2019年4月25日(木)

「寒さ」と「暑さ」 人間が弱いのはどっち
夏に備える家づくり(5)

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2016/6/20 6:30
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日経アーキテクチュア

「もう、あの猛暑はうんざり・・・」。暑い夏の接近に、ため息を漏らす読者も多いだろう。しかし、実は人間は暑さに強い動物で、快適性と健康を得るためには、まずは寒さの克服が最優先なのだ。この"意外"な真実を、住宅の省エネルギー性能を客観的に調査・分析している東京大学准教授の前真之氏に解説してもらう。

湿度が高く「蒸し暑い」日本の夏を過ごしていると、「人間は暑さに弱い生き物」に感じられるのも無理はない。しかし冷静に見れば、人間ほど暑さに強い動物はほとんど存在しない。

夏の炎天下に"マラソン"できる動物を人間以外で見たことのある人はいないはず。実は、人間は暑さにはめちゃくちゃ強い生き物なのである。その理由は、我々の祖先について振り返るとおのずと明らかになる。

■恒温動物は「熱を捨てる」

動物の分類はいくつもあるが、体内で代謝(メタボ)熱を生み出すか、体温が安定しているかどうかの区別では「変温動物」と「恒温動物」とに分類される(図1)。

図1 恒温動物は大量のエネルギーを摂取して大量の代謝熱を生み出す

図1 恒温動物は大量のエネルギーを摂取して大量の代謝熱を生み出す

変温動物(例えばナマケモノ)は、自分の体からはほとんど代謝熱を生み出さず、外界の温度変動が体温に直接に影響する。熱を出さなくてよいので食料は少なくて済むが、外界の温度が上がりすぎたり下がりすぎたりすると、活動ができなくなってしまう。

これに対して恒温動物(例えばコアラ)は、食料のエネルギーを消費して、体の中で代謝熱を生み出す。人間も恒温動物の端くれであり、全く動いていなくても代謝熱(基礎代謝熱)が発生する。恒温動物のメリットは、外界の温度が変化しても体温を維持することで活動し続けることができる。人間が現在、世界中の様々な場所で活躍できるのは、この恒温動物であることの恩恵である。

恒温動物であることは活動の自由を広げてくれるが、デメリットもある。代謝熱を生み出すために大量の食料を摂取しなければならないし、なにより代謝熱を捨てなければ体温がオーバーヒートして死んでしまう。体から余計な代謝熱をせっせと捨てることが、恒温動物に課せられた「宿命」なのだ。

この代謝熱は、人間の活動量に応じて変化する。この代謝量の単位はメット(met)で表され、図2のように活動に応じて大きく変化する。この代謝熱を速やかに捨てることが常に人体に求められている。特に激しいマラソンともなると、1000W という、60W電球16個分もの大量の代謝熱を捨てる必要が出てくるのである。

ちなみに、この代謝量は健康管理にも用いられている。厚生労働省は、ウオーキングなど3 メット以上の活動を1日1時間以上行うことを求めている。とはいえ、3メット1時間のウオーキングで燃焼できるのは250キロカロリー程度。運動後のビールで軽く「帳消し」になってしまうので、やはり食事療法が重要となる。

図2 活動量に応じて代謝熱は変化する。運動の激しさは代謝量メットで表される。代謝量1メットは体表面1m2(平方メートル)当たり58.2W(ワット)の熱量を表す。上記の熱量Wは、日本人の平均的な体表面1.7m2 の場合である。安静時から運動時まで、代謝量は10倍以上と大きく変化する。特にマラソンとなると60W電球16個分の膨大な代謝熱が発生するので、強力な放熱手段が必要となる(出典:空気調和・衛生工学会「快適な温熱環境のメカニズム」より)

図2 活動量に応じて代謝熱は変化する。運動の激しさは代謝量メットで表される。代謝量1メットは体表面1m2(平方メートル)当たり58.2W(ワット)の熱量を表す。上記の熱量Wは、日本人の平均的な体表面1.7m2 の場合である。安静時から運動時まで、代謝量は10倍以上と大きく変化する。特にマラソンとなると60W電球16個分の膨大な代謝熱が発生するので、強力な放熱手段が必要となる(出典:空気調和・衛生工学会「快適な温熱環境のメカニズム」より)

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