「寒さ」と「暑さ」 人間が弱いのはどっち
夏に備える家づくり(5)

(2/3ページ)
2016/6/20 6:30
保存
共有
印刷
その他

■1時間に1500グラムの汗をかける

運動量が活発になると、膨大な代謝熱を速やかに捨てることが最重要となる。この熱の「捨て方」は、図3のように放射・対流・伝導による「乾性放熱」と、汗の蒸散に伴う「湿性放熱」の2つに大別される。

図3 熱の捨て方には大きく2種類。「乾性放熱」は外界任せであるが、汗による「湿性放熱」は人体側で調整できるため使い勝手が良く、なにより冷却力がすさまじい。なお厳密には「呼吸による放熱」も湿性放熱であるが、ここでは汗の蒸散に含めている

図3 熱の捨て方には大きく2種類。「乾性放熱」は外界任せであるが、汗による「湿性放熱」は人体側で調整できるため使い勝手が良く、なにより冷却力がすさまじい。なお厳密には「呼吸による放熱」も湿性放熱であるが、ここでは汗の蒸散に含めている

このうち、前者の「乾性放熱」は周辺環境が暖かいか寒いかで決まってしまうので、人間にできることは着衣の調整だけである。例えば、夏に素っ裸になってしまえば、それ以上に乾性の放熱量を上げることはできない。後は冷房して周辺環境を涼しくするしか方法がない。

一方の「湿性放熱」は人体の方で汗をかく量を調整できるので、はるかに自由度が高い。なにより、人体には最大で1 時間に1500グラムもの大量の汗をかく能力が備わっている。1時間に1500グラムの水が蒸発してくれれば、気化熱でおおむね1000W の熱を捨てることができる。こうして「水の補給が続き」「かいた汗が乾いて」気化熱を奪ってくれる限り、人間はオーバーヒートすることなくマラソンをし続けることができるわけである。

なぜ人間は、動物のなかでもまれにみる強力な"冷却システム"を身につけたのか。そこには楽園を追われた我らが祖先の苦しい歴史があったのだ。

■乾燥気候を「持久力」で生き延びた祖先

人類の故郷であるアフリカでは500万年前ごろから気候の乾燥化が進み、当初は湿潤なジャングルであった地域が乾燥したサバンナに変化した。食料豊富なジャングルでノンビリ暮らしていた人類の祖先は、突如として乾燥地帯での過酷な生存競争に放り込まれたのである。

2本足の人類は、手先は器用でも足は遅い。獲物を追いかけるにしてもスピードでは勝てない。そうなると延々と追いかけ回して獲物が弱ったところでとどめをさすという「持久戦」に持ち込むしかない。こうして長時間、暑く乾燥した気候の中でオーバーヒートせずに走り続けるため、人間は体をつくり変えてきたと想像されている。

そして10万年前になると、アフリカで異常気象が続き、祖先は全滅の危機に瀕することとなる。やむなく故郷たるアフリカを出て、人類は世界に進出する(図4)。恒温動物とはいえ、体は極端な「アフリカ仕様」になっていた人類。寒い気候への適応は非常に苦労したものと想像される。そこで人類は衣類、そして「家」を発明することで、世界中の様々な気候で生き延びることが可能となったのである。

図4 世界の様々な気候に急速に広がった人類

図4 世界の様々な気候に急速に広がった人類

  • 前へ
  • 1
  • 2
  • 3
  • 次へ
保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]