだろう。最終的にはもっと多くのトップゴルファーが不参加に転じるのではないか。スピース、マキロイらは、五輪がスポンサーにとって最高の宣伝の場であることを考えれば、義務として出場しなければならないかもしれないが、その足かせがなければ、彼らの本音も……。

五輪に魅力なし、が本音

結局、そうした本音を突き詰めていけば、トップゴルファーが、五輪に魅力を感じていない、ということに尽きる。ウッズが健在で、"盛り上げよう"と率先して出場するなら、状況は変わっていたかもしれないが、そもそもゴルフにとって五輪に深い関係がなく、伝統もなければ、金メダルにさほど価値はない。どう断ろうかと考えているときに、日程やらジカ熱の問題が明らかとなって、それならば、それを利用させてもらおう、となった――。

であるとしたら、少々、問題は深刻だ。IGFとIOCが協力をしたのはいいが、ウッズという"かすがい"が機能しなくなって、選手を含めた関係者の足並みが乱れた。

あと数カ月で軌道修正できるかどうか。大会を成功させるという同じ意識を選手、関係者らが共有できるかどうか。それにはしかし、時間がない。

まだ、こう話す選手がいるのである。

「五輪によって、ゴルフが人気になるなんて、誰も考えない」

過去、7年も時間があった。それでも、大会成功への共通意識の形成ができなかった。今後問われるのは、ゴルフが五輪競技として存続できるかどうかではなく、どこかで大事なものを読み誤ったIOCとIGFのリーダーシップなのかもしれない。

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